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Sage's List

2020年8月27日 (木)

乳がんホルモン治療と熱中症

お久しぶりです。

連日、酷暑が続いております。

しかし今年の夏は、新型コロナ感染予防のためにマスクをつけることを推奨されております。

余計、暑くなりますね。

そうなると気になるのが「熱中症」です。

Wikipediaによると熱中症とは脱水による体温上昇と、それに伴う臓器血流低下と多臓器不全。表面的な症状として主なものは、めまい、失神、頭痛、吐き気、強い眠気、気分が悪くなる、体温の異常な上昇、異常な発汗(または汗が出なくなる)などがあるそうです。

実は私、この夏何度か熱中症になりかけました。

異常な発汗が止まらず、水分補給してエアコンの下で横になってしばらく様子を見たり、外出先で異様なのどの渇きを感じて、涼しい所で飲み物を飲んだりなど。

今まで熱中症になったのは、激しい運動で大量に汗をかいたにもかかわらず水分補給がうまく出来なかった時ぐらいでした。

ところが、どうも今年の夏は、これまでと様子が違うのです。

恐らく、タモキシフェンの副作用だと思います。

ホルモン治療薬をアロマターゼ阻害剤のアナストロゾールから、抗エストロゲン薬タモキシフェンに変えたのは確か去年の6月、手術を受けた後のことでした。

その後数カ月は手術後の運動障害で殆ど動けませんでした。そのため、去年の夏は殆ど家の中で過ごしてました。リハビリしたりとかして。

そして今年、タモキシフェン飲み始めて初めて、外出したりなど「普通の夏」を過ごしているわけですが、ホルモン治療によくある副作用「ホットフラッシュ」、これが高い頻度で出てきているような気がします。

タモキシフェンとは、抗エストロゲン薬、エストロゲンが作用しないようにブロックする薬です。要するに更年期障害を人工的に作り出す薬です。

ホットフラッシュとは、更年期になると視床下部がいくら指令を出してもエストロゲンが出てこない(タモキシフェンを飲むとエストロゲン出てはいても受容体にくっついてくれない)ので自律神経が混乱して暴走してしまう、そのせいで体温調節がうまく出来なくなることで生じます。こちらのサイトに分かりやすく書いてあります。さらに詳しく知りたい方はこちらの論文をどうぞ。

体温が上がっても気付かず汗も出ず、上着を脱ぐ、窓を開ける、エアコンをつけるなどの体温を下げるための行動も遅れ、いよいよ本格的に暑くなってきてから、ようやく暑さを感じるようになります。

身体は普通の状態だと思っていたのがいきなりとても暑い状態であると認識するため、ほてりを感じたり顔が紅潮したり異常な発汗があったりします。

冬場に暖房をつけた時ならまだいいですが、真夏の暑い時期にホットフラッシュになると大変です。

何しろ、熱中症一歩手前まで暑さに気付かないのです。

そして抗エストロゲン薬は、視床下部のエストロゲン受容体とくっついてエストロゲン作用を阻害するために、アロマターゼ阻害剤よりも強くホットフラッシュが発生するものと思われます。

実際、タモキシフェンでのホルモン治療開始後に熱中症になった、という人がいました。

サーフィン大好きなヨガ講師さんだそうです。

やっぱり、運動してアンドロゲンが出てそれがエストロゲンに変化するわけですから、この方も運動により相当、エストロゲンが分泌されているものと思われます。

タモキシフェンによるホルモン治療後はエストロゲンは変わらず大量にあるのに、エストロゲン受容体をタモキシフェンによりブロックされ、全く作用しなくなったのです。

その落差が大きかったから、熱中症になるまで気付かなかったのだろうと思います。

幸い、私は乳がん発症して以来、自分の身体の変化には敏感になっています。

だから汗が引かなくなった時も異常にのどが渇いた時も「これはおかしい」と思って対処出来ました。おかげで今のところ、熱中症では病院のお世話になることなく過ごしております。

皆様もお気を付けください。新型コロナ、COVID-19も怖いかもしれませんが、暑くなったらマスクは外しましょうね。


2020年5月24日 (日)

手術から1年経過

お久しぶりです。

去年、右左両方の乳がんの手術を受けてから、昨日で1年が経ちました。

おかげさまで、この一年再発せずに過ごしております。

去年の秋からは抗がん剤治療も始めました。

TS-1という経口摂取するタイプの抗がん剤です。

副作用としては今のところ、疲労感があったり爪が割れたり便秘したりなどが出ておりますが、以前に点滴を受けたときほどではありません。

抗がん剤にもいろいろあるのだな、と再確認いたしました。

しかし。

血液検査では白血球の数値が落ちてきております。

なので最近は、再発よりもCOVID-19で重症化する可能性の方が高く、しばらくCOVID-19関連を調べておりました。

そうしましたらその過程で、ちょっと興味あるものを発見しました。



「GcMAF」というものです。



日本人の山本信人という研究者がアメリカで研究していた時に発見したもののようです。

COVID-19では死亡した患者の多くがビタミンD欠乏症だったとのことで、ビタミンDと免疫について調べていたら、こんな論文を見つけました。

Immunotherapy of Metastatic Breast Cancer Patients With Vitamin D-binding Protein-Derived Macrophage Activating Factor (GcMAF)

ところがこれ、撤回されてるんです。

どういうことなんだろう?と思ったら、こんなサイトを発見しました。

「ズサン」:ノブト・ヤマモト、山本信人(Nobuto Yamamoto)(米)

GcMAFでがんが治るなんてウソだ、という話。

ふむふむそういうことか、と思って読んでいたらこんな記述が。

>★GcMAF(ジーシーマフ)医師の大量不審死

ヤマモトと関係ないと思うが、2015年6月から2017年3月までの2年弱の間に、世界中で60人ものホリスティック医療者(全体観医療者、holistic health practitioners)が死んでいる。死因は自殺なのか他殺なのか、不審な点が多い。ホリスティック医療の多くは、GcMAF(ジーシーマフ)医療である。

へぇ…?

そういえば、ワクチンに反対してる医師らの不審死が多すぎる、という情報がFBなどで回ってきてました。

陰謀論としては否定されていますが。

しかし医師がこんなに殺されるって…さすがアメリカ、治安悪すぎ。怖い。怖くてもう行けない。COVID-19死亡者数もすごいことになってるし。



でもGcMAF、論文は撤回されても、特許は撤回されないみたいです。

面白いですね。



それにしても。

今まで免疫といえば「ビタミンC」がいいと言われ、ホリスティック医師はビタミンC大量点滴をがんのみならずCOVID-19でも使うようですが、今まで骨形成に関わる話ぐらいしか聞かなかった「ビタミンD」が実は免疫に大きく関わっていた、というのは意外でした。

そういえば、大腿ヘルニアで緊急入院した時、手術後初めて太陽光を浴びた時には凄い爽快感がありました。

もしかして、太陽光を浴びたことでビタミンDが生成され、免疫細胞が活性化したのでしょうか?

ウォーキングが良いとされるのも、もしかしたら太陽光浴びてビタミンD生成するから?

などといろいろ考えてしまいました。



ビタミンDについては分からない点が多いので、今後も継続して調べてみることにします。

もし、何かしらの情報をお持ちの方はコメントよろしくお願いいたします。



2020年4月24日 (金)

追悼 岡江久美子さん

岡江久美子さんが亡くなりました。享年63。コロナウイルス感染による肺炎が直接の死亡原因のようですが、乳がんの手術を受けた後に放射線治療などを受けて、免疫が落ちていたのだそうです。

連想ゲーム、はなまるマーケット等の番組でお姿を拝見いたしておりました。ご冥福をお祈りいたします。

COVID-19に関しては、情報が錯綜していてよく分かりません。しかし、三大療法を受けたがん患者は死亡リスクが高いことは間違いないようです。

以下、ニュース記事全文貼り付けます。

俳優の岡江久美子さんが肺炎で死去 63歳 新型コロナに感染

俳優の岡江久美子さんが新型コロナウイルスによる肺炎のため、23日朝、東京都内の病院で亡くなりました。63歳でした。

所属事務所によりますと、岡江さんは今月3日に発熱したあと6日朝に病状が急変して緊急入院し、その後のPCR検査で新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。

その後も集中治療を受けていましたが、23日午前5時20分、肺炎のため亡くなったということです。
63歳でした。

岡江さんは去年の末に初期の乳がんの手術を受け、ことし1月末から2月半ばにかけて放射線治療を行っていたということで、事務所は免疫力が低下していたことが重症化した原因ではないかとしています。

夫は俳優の大和田獏さん、娘も俳優の大和田美帆さんで、それぞれ外出を自粛し、現在症状は出ていないということです。

岡江さんは東京出身で昭和50年にテレビドラマでデビューし、その後、ドラマやバラエティーなど多くの番組に出演していました。NHKの「連想ゲーム」への出演をきっかけに大和田獏さんと結婚しています。平成8年から26年にかけてTBSの「はなまるマーケット」の司会を務め、気さくな人柄で幅広い世代から人気を集めていました。

事務所によりますと、葬儀の日取りは未定で、後日、「お別れの会」を開く予定だということです。

夫の大和田獏さんと娘の大和田美帆さん コメント

岡江さんの死去を受けて、夫の大和田獏さんと娘の大和田美帆さんは連名でコメントを発表しました。

コメントは、「岡江久美子が4月23日5時20分に新型コロナによる肺炎の為、永眠いたしました事をご報告いたします。今はただ残念で信じがたく、悔しくて悔しくて他は何も考えられない状態です。どうかそっと送って頂きたいと願っています。仕事関係者の方々、ファンの皆様、ご友人の皆様、長いお付き合いを感謝致します。また、全力を尽くして治療にあたって頂いた医療関係者の皆様に心から感謝いたします。ありがとうございました。皆様、コロナウイルスは大変恐ろしいです。どうかくれぐれもお気をつけください」と記されています。

岡江さんの所属事務所 コメント全文

岡江さんの所属事務所はコメントを発表しました。

弊社所属 岡江久美子(本名:大和田久美子)が、令和2年4月23日午前5時20分、新型コロナウイルス肺炎のため、永眠いたしました。(享年63歳)
ここに生前のご厚誼を深く感謝いたしますとともに、謹んでお知らせ申し上げます。
4月3日に発熱し、4~5日様子を見る様に言われておりましたが、4月6日朝に急変し、某大学病院に救急入院いたしました。
すぐにICUにて人工呼吸器を装着し、その後PCR検査で陽性と判明。懸命な治療を続けましたが、完治に至りませんでした。
昨年末に初期の乳がん手術をし、1月末から2月半ばまで放射線治療を行い免疫力が低下していたのが重症化した原因かと思われます。
ご尽力いただきました医療関係者の皆様には、心より感謝申し上げます。
岡江の入院以来、夫、大和田獏と娘、大和田美帆はそれぞれの家で外出を自粛しております。現在症状は出ておりません。
ただ、ショックが大きく、皆様に対応出来ない状態です。しばらくはご静観ください。
尚、通夜及び葬儀は未定、後日『お別れの会』を実施する予定です。誠に勝手ながら、ご香典、ご供花、ご供物の儀は固くご辞退申し上げます。
関係各社の皆さまにはご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

日本乳癌学会理事長「免疫力低下は考えにくい」

日本乳癌学会の理事長で杏林大学の井本滋教授は「早期の乳がんで手術を受けた後、再発率を下げるために放射線治療を行うことがある。放射線治療を受けた患者で、まれに肺が部分的に炎症を起こすことや、免疫をつかさどる白血球が減少することもあるが、新型コロナウイルスによって重症化する原因になるほど、免疫力が下がるとは考えにくい。同様の治療を受ける患者さんについては感染予防を徹底する必要はあるが、過剰な不安は抱かないでほしい」と話しています。

そのうえで、新型コロナウイルスの感染が拡大する中での治療の在り方について、井本教授は「救命に必要な場合は、予定どおりの手術が行われるべきだが、ごく早期の場合など、ある程度延期をしてもよいと考えられるケースもある。患者の病状や治療、それに地域の感染拡大の状況によって対応も異なってくるので、患者は専門の医師と治療方針について、よく相談してほしい」と話していて、学会では近く治療についての指針を示すことにしています。

小池知事「自分事として考えて」

東京都の小池知事は記者会見で、「謹んで哀悼の意を表し、心からお悔やみ申し上げる。朝の番組のMCや女優業など、視聴者として親近感を覚えるところも多々あっただけに、新型コロナウイルスで亡くなるというニュースは衝撃だった。多くの同世代の女性もショックを受けたのではないか」と述べました。

そのうえで、「ついこのあいだまで『知人の知人の知人』の話だったのが、だんだん『知人の知人』になり、いまは『知人』になって、どんどん近づいてきている。ひと事ではなく、『その状況をつくっているのは私であり、あなただ』ということで、ぜひ自分事として、自分の家族のこととして考えていただきたい」と呼びかけました。

義兄 大和田伸也さん「最高にかわいい義妹でした」

岡江さんの義理の兄で俳優の大和田伸也さんがTwitterにコメントを投稿しました。

「獏と2人は、自慢のすばらしい夫婦でした。私にとりましても、久美ちゃんは最高にかわいい、いい義妹でした。獏から入院していると聞いた時、まさかこんな日が来るとは思ってもいませんでした。残念です。悔しいです。若い頃からの思い出は尽きません」とつづっています。

岡江さん「あさイチ」ロケで地元住民と交流

岡江さんは去年11月、NHKの朝の情報番組「あさイチ」の撮影で、福島県会津若松市と西会津町を訪れ、多くの住民と交流しました。

伝統工芸の会津木綿をつくる工場や製品を販売する店を訪れ、店の人と気さくに話しながら、気に入ったワンピースやストールを試着したり、着こなしを学んだりしていました。また、会津特産の米粉の料理を地元の人から教わり、味わったり、みずからも購入して家族に料理をふるまったりして、会津の食や文化を満喫していました。

岡江さんが亡くなったことについて、一緒に出演した会津木綿製品を販売する「美工堂」の店主、関千尋さんは「速報で知りました。全く信じられませんし、受け入れられません。福島に来て元気な姿を見せてくださったのがきのうのことのようで、身近な存在だと思っていました。岡江さんが撮影の中で試着した会津木綿のワンピースは、視聴者から『ほしい』という連絡もありました。きれいで輝いていた岡江さんの命を持って行ってしまう新型コロナウイルスがこわいです」と話していました。

ドラマで共演 綿引勝彦さん

民放のドラマ「天までとどけ」でおよそ10年にわたって大家族の夫婦の役で共演した俳優の綿引勝彦さんは「テレビで訃報を知り、大変驚きました。ドラマでご一緒したが、撮影現場はいつも岡江さんの明るさや人柄のよさに包まれていて、10年ほども続けられたのは彼女のおかげだと思っています。数年前にお会いしたときは元気でしたが、体調を崩しているとは知らず、まだ若いのに亡くなったのは非常に残念でことばになりません。本当にありがとうございました」と話していました。

山田邦子さん「…絶句です」

岡江さんが亡くなったことについて、岡江さんと同じく乳がんの治療経験があるタレントの山田邦子さんは、自身の公式ブログで「岡江久美子さんが…絶句です。おそらく乳がん手術は成功したから放射線治療に進んだはずだから、残念すぎます。最後までがんばったんだと思います。つらい、つらすぎます」とつづっています。

片岡鶴太郎さん 悲痛な思いつづる

民放のドラマ「終着駅シリーズ」で夫婦役で共演を続けてきたタレントの片岡鶴太郎さんは、自身の公式ブログで「絶句のまま言葉を失いました!余りに唐突で!余りにショックで!あれだけ御元気な、明るく、快活な、聡明な、健康的な、岡江久美子さんが!!もう何十年も夫婦役で御一緒してきた岡江久美子さんが!!悲し過ぎます!!辛過ぎます!!寂し過ぎます!!信じられません!」などと悲痛な思いをつづっています。

「連想ゲーム」で共演 水島裕さん

岡江さんが亡くなったことについて、NHKの「連想ゲーム」で共演していた声優の水島裕さんは、自身のブログで「僕の対戦相手だった岡江久美子さんが亡くなりました。いつも元気いっぱいで、僕が正解出来ずに落ち込んでると、笑顔で背中を叩いて元気づけてくれるような女性でした。悔しさと驚きで、頭の中が混乱していますが、大和田獏さんやお嬢さんの心労を思うと、心が痛いです。本当に良いご夫婦でした。悔しいです。心から御冥福をお祈り致します」と記しています。

 

2020年3月18日 (水)

運動と感染症予防

新型コロナウイルスが猛威を振るっています。

正式名称は「SARS-CoV-2」 (Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2=重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)、このウイルスによって発生する病気が「COVID-19」(CoronaVirus Disease, 2019)だそうです。

最近、メディアによく登場するようになりました。

我が家の近所でも感染者の発生が確認されました。

困ったことに私は今、服用している抗がん剤「TS-1」の副作用で白血球数が減っています。

感染したら、重症化するかもしれません。

というわけで、書きたいことはどんどん書いていくようにします。でないと間に合わなくなるかもしれないので。



とりあえず、話題のコロナウイルス関連から。



さて

その新型コロナウイルスの感染予防なんですが、必ずと言っていいほど出てくるのが「マスク」「手洗い」「人混みを避ける」、そして「運動」です。

しかし、おかしいと思いませんか?

感染拡大のクラスターとなったのが「スポーツクラブ」や「ホットヨガスタジオ」。運動が感染予防になるのであれば、そういう所に通ってる人は殆ど感染しないはずなのに。



どうして常日頃運動してても感染するのか?



それについては、アスリートと免疫についての論文が参考になります。

こちらの論文には、運動しすぎると免疫の「オープンウィンドウ」状態になってしまうと書かれています。

> 運動と免疫についての研究は多く報告されている.その中でもペダーセンらによって提唱された学説が「オープンウインドウ」である.

>「オープンウインドウ」とは,激運動後に一時的な免疫抑制状態が生じるとされる説である.実際に多くの研究で,唾液SIgA分泌の低下やリンパ球数の減少などが報告されている.

>しかも,疫学調査で一流のアスリート選手や激運動を行っている人は,上気道感染症にかかりやすいと報告されている.

>このように,激運動は,一過性に免疫機能を低下させ,感染症にかかりやすくするようである.

 
どういうことか?こちらに詳しく解説があります。

運動すればかぜをひかなくなりますか?
https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/14630/1/jinbunkagakuronshu_57_37.pdf

>これまでの研究でも適度な運動がかぜに対して予防的効果をもつことが分かっている。

>ところが,これとは反対にオリンピックに出るようなすばらしい身体能力を持った人がかぜをひきやすかったり,胃腸に不安を抱えていたりすることがある。

>1987年のロサンジェルスマラソンの参加者を対象にした研究では,ランナーがレース後に上気道感染にかかる率は同じようにトレーニングをしているがレースに参加しなかったランナーに比べ6倍も高かったことを示している

> 一過性の運動の影響とは逆に習慣的な運動が免疫機能を上げる可能性を示すことも報告されている。例えば,ウ ォーキングを習慣的に行っている高齢者の上気道感染症にかかる割合は同年代の人の感染率である50%に比べ半分以下の21%であった

> Tomasiらはエリートクロスカントリースキーヤーの唾液中の免疫グロブリンA(lgA)濃度が低いことを観察しており,レースの後ではさらに低下が見られることを報告している

>最大強度のような強い運動では,NK細胞の増加は極めて顕著となり,その濃度は安静時濃度の5倍にまで上がることがある。

>運動を終了するとこれらの反応は急速に収束することになる。

>運動中に大きな増加を示した細胞ほど大きな低下を示す。つまり,NK細胞が著しい低下を示すことになる。

>運動強度が高いほど傷害活性は高くなるが,運動が終了すると速やかに低下する。有酸素運動のような強度が低い運動の場合には運動中の増加の程度低く(ただし有意ではある),運動後の低下も小さなものである。

Openwindow  

要するに

強度の高い運動は運動中は免疫が上がるが、終わった後は運動前より免疫が下がる。この状態を『オープンウィンドウ』と呼び、この時間帯は感染症にかかりやすくなる。一方、軽めの運動だと運動時の免疫上昇は少ないが、運動後にはそれほど下がらず『オープンウィンドウ』 状態にはならない。

ということです。

つまり、

スポーツクラブやヨガスタジオで「激しい運動」をして、その後ロッカールームやお風呂や併設ショッピングモール、公共交通機関などで多くの人と接触することは、感染症予防のためには全くの逆効果でしかない、ということなのですよ。

感染症予防のために運動を勧めるメディアの多くがこの視点に欠けています。

しかも、「強度の高い」運動がどの程度のものかは人それぞれです。もともと筋力も持久力もある人ならばちょっと動くぐらいは平気でしょうけど、体力が落ちている人には、ちょっとした運動でも「強度の高い」運動になりかねません。

しかも、女性の場合は運動による免疫低下で男性よりも上気道感染症にかかりやすいそうです。

運動を勧めるなら、こういう情報も併せて紹介しませんと。



ウォーキングなら上記の論文のような「感染症にかかる割合が減った」というエビデンスがあります。

1人で歩くのなんてイヤだ、みんなでワイワイやりたい?

そういう人が感染しやすいのかもしれません。

1人でいても寂しく感じないようにメンタルを鍛えておくことも、感染症予防になるのかも知れませんね。



今回もやっぱり、「ウォーキング」と「瞑想」が大事、という結論になりました。

運動してNK細胞活性化でがん治療or予防、とか言ってる人は、運動後のこともちゃんと考えましょうね。


2020年1月 9日 (木)

イソフラボンと乳がん

東北地方のお節料理には、「青畑」と呼ばれるものが入ることがあります。

青大豆の煮物です。

ここに数の子をちぎっていれることもあります。緑と黄色がお節料理に彩を添えます。



今回はこの「大豆」のお話。



乳がんは食事と関連があることは、アジアと欧米での乳がん罹患率の違いから明らかです。

では、アジア系の食事は欧米と何が違うのか?

これまで、よく言われてきたのは「大豆を多く食べる」ことでした。

しかし、これも賛否両論ありました。

大豆イソフラボンはエストロゲンの作用を妨げるので乳がんになりにくいとか

いや、イソフラボンも乳がんには悪いとか。



私がイソフラボンに興味を持ったのは、とある生薬がきっかけです。

それは、「黄耆(おうぎ)」というもの。

これは補中益気湯十全大補湯にも含まれる生薬なのですが、とある漢方薬屋さんで、黄耆のみ単体で服用することを勧められました。



私は補中益気湯で痛みが酷くなったり、十全大補湯で痛みや出血がひどくなったりした経験があります。なのでこれらの漢方薬の中に、乳がんが悪化するものが含まれているのは間違いないのです。しかし漢方薬屋さんが勧めてくれるのならその生薬には問題ないに違いない、そう判断して服用し始めました。

ところが

むしろ悪化したのです。痛みが酷くなりました。

そして調べた結果、黄耆にはイソフラボンが含まれていることが分かりました。



え?イソフラボンはいいのではないの?



調べてみるとイソフラボンで悪化するという説もあり、やっぱり良くないのかも、と服用を止めました。



その当時は体調が物凄く悪くて、もしかしたらもう長くはないかも、って思うぐらいで調べものどころではなかったのでそこまででしたが

最近になり、また思い出して調べてみました。



すると面白いことが分かりました。



まず、イソフラボンの定義から。

イソフラボンとは狭義には「3-フェニルクロモン」という化合物をしまします。構造式はこちら

しかし通常、「イソフラボン」とか「大豆イソフラボン」といった場合、「イソフラボン類」を指していることが多いです。

「イソフラボン類」とは、イソフラボン骨格を有する化合物、つまり3-フェニルクロモンが若干変化した化合物の総称です。マメ科の植物に多く含まれます。

大豆の場合、ゲニステイン、ダイゼインなど12種類が含まれるそうです。

そしてゲニステインやダイゼインなどは、その構造が女性ホルモンであるエストロゲンに類似していることから、エストロゲン様作用を有するとされ、植物エストロゲンなどとも呼ばれます。

そしてこれらはエストロゲン受容体に対しアゴニスト(エストロゲン作用を増強させる)として作用するので更年期障害にいいとか、いやアンタゴニスト(受容体と結合するとエストロゲンとは違う作用をし、エストロゲン作用を阻害する)として作用するので乳がんの予防になるとか、いろいろ言われてきました。

大規模な調査では、大豆を多く食べる方が乳がんになりにくいとの結果が出ているようです。

しかし

大豆を多く食べる食習慣をもつ人というのは、野菜やお茶を大目に摂取している場合が多いし、もちろん肉や乳製品などの動物性たんぱく質の摂取量は少なめになります。

だから、それだけでは何とも言えない。

それをマウスの実験で確かめてみたグループがありました。

彼らの論文がこちらです。

Isoflavones in soy flour diet have different effects on whole-genome expression patterns than purified isoflavone mix in human MCF-7 breast tumors in ovariectomized athymic nude mice

和訳:大豆粉食のイソフラボンは、卵巣切除無胸腺ヌードマウスのヒトMCF-7乳房腫瘍において精製イソフラボンミックスとは異なる影響を全ゲノム発現パターンに与えます

無胸腺かつ卵巣摘出したマウスにヒトの乳がん細胞を植え付けて40mm2の腫瘍を作り、大豆粉末(MS)、精製イソフラボン(MI)、エストラジオール(PC)、プラセボ(NC)をそれぞれ与えて腫瘍がどう変化したかを観察したものです。



その結果、

エストラジオールを与えられたグループ(PC)は腫瘍増大

プラセボ群(NC)は腫瘍縮小

大豆粉末(MS)は変化なし

精製イソフラボン(MI)はエストラジオールほどではないが増大

というものだったそうです。



そして研究者らはこの結果が遺伝子の発現によるもので、大豆粉末食の場合は抗がん遺伝子が作用し、精製イソフラボンでは発がん遺伝子が作用する、そう結論付けたようです。



遺伝子については私もよく分かりません。もしかしたら解釈間違ってるかもしれません。

しかし、大豆粉末と精製イソフラボンは違う、大豆に抗がん作用があるのだとすればそれはイソフラボン類ではなく、それ以外の部分が作用している可能性がある、ということは確からしいです。



ようやく納得しました。

大豆は、イソフラボン類が含まれているものの、抗がん遺伝子を発現させるので、乳がんを悪化させることはない。

そうですよね

更年期障害に効く、っていうデータはあるようですので。それが乳がんに効くわけがないでしょう。



マウスを使った実験のおかげですね。

ヒトの乳がん細胞を胸腺のないマウスに植え付けても、ヒトの乳がんと同じように進行するとは限らないので、乳がんが治る方向の研究についてはマウスの実験もいまいち信用できなかったりします。

しかし悪化する方向のデータは信用できます。だって本来そこにあるはずない細胞ですから、そのままでは悪化するわけないんです。上記プラセボ群では腫瘍が縮小していることからも、それはわかります。

この論文の実験データには納得です。



しかしネズミさん達も大変ですね。胸腺も卵巣も取られてがん細胞植え付けられて、人間のために犠牲になってくれている。

ありがたいことです。というか、なんか申し訳ないです。

今年はネズミ年でもあります。

ネズミさん達に感謝し、供養をしましょう。


2020年1月 6日 (月)

新年のご挨拶 2020

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。



旧年中はいろいろとありました。

5月に乳房全摘出の手術を受けました。左右とも。

術後、傷口が落ち着くまでに3ヶ月かかりました。

そのあと経口抗がん剤「TS-1」の服用を開始。

最初は副作用もあまりなく、これなら続けられるかも、と思っていたのですが

3週目が終わる秋頃には慢性疲労が酷くなってきました。

白血球も少なめだったので休薬期間を延長することに。

年末年始に慢性疲労が酷くなるといろいろと大変なので、4週目は年が明けてからにすることにして、それまでは休薬中です。



休薬期間を延ばしたことで、慢性疲労も少しは改善してきました。

服用し始めてから始まった便秘も、休薬と、食物繊維多めのおせちで改善しつつあります。

しかしこれがまた服用開始するとどうなるか分かりません。

身体がだるいとブログもなかなか書く気になれませんし。困ったものです。



今年も抗がん剤の副作用には悩まされそうです。何かいい案がありましたらお寄せください。



本年も皆様が御健勝で御多幸でありますよう、環境ホルモンを排除し発がん性物質も排除し、間違っても乳がんになったり前立腺がんになったりしませんよう、心からお祈り申し上げます。


2019年9月14日 (土)

乳がん患者がやるべき身体活動 2 手術からのリハビリ

乳がん患者、乳がんサバイバーなどと一口に言いますが、治療法もサブタイプも人それぞれです。

ですが、手術は多くの人が受けています。私も3ヶ月ほど前に受けたばかりです。



なので今回は、手術を受けた人向けのリハビリを自分の経験も含め、幾つかご紹介いたします。

乳がん関連ヨガも、もともとは手術後のリハビリから始まったようですので。



参考にしたのはこちら

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アメリカの理学療法士さんが書いた本ですが、数人の患者さんの症例をもとに、どの場合にどのリハビリを勧めるか、という内容が書いてあります。

アメリカの医療本の場合、患者さんが実名で登場するんですよね。日本だと架空の人物だったり匿名だったりするんですが。

その分リアリティはあります。



ただ、この本は理学療法士さんが書いたものですので

症状や治療法など、専門用語が多く出てきます。一般の乳がん患者さんには少し読みにくいかもしれません。

その分、説得力はあります。病院で習ったリハビリも幾つか含まれていましたので、看護師さん達は読んでいるのかもしれません。

患者さんとのやり取りの実例から、この著者の理学療法士さんはリハビリと同時にカウンセリングも行っている実態が見てとれます。患者としてはなかなか興味深い所です。



さて、ではこの本に書かれている具体的なリハビリの方法についてみていきます。

まずは手術直後から行ってよいもの。



「深呼吸」
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これは一番最初に行うことを勧められてます。

まず、口からゆっくり長く吐いて、その後吸い込む。

腹式かどうかとかは具体的には書いていません。「出産時の呼吸と同じ」だそうです。

「横隔膜を使う」などの記述から腹式だとは思いますが、

健康な人でも呼吸法は難しいのに、手術後の乳がん患者にいきなり複雑な呼吸が出来るわけありませんから、あまりこだわらないのでしょう。

「自然呼吸」でもいい、ということでしょうね。



実は、

乳がん切除後、特に乳房全摘出した後は、かなり呼吸が苦しいのです。

何しろ、胸の皮膚を「縫い縮めてる」わけですから、胸郭が締め付けられているような状態なのです。

ですので、肺を空気で満たすような深い呼吸は出来ません。

なので吐くことだけに集中し、吸うのは少しずつにしようと思っています。

無理して肺いっぱいに空気を入れようとすると交感神経を刺激してしまう「胸式呼吸」になりかねないので危険ですし。

ゆっくり、呼吸の練習をしながら、皮膚を伸ばしましょう。

 

「棒の挙上」

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手術後にまず困るのが、腕が上がらないこと。いわゆる「運動障害」。

着替えも大変、ヘアケアも大変、洗濯物干したり高い所にある調理器具を取ったりなどが出来ずに落ち込む日々でした。

まずはそれを改善します。腕が上がれば、動作はあまり問題なくなるそうです。

仰向けになって腕を垂直に上げ、それを頭の方へ向けて少しずつ動かしていく。手が床について仰向けで万歳できればいいのですが、手術後はおそらく45度ぐらいの角度で止まってしまうと思います。

棒を持つのは多分、左右の腕を同じように動かすためだと思われます。

これ、私は棒なしでやりました。

ベッドのヘッドボード(または壁、テーブル、ソファなど)に手をつけて、しばらくそのままストレッチ。

毎日1回でも続けていくと、少しずつ可動域が拡大していきます。



「壁のぼり」

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これも目的は手を上げること。前と横、両方行います。

「棒の挙上」とこれで、かなり可動域拡大します。

ある程度上がるようになったら、洗濯物干しなど、実生活で手を上げる動作を多くしてリハビリを兼ねてもいいそうです。

私も実践してます。

手を上げたりするリハビリは、3ヶ月以上は続けるのが望ましいようです。リンパの流れが悪くなると「リンパ浮腫」「石灰沈着性腱板炎」(これはこの本の記載ではなくネット情報)になったりするらしいので、あくまで強度は軽めに、期間は長めにするのがいいようです。



「おじぎストレッチ」
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手術後に筋肉の「攣縮(れんしゅく)」がおきて痛みが発生することがあるそうです。それが改善した例が載っていました。

アドムカウィラアサナ。リラックスして筋肉を伸ばすのには良いポーズですね。



この本、放射線治療前の人や乳房再建した人など、いろんなケースについて書かれてるので参考になります。

痛みの表現の仕方とか、痛みのパターンについても書いてあります。

今まで自分では「痛みのパターン」を把握しようと試みたりしていたものの、医療関係者からはあまりそういう話を聞いたことはなかったし、こういうことを具体的に書かれた本は初めて読みました。

また、手術後のリンパや筋肉の状態など、痛みの原因が詳しく書かれているので参考になります。



一方で、ストレッチに関する解剖学的なことはあまり書かれていないのが残念です。



日本語版の出版は1997年。英語の原著は1995年、Windows95が発売された年です。

「乳がんと牛乳」(原著は2000年発行)よりずっと前ですね。



そういう古い本ですので、その頃は画像処理があまり進んでいなかったから書籍化の際に載せるのが難しかった、だから省略した、という可能性はありますが。

リハビリの動作も、全て上記のようなモノクロイラストで描かれていました。ボブ・アンダーソンの「ストレッチング」の真似をしたのかも。



また、その時代はおそらく、サイトカインだのマイオカインだのが乳がんに与える影響が、まだ明らかになっていない頃です。

ですので、軽い筋トレも含まれています。ダンベル持たせたり。



しかし、このあたりは最新の乳がん関連のリハビリではどうなのか?と思いネット上をあちこち探してみたのですが、なかなか見当たりません。



ちなみに私、ケロイド体質のようです。手術の傷跡が赤く腫れあがったような感じで盛り上がってます。この周辺に痒みを感じることがあります。

ケロイド体質とは、どうもコラーゲン生成過多であることが原因の一つのようです。

コラーゲンの生成にはエストロゲンが関与しています。

一方私は、関節痛が出やすい体質でもあります。

どうも私の場合、骨や皮膚を形成する1型コラーゲンはできやすく、軟骨の主成分である2型コラーゲンができにくい体質のようです。

2型コラーゲンが足りないのでどんどんコラーゲンを生成するためホルモンやサイトカインが出されるのだけど、1型ばかりできて2型はやっぱり足りない、これは遺伝体質のようです。



だから私のような体質の乳がん患者は、運動をしてもストレッチをしても、1型コラーゲンばかりできてケロイド悪化、しかも関節の軟骨はすり減るので2型コラーゲン生成のためのエストロゲンが過剰分泌されてしまい、乳がんは進行する方向へ向かってしまうのではないでしょうか。

そのためヨガをやるなら極力身体を動かさないリストラティブタイプのものを、自分に合った形で行うしかないと考えています。

ジョンズホプキンス大学の動画にあるような立ちポーズの多いアシュタンガ系のヨガなどは、関節痛が余計悪化しそうですので絶対やりません。



乳がんの手術には、上に示したようなリハビリを行わなければならない「障害」を負ってしまうというデメリットがあります。

しかし

抗がん剤の害については知られるようになっても、手術による運動障害についてはあまり知られていません。




ただ、上述しましたようにリハビリ関係の最近の本の出版はありません。医療関係者も恐らく、乳がん患者にはどこまで運動させていいのか良くわからない、というのが本音ではないでしょうか。

しかもそれは人によって違いますから。

安易にサイトに書いたり本を出したりは出来ないのでしょう。

アメリカは本の出版に関しては割と厳しくファクトチェックするらしいですし。そうはいってもファクトとしての「論文」が間違ってる場合もありますから何とも言えませんが。



一方、乳がん関連ヨガについては前々回も書きましたが書籍、動画、ネットサイトでの解説など多数あります。

リハビリが必要であることに加えて副作用の緩和についてもケアせねばならず、その中で「ヨガでまとめてやってしまってはどうか」という話が出てきたとしても、流れとしては不思議ではありません。



しかし、前回前々回も書きましたように、乳がん関連ヨガの「インストラクター」の質に関しては甚だ疑問です。

少なくとも私が受けた「乳がんヨガ」のインストラクターの知識は、この本の著者の足元にも及びません。

医療側はそれを分かっているのでしょうか?

もしかして、そういうインストラクターに任せることで「ヨガをやりすぎて乳がんが悪化して病院に戻ってくる」ことを、狙ってたりしませんか?



万一やりすぎて悪化しても、「治療」のための「医療」ではなく「QOL向上目的」のための「ヨガ」だから自己責任或いはヨガインストラクターの責任として病院側の言い逃れは可能、だからリハビリではなく「ヨガ」、という可能性は十分あると思います。

乳がん関連ヨガに関わる医師の言葉に「2012年にアメリカで発表された研究では、ホルモン療法を受けているがん患者さんが、ヨガを行うことによって関節や筋肉の痛みを和らげることができたという結果が出ています。2)」とあります。

しかしその根拠となる資料をネット上で確認しましたところ、

ここの動画(12分頃から)、最後の方に「Translational research」(橋渡し研究)が必要となっていて、メカニズムはまだわかってないようなこと言ってますよね。

分かってないのに勧めてるんですよ。



でもこれって私が思うに、ヨガで筋肉や関節に負荷がかかり、その回復のためにエストロゲンが出た、そのせいで筋肉痛や関節痛が改善されたのではないのですか?



もしそうだとしたら、筋肉痛や関節痛の痛みは治まっても、乳がんは悪化しますよ。



放射線療法や化学療法中にヨガを行うとある程度効果が上がるのは、血行が良くなるからです。

しかしそれだってIGF-1陽性だとどうなるかわかりません。

しかもこの本「乳がん手術後のリハビリ」には、痛みを改善するための「超音波治療」について書かれています。

「超音波治療」は局所的に超音波を当て、温熱作用で血行を良くして痛みをとる、という手法らしいのですが、ハツカネズミの実験では連続して超音波を当てると腫瘍が増大するというデータがあるそうです。血行が良くなってがん細胞にも血液が回るようになるから、とか。

安易に血行を良くすればいいというわけでもないようです。

だから、乳がん患者がヨガをやるとしたら、「放射線治療中」か「化学療法中」だけに限るべきなんですよ。

少なくとも無治療の人はやらない方がいい。

これは患者としての私の実感でもあります。



とにかく

乳がんの手術後は最低限のリハビリを行い運動障害の改善とリンパ浮腫予防をはかる。

それだけで十分だと思います。いや、それだけにとどめておいた方がいいと思います。



乳がん関連ヨガで痛みが出てもヨガインストラクターは責任とろうとはせず、言い逃れするだけでしょう。

皆さんも気を付けてください。






2019年8月19日 (月)

「ヨガ産業」ブギ

前回、乳がん患者向けのヨガは「資格商法」であるので関わらない方がいい、と書きました。

今回はその辺りをもう少し詳しく説明します。



私が体験した「乳がんヨガ」はBCYI(Breast Cancer Yoga Institute)認定インストラクターのものでしたが

BCYIでは1日7時間3万円の講座を受ければインストラクターとして認定して貰えるようです。

他にも、例えばGoogleで"yoga for cancer"と検索してみますと、こんな検索結果が出ます。

Y4c 

アクセスしてみますとy4cというアメリカ発祥の「がん経験者のためのヨガ」のサイトのようです。

トップページの一番左側にあるのが「養成コースお申込み」。

45時間で148,000円。早割もあるようです。

URLに”yoga-pilates-yosei”とありますから、インストラクター養成目的であることは明らかですね。



他にもあります。

特定非営利活動法人 日本統合医学協会」では、20万円超の36時間の講座を受けると医療系ヨガインストラクターの資格が取れるそうです。一応、受験資格は「ヨガの基本的な知識、医療従事者に準じる医学知識を身に付けた方 」という規定もあるようですが。

NPO法人 日本ヨガ連盟」では111,456円払って7日間の講座を受けると病院にも派遣可能なヨガインストラクターとして認定されるようです。

はしもと内科外科クリニック」でも医療ヨガのインストラクター養成を行っています。3ヶ月70,000円。6ヶ月まで延長可能ですがその際は延長料金が必要となるようです。こちらの医師は「医療ヨガ」という本も出版されています。興味のある方はツッコんでみて下さいw

病院でのインストラクター養成と言えば、がん治療では世界的に有名なアメリカのメモリアルスローンケタリングがんセンターでもがん患者向けヨガインストラクターの養成事業を行っています。16時間のビデオ講座で295ドル。こちらはRYT保持者(多分全米ヨガアライアンス200を持っている人)向けだそうです。

カナダのカルガリー大学と提携しているYOGAEFFECTというヨガスタジオでも、がん患者向けヨガインストラクター資格認定をしています。36時間899ドル。こちらもRYT200保持者が対象のようです。

Pain Care Yoga」というのもありました。どうやらつい最近出来たばかりのカナダの団体のようです。1080ドル、6日間で取得可能。リストラティブヨガから派生したヨガのようですが、がんの痛みにも効くのかどうかとか、腰痛肩こり程度なのか、線維筋痛症はどうかとか、私の探し方が悪いだけかもしれませんが患者向けの話が一切見つかりません。PDFにあるのかな?



…探せばまだまだ出てきそうです…。

これだけたくさん出てきますと、

何がなんだかさっぱりわからず、どれがどれやらさっぱりわからず、何も聞かずに飛んでは来たけど、何を買うやらどこで買うやら…

というまさに「買い物ブギ」的な心境になります。わてほんまによう言わんわ



しかしこれ、がん関連ヨガに限った話ではないのです。

ヨガジェネレーション」というサイトがあります。

ヨガスタジオのサイトらしいんですが、「ヨガを受けたい」という一般の人向けのクラスの紹介は殆どなく、「ヨガを教えたい」という人に向けた指導者養成のための講座ばかりが並んでいて呆れます。



現在、既にフィットネスクラブやカルチャースクール、公民館の講座など、ヨガを学ぶ場は広まっています。地域格差はありますが。

それに興味を持って始めた人が、それらの教室で飽き足らなくなると、ヨガスタジオへと出向いていくようになります。

しかし、小さなヨガスタジオで習っているだけでは、スタジオ側も大して儲からないし、受ける側もマンネリ化して飽きてしまいます。



そこで出てくるのが「指導者養成コース」です。

「これを受ければ、指導して稼げるようになりますよ!」ヨガスタジオの人にそそのかされ、自分でもその気になって、大枚払って資格を取得。

しかし上記のように、既にあちこちでヨガ教室は開かれている。興味のある人は既に始めている。新たにヨガクラス開いても誰も来ない。

客が来ないのは「教えられるものが少ないからだ」と思い、更なる資格取得に走る。

そういう「稼げない」ヨガインストラクターを餌食とする講座が山のようにある、それが現状なのです。



もし、それでうまくいったとしましょう。会員登録してくれるお客さんが何人か見つかって。

しかし、もともと入門編の資格と他数種類の資格を取っただけだから、会員さんを留めておくことが難しい。

学ぶ人は勝手に学んで、もっといい指導者の下に行ってしまったりします。

そこで、始めるわけです。「ヨガ指導者養成コース」を。「ヨガ指導者養成のための指導者養成コース」を受けて資格を取って(これもかなり高額)。

そして、新たな犠牲者を増やしていく。



そう、「ネズミ講」みたいなものなんですよ、ヨガインストラクター養成ビジネスって。

こちらのブログによくまとまっているので、読んでみて下さい。

資格ビジネスとマルチ商法の構造の類似性

あえて「ダイエット体操」と書いてありますが、おそらく「ヨガ」を指してるものと思われます。

基本的に業務独占の資格ではない名称独占資格などほとんど意味はありませんし、業務独占資格にしろ簡単に取れるようなものはその簡単さに比例して価値がありません。

中には「高額な受講費用を払う」ことが「簡単ではない」ことだと勘違いしてしまう人もいらっしゃるようなんですけどね…。



そういえば。

先程「買い物ブギ」が出てしまいましたが、「買う」のは「消費者」ですよね。消費者相談センターが発行している資料にこのようなものがありました。

ヨガインストラクター資格講座の解約に関する紛争

>平成 28 年 7 月、何か運動がしたいと考えていたところ、相手方教室において 1 回 1000 円でヨガの体験ができるというので相手方の教室へ行った。その後、相手方が提供しているヨガのインストラクター養成講座を見つけ、問い合わせたところ、40 時間のレッスンでインストラクター資格が取得できると説明を受けた。資格を取得したら仕事を紹介してもらえるのか尋ねたところ、マージンは取るが仕事を紹介することもあり、自分でレッスンを行うこともできると言われ、講座の申し込みをした(約 19 万円)。
>同年 9 月より受講を開始したが、契約書で定める無料受講は、直営店ではない相手方の教室では適用されないことについて説明がなかったことや追加料金が発生する補習が必要だったり、無料受講用のパスを渡されていなかったりと、事前に聞いていた内容と異なるため、相手方本社に苦情を伝え、返金してほしいと要請したが、一部コースの無料受講などを提案され、返金は断られた。その後も相手方と交渉し、消費生活センターにも相談したが、返金には応じられないとの回答であった。未受講分の受講料を返してほしい。

>相手方は、本件紛争に関して申請人に守秘義務を課すのであれば、返金額の増額も検討できると述べたことから、仲介委員は改めて約 13 万円の和解案を提示したところ、両当事者で合意に達したため、和解が成立した。

「申請人に守秘義務を課す」つまり詳細を一切口外しないという約束で返金に応じた、と。

私なら、守秘義務守れないから返金は要らない、とツイッターだとかにスタジオ名入りで詳細書きまくりますけどねw 



それにしても、1000円で体験に来た人にいきなり指導者養成コースだとか、ヨガをなめてるとしか思えないんですけど…結構いるんですよね、こういう人達。



中にはきちんとしたヨガ団体もあり、そういう団体は安易に指導者資格を出したりはしません。

本当にいいものを後世に残そうと思ったら、中途半端な人を指導者認定することは出来ませんよね。

中途半端なものが伝えられていくことになりますから。

武道でもそうですし、日本舞踊、茶道、華道などの習い事もそうですよね。師範として認められるまでには何年もかかり、そこからさらに精進しなければいけない。

資格取得のために目の色変えてる人達は何故、ヨガだけは簡単に資格が取れるのか、インド5000年の歴史から紡ぎだされた健康法はそんなに単純なものなのかどうか、考えてみたことはないのでしょうか?



ヨガ団体を評価する一つの基準は、その団体の設立年がいつであるかを確認することです。

具体的には、1995年以前か以降か、です。

この年、オウム真理教がメディアを賑わしました。そのオウム真理教の施設が「ヨガ道場」を名乗っていたので、この直後、日本のヨガ人口は激減しました。そしてしばらくその状態が続きました。

その「ヨガ氷河期」を乗り越えてきた団体で、指導者になるにはそれなりの経験を積まないといけない、という団体はある程度信用してもよいでしょう。

昨今のヨガピラブームは、2006年以降ではないでしょうか。それ以降は団体数も激増します。




とにかく、乳がん関連ヨガは、始めてしまうとまるでネズミ講のような「ヨガ産業」の餌食になりかねない。

だから、消費者保護の観点から見たら、足を踏み入れない方がいい。

君子危うきに近寄らず。そういう意味で最初から「やらない方がいい」のですよ。

リハビリやリンパドレナージは病院で理学療法士さんや作業療法士さん、看護師さんに教えてもらえば十分です。



安易に設立されたヨガ団体の安易なヨガ指導者認定は、むしろヨガ普及の足を引っ張っているように思うのは私だけでしょうか?

もっとも、最近はそうした「ヨガ産業」界にもほころびが出始めているようではありますが。



わてほんまによう言わんわ。あー、しんど…。

2019年8月15日 (木)

乳がん患者向けヨガの問題点

前回、リハビリやリンパドレナージは病院で個別に行い、教えてもらって自分で行うのが望ましい、そうでなければ自己責任で好きなことを、と書きました。

では乳がん関連で多い、「乳がん患者向けのヨガ」はどうか?

私は勧めません。というかむしろ、やらない方がいい。

何故か?

今回はそのあたりをもっと掘り下げたいと思います。


BCYI(Breast Cancer Yoga Institute)のサイトには、こんな画像が表示されています。


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しかしこれらのポーズは、BCYIの関連団体「日本ヨガメディカル協会」で紹介されている本「メディカルヨガ―ヨガの処方箋」のがんの章(12章)には載っていません。この本にはこんなのが載ってたりします。

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第一回International Yoga Therapy Day(2018.7.5)のララ先生のクラスは、実践はありませんでした。座学だったので途中で気分転換を兼ねたストレッチのようなことはしましたが。



そこで疑問に思いました。乳がん患者のためのヨガに「標準」ってあるんでしょうか?

試しにGoogleで「breast cancer yoga」と検索してみたら、サイトも動画も大量にヒットしました。

例えば動画ですと、

アメリカのジョンズホプキンス大学のグループのものらしい「LiveWell After Breast Cancer」という動画はイージーオプション入りのサンサルテーションに様々なポーズを入れ込む、いわゆる「アシュタンガヨガ」。

Under Armourのトレーナーさんが担当されてますので強度高めです。最初に"You are performing the exercise in this video at your own risk. "(このビデオの演習は自己責任で行ってください。)との注意書きがあります。



それに比べるとBreast Cancer Heaven(イギリスの慈善団体)の動画はかなり強度の低い「gentle」な(優しい)ヨガになってます。プロップス(ブロックなどの補助具)を多用したリストラティブ系。54秒あたりに"If you feel any discomfort, then you stop" (不快に感じたら止めてください)との注意が。




こちらの本はアメリカ人ヨガ講師によるリストラティブ系ヨガですが、上の動画よりもハードなアサナがいろいろ入ってます。シーケンスは特に記載されてないので、好きなアサナをどうぞ、ってことでしょうか?英文なのでまだよく読み込めてないのですが、19ページに "Always stop for any sharp pain, increased swelling or discomfort. "(鋭い痛みがあったり、腫れが増大したり不快感が増した場合は常に停止してください。)との注意書きに下線が引かれてあることは確認しました。「なか見!検索」でも読める範囲です。

Restorativeyoga
アサナはこんな感じです。ERYT500がどういう資格なのかが分かりますね。リストラティブヨガはアイアンガーヨガとは別物のようです。
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各アサナ毎にBenefitsが書かれています。下記画像はアルダチャンドラ(ハーフムーン)のBenefits。
001-3

機械翻訳しますと


利点
安定性を構築し、調整を改善します
調整とバランス感覚を改善します
リンパ節へのリンパの循環を促進します
体の中心にあるすべての筋肉(腹部、足首、太もも、to部、脊椎)を強化します
広背筋、斜筋、三角筋、台形筋を曲げて強化し、径部、ハムストリングス、ふくらはぎ、肩、胸、背骨を伸ばします
ストレス解消に役立ちます
股関節屈筋を開く腕を伸ばしたときに胸部全体を伸ばします(上下)


これが乳がんにどう影響するのかは分かりません。2014年出版。

下の画像はベルリンの大学教授が出版した本。チャプター毎に目的別の短いシーケンスを紹介しています。上の本より強度は低い印象。アメリカの方々は強度高め、ヨーロッパ系の方々は強度低めを好む印象です。

Yogaandbreastcancer

画像は白黒で数も少ないですが、アサナはベーシックなものが多い印象。

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 004-2  
各章の末尾にこうした表が。
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こちらは機械翻訳だと読みづらかったので、読みやすく変えました。


早見表
第7章 地面から始めよう:姿勢の改善
シャンティアサナ 姿勢柔軟性に慣れるのに役立ちます。
仰向けのヤシの木の姿勢 胸を広げ、呼吸能力を高めることができます。
背中を捻る姿勢 脊椎下部の痛みに苦しんでいるすべての人のための非常に効果的な運動。
股関節の回転 股関節の可動性が向上します。
仰向けの木の姿勢 骨盤を開き、すべての座位姿勢を改善します。
仰向けでの膝の回転 膝関節の骨と靭帯を簡単に調整できます。
膝を胸に 息を深くし、腰椎骨間の間隔を広げます。
脚と腕のストレッチ リンパ郭清後のバイタル組織液が循環に戻り、柔軟性が向上します。脚と腹部の筋肉の柔軟性と強度を高めます。
背側のライオンの姿勢 首と肩の筋肉を強化し、二重顎と戦い、そして気分を改善することが知られています。


最初に2008年から2009年にかけて手術後の乳がん患者100人以上を対象とした研究を行った旨が書かれてました。それを元にした手術後のリハビリ目的のもののようです。2011年出版。

アメリカのDana-Farber Cancer Instituteのサイトでは上半身だけのヨガストレッチを推奨。

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どれもかなり違いますよねぇ。

普通のヨガのイージーオプションとどう違うの?どこが乳がん患者向けなの?

もう、何がなんだか。




結局、「乳がんヨガ」というものを思い立ったものの、何が効果あるのかがさっぱりわからない。

そう、医学的根拠がないので、皆、勝手に好きなことやってる。

体脂肪減らしてエストロゲン対策とか、肉体的にも精神的にもリラックスとか、リンパ浮腫対策とか、手術後の運動障害からのリハビリとか。

ただそれだけ。

そしてそれらが本当に効果出てるか、なんてどうでもいいんです。

ネットスラング風に揶揄するなら、これらは皆



「 ぼ く の か ん が え た 

  さ い き ょ う の に ゅ う が ん よ が 」 。



可動域が広がり、術後のリハビリに繋がることは確かでしょう。

しかし何度も言いますが、「乳がん」そのものの治療に繋がるような「医学的根拠はありません」。

どれをやっても生存率が上がるわけではないし、腫瘍サイズが小さくなるわけでもありません。

これらは全て、その指導者の好みで選んでるだけです。

その「自分好みのヨガ」を、動画を撮影してアップロードしたり、乳がん患者に指導して稼いでたりするわけです。



一方、乳がん関連ヨガで「痛みが出る」根拠はあります。成長ホルモン、IGF-1、TNF-α、IL-6その他のサイトカインの分泌による腫瘍の増大です。以前の記事で書きました。

IL-6、TNF‐αはヨガでは増えなかったという論文はあるようですが。それ以外のホルモン、サイトカインは分かりません。

乳がん関連ヨガには、上記のように、痛みや不快感が出たら「止めてください」との説明があるものがあります。

注意書きをわざわざ入れる、ということは「可能性がある」ことの証です。

その痛みや不快感はなぜ起こるのでしょうか?原因も分からないのに勧められたって、怖くて受けられません。

腫瘍が大きくなって神経を圧迫してきている可能性だってあるんです。

実際私も、痛みが出ました。他にも痛みが酷くなった人がいることは上記「メディカルヨガ―ヨガの処方箋」の202ページにも書いてあります。

僅かに残った腫瘍がもし増大しても、手術で神経切ってたら痛みも感じないかもしれません。だから痛みを訴える人が少ないことの理由の一つである可能性はあります。


乳がんになったヨガインストラクターもいます。ネット上探しただけで数人見つかります。

彼女らは何故、乳がんになったのでしょうか。ヨガによる乳がんリスクの低下はなかったのでしょうか?

彼女らが乳がんになる前に行っていたヨガは、乳がん患者向けヨガと一体どう違うのでしょうか?



アメリカでは、がんで有名な病院は軒並みヨガを導入しているようです。これはおそらく「手術のマイナスイメージを避けるため」だと思います。

「乳がん手術後は『運動障害からのリハビリ』や『リンパ浮腫予防のためのリンパドレナージ』をしましょう」と書けば「え?運動障害?リンパ浮腫?そんなことがあるの?手術ってコワイ!」ってなりますよね。

ところがこれを「手術後はQOL向上のためにヨガをしましょう」となれば「そうだよね、入院してると気が滅入るからね」なんて納得してしまうでしょう。

そう、「ヨガ」という言葉のイメージを利用しているのですよ。特に乳がん関連のヨガが多いのは、中高年女性が多い乳がん患者達は「言葉のイメージに左右されやすい層」だと思われているせいでもありましょう。

リンパ浮腫予防や手術からのリハビリだけなら、無治療の乳がん患者や、ラジオ波焼灼法や陽子線治療など「手術以外の治療」を選択した乳がん患者には、全く関係のないものです。

同様に、化学療法中や放射線治療中の疲労感や倦怠感を軽くするためであれば、それらの治療を受けてない人は関係ないはずです。

しかし、「リンパ浮腫予防」も「リハビリ」も「疲労感の改善」も、更には「肥満予防」も「フレイル(虚弱化)予防」もすべてひとまとめにして「ヨガ」にする。やりすぎて悪化する可能性はそのままに。

個別にやるよりその方が楽だからでしょう。ヨガの「万能感」がなせる技ではありますが。




こんなこと書いている私も、ヨガは好きです。だからこぞ、効果があって欲しいとの期待を込めて、あちこち調べました。

pubmedでも調べましたし、BCYI(Breast Cancer Yoga Institute)のサイトの「医療者の皆さまへ」「臨床情報」からの

厚生労働省のサイト『「統合医療」情報発信サイト』ヨガへのリンク、「新生物」に掲載されている論文も幾つか読んでみました。

しかし、

一見効果あるように見えても

コントロール群(対照群、ヨガを行った群との比較のためのグループ)が何か他のことを行っていて、そのせいでグループ間で有意差ありとなった可能性があるものとか、

コントロール群の方がステージが高く治療歴が長かったりとか(そりゃ悪い数値も出るでしょう)、

ドロップ率30%近いとか。3割の人が継続不能って…痛みが出たりして止めた人が多かったのか、或いは都合の悪いデータを排除した可能性もないとは言えません。どちらにしても信用できません。

或いはコルチゾールやTNF-αの値、うつ状態からの改善や睡眠障害の改善など、ある調査では有意差が出たものが、他の調査では差が出てないとか

何かいろいろ怪しかったりします。

実験に使われたヨガの内容も、論文によってバラバラですし。



瞑想を含めたヨガを8年以上続けると、左脳の前頭前野に変化があり、認知症の予防につながる可能性があるという論文はあります。瞑想ならQOLは上がる可能性が高いし、悪影響は殆どないものと考えられます。しかし、瞑想法を具体的に指導しているがん患者向けヨガは、いままで探した中では見つかっていません。

瞑想だけなら、座禅でも良さそうです。座禅は、ヨガの技法を仏教の修行の1つとして取り入れたものです。パドゥマアサナでの瞑想(サマーディ)が「禅定」と訳され、転じて「座禅」となったもの。ヨガで一番重要だからこそ、取り入れたのでしょうね。今では「マインドフルネス」などと呼ばれ、海外にも広まっています。



呼吸法も問題です。ヨガの呼吸法は効果ありそうだけど、教えるのが難しい、それ以前に学ぶこと自体が難しいので、教えられる人が殆どいない、そんな状況です。

だから乳がん患者向けヨガに関わる方々はやらないのです。そこまでヨガを極めてないから。

「副交感神経を優位にするので呼吸は重要!」とか言いますが、呼吸の仕方によっては交感神経優位になることもあります。

最近、交感神経は乳がん細胞に関係してるとの報告が出ましたから注意が必要です。

また、呼吸法の指導を間違うと過呼吸になることもあるそうですし、長期的に間違った呼吸法を続けると横隔膜を傷つけたりすることもあるそうです。

そうなった場合に対応できますか?それとも自己責任ですか?


さて

Googleで「乳がんヨガ」と入力すると、こういう表示が出ます。

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そう、まず出てくるのが「指導者養成」。

それは

乳がんヨガは「受ける側」の「乳がん患者」のためのものではなく、

「資格取得して稼ぎたい人向け」…つまり「教える側」のものであることを意味しています。

本当に「乳がん患者」や「乳がんサバイバー」に受けてもらいたいなら、そういう人達の注意を惹くような見出しを付けるはずですので。



何故か?

お分かりですよね。

ただの「資格商法」です。

1人1000円程度の参加費用での乳がん患者向けヨガを行うより、1日7時間3万円の指導者養成の方が儲かるから。

引っかからないでください。君子危うきに近寄らず、です。

これに関する話は長くなりますので、また次回。



どうしてもヨガをやりたい乳がん患者さんには、こちらをお勧めします。

この本の最後の方に、ヨガのシーケンスがいろいろ載っています。がん患者のためのものはありませんが。

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このぐらいの出費なら、まだ許せるでしょう。呼吸法についても少し載っています。

この本では分からない、という方はお近くのアイアンガーヨガのクラスを探してみて下さい。

アイアンガーヨガの指導員は個別対応可能な方ばかりですので、相談に乗ってくれると思います。




乳がんの治療には、いろいろコストがかかります。

だから、資格商法ごときに散財してしまうのはもったいない。

お金はもっと有意義に使いましょう。



次回は、どうしてこんなに「乳がん関連ヨガ」が溢れているのか、もっと深く掘り下げたいと思います。

2019年7月31日 (水)

乳がん患者がやるべき身体活動

前回は「身体活動量と乳がん死亡リスクに関する論文」と「乳がんヨガ」との関連について、殆ど関係ないのにエビデンス扱いしていること、乳がんヨガは効果が明らかでないこと、などを書きました。

では、乳がん患者は何をしたらいいか?

今回は乳がん患者である私自身の経験から、そのあたりを書いてみたいと思います。



乳がん患者と一口に言っても、人それぞれ、症状も治療法も生活習慣も細胞診の結果も様々です。

なので

「乳がん患者だから」アレをすべきコレをすべき、ってのはあまりありません。

もちろん、生活習慣が乱れていたからこその病気なので、生活習慣を正す、というのは重要です。環境ホルモンの除去は特に。



乳がんの場合は侵襲性の高い治療が多く、QOLの低下は確かに問題であり、QOL維持のための活動をした方がいいのは確かでしょう。

しかし一口にQOL低下と言っても、状況は様々です。

なのでQOLを向上させる方法もまた、様々なのですよ。



私は先日、乳房全摘出手術を受けました。

というわけでまずは手術によりQOLがどう変化するかについて。



「乳がんの手術」と一口に言っても、腫瘍の大きさや転移状況などによりいろいろあります。



「非浸潤性乳管がん」などの転移もなく進行も遅く、かつ腫瘍サイズも小さい乳がんの場合、部分切除術が可能です。

この場合は入院期間も短く済みますし、手術後のリハビリもほとんど必要ないと思います。

腫瘍の個数や位置にもよりますが。



腫瘍が大きい場合や転移がある場合は、部分切除ではなく乳房全摘出となります。

皮膚浸潤を最小限に抑えるため、乳房周辺の皮膚はざっくり切り取ります。そして皮膚を無理やり引っ張って縫合します。

そのため、手術した側は肩が前に入り猫背気味になります。

手術の傷が治った後、リハビリを行った方がいいでしょう。

また、乳房の大きさにもよりますが、左右の重さのバランスが崩れるのでそれを正すのが大変、という方もいらっしゃるようです。



リンパ転移がある場合はリンパ郭清を行います。

この場合、郭清の度合いにもよるでしょうが、リンパ浮腫のおそれがあるのでリンパドレナージは必須です。

また、私のように神経を切られたりすると運動障害も残りますので、地道なリハビリは必要です。

しかし、汗を大量にかくような運動は避けなければいけません。リンパ浮腫になりやすくなります。

また、郭清した側の腕を圧迫すると良くないので、そのあたりも考慮すべきでしょう(加圧トレーニング不可)。



ハルステッド手術(大胸筋まで切り取る大手術)を行った場合については、どうなるのか、私にもわかりません。

術後の外見は、あばら骨が浮いたような状態になるそうです。

運動障害はどのくらい出るのでしょうか?かなり大変なことになるであろうことが想像できます。

数十年経っても痛みやしびれが出るという証言もあるようです。



これが右乳房のみか左乳房か両方か、でも違いますし、右と左で術式が違うケースもあります。

また、乳房再建術を受けている人もいます。保険適用になってから受ける人が増えたようです。

インプラントを使う人も、自家組織で再建する人もいます。

自家組織での乳房再建の場合、使う組織の元をとる背中やお腹や足などに傷が出来ます。これによっても対応が変わります。

インプラントでの再建の場合、何度か手術し直す必要があるそうです。

最近、シリコンインプラントの中に特殊なリンパ腫を引き起こすものがあったのでメーカーが対象製品を自主回収した、というニュースがありました。シリコンの方要注意です。

ちなみに私は、乳房再建はしていませんが、右側の植皮のために腹部を切りました。なのでお腹はまだ伸ばせません。



手術だけでこんなにいろいろあるのです。



そのため、リハビリは病院で行うのが良いでしょう。

病院でのリハビリは、理学療法士や作業療法士などの資格のある方が行います。

リンパドレナージは、研修を受けた看護師などが患者に指導します。

理学療法士、作業療法士、看護師はいずれも指定の学校を受験して、合格したら数年通って勉強して、国家試験を受けなければならないという取得が大変な資格であります。そういう信頼できる資格を持っている上に、病院での業務で毎日何十人もの患者さんの対応をしている、そういう方々です。

カルテも共有しているでしょう。そして何かあった場合の対応方法も知っています。

彼らは、安全です。もちろん「中には怪しい人もいる」という可能性は否定できませんが、それはどの職種でも同じです。



一方、ヨガに関しては国家資格はありません。

「乳がんヨガ」はただの民間資格です。指導者養成コースは1日7時間3万円だそうです。受講資格は特になく、誰でも受講料払って参加すれば、試験などもなく免状がもらえる、そういう資格のようです。

「乳がんヨガ」限定ではない一般的なヨガインストラクターの資格としては「全米ヨガアライアンス200」というものが有名です。これは、200時間の講座を受ければ取れる、というものです。1日8時間として25日。1カ月かかりません。最短では18日あれば取れるそうです。

200時間+7時間の講座でがん患者を相手にすることに、不安は感じないのでしょうか?少なくとも、個別対応できるだけのスキルがこれだけで身につくとは思えません。

ちなみに、全米ヨガアライアンス以外にもヨガ資格出してる団体は山ほどあります。指導者養成にかかるコストも時間もまちまちです。当然、スキルのレベルもまちまちです。



話を戻しますと

手術のみならず、化学療法に関してもさまざまな種類があります。化学療法はQOLが下がるとよく言いますが、一体どんな副作用が出るのかが問題です。髪は抜けるのか、しびれはあるか、吐き気やめまいはあるか、免疫落ちて感染しやすくなってないか、などなど。

薬によって、かなり違います。

私の場合、最初の抗がん剤(EC療法)は髪も抜けたし体重は極端に減るし体力落ちるし不正出血もあったし目は悪くなるし爪は黒くなるし最悪でしたが、今飲んでいるTS-1は副作用はあまりありません。わずかに吐き気がして便が緩む程度です。

腎臓や肝臓に悪影響が出たり、手足にしびれが出たりなどもあるそうです。

ホルモン治療をしていると、関節痛(関節への負荷考慮)、骨粗鬆症(骨折のリスク)、ホットフラッシュ(体温調節困難)、血栓ができやすい(脳梗塞や心筋梗塞のリスク)などが出たりします。

他にも

放射線治療を行っている場合、その種類(X線、陽子線、重粒子線等)や強度によっても副作用(疲労感、皮膚炎など)の出方が違います。

皮膚にマジックで線を書いたり、皮膚の色が変わったりするので、薄着になりたがらない人もいるでしょう。そういう相手を気遣うことが出来ますか?

切らずに治す治療法としてラジオ波焼灼術や冷凍凝固療法、FUS(MRIガイド下収束超音波療法)などがありますが、これらについてその治療跡がどうなるのか、胸を開いて伸ばしたりするのは施術後どのぐらい経ってから可能なのか、把握しているのでしょうか?

また、免疫療法やビタミンC点滴、丸山ワクチンなど、代替療法もさまざまあります。それぞれ治療前後の注意事項は違うはずです。無治療の方、漢方やサプリなどの使用も含めますともう十人十色、千差万別です。

他の疾患での症状や服薬の状況なども違いますし、閉経前か後か、年齢、肥満度、体質の違いなども含めますと、まったく同じリハビリを要する人などまず、いないのです。



乳がんは転移再発しやすい病気です。本人も知らないうちに骨転移していてホルモン治療と相まって骨が弱ってしまっていて、たまたまヨガを受けたら骨が折れてしまった、というケースもあり得なくはないと思います。きちんと想定して対策を考えているのでしょうか?

万が一トラブルが発生しても(副作用で嘔吐したり出血したり半月板損傷したり蜂窩織炎になったり)、理学療法士や看護師が病院内で行っているのであれば対応は可能でしょう。医師もすぐそばに控えてますし。

しかし一般のヨガインストラクターが、ヨガスタジオや自宅で行った場合はどうでしょう?救急車呼びますか?



しかも、病院スタッフは忙しいのです。毎回来てもらうのではなく、自宅で自分で出来るようなリハビリ方法を教えてくれます(病院にもよりますが)。

乳がんヨガのような「教室」だと、毎回通う前提です。でないとインストラクターが儲からないから。

そして、集団でいると、どうしても他の人と自分を比べたりしますよね。

「あの人、私より後に手術受けたのに、もうあんなに元気そう。私は全然動けないのに…。」

「あの人、同じ薬使っててなんであんなに副作用軽いんだろう。私は酷いのに…。」

よりケアを必要とする(QOLが低下してる)人ほど、嫌になってしまったり、無理して動き過ぎてしまったり。

ナーバスな患者達の気持ちをうまくくみ取れるインストラクターならいいと思いますが、ヘタなこと言ってしまうとかえって患者を落ち込ませることにもなりかねません。

で、自宅で自分でやりたければ「3万円払って資格取れ」、ってことになるわけです。



「乳がん」そのものの治療には直接は関係しない「QOL向上」だけなら、「乳がんヨガ」に限らず好きなことをすればいいと思います。

激しすぎない、ウォーキング程度の身体活動ならエビデンスもあるわけですから、ウォーキングでもいいと思います。捻ったりしないので怪我の心配はありませんし。他にもやりたいものであれば、医師と相談の上、本人の責任においてやればいいと思います。やりすぎは禁物ですが。

「ずぼらヨガ」的なゆる~いヨガを自分でやってもいいし(乳がんヨガもずぼらヨガと大して変わりません)。



運動でなくてもいいのです。アメリカのMDアンダーソンがんセンターでは音楽療法や鍼なども行っているそうですし、韓国の病院では園芸療法などさらにいろいろな補完療法を行っているそうです。

「乳がんヨガ」を信じて受けるのであれば、QOL向上には寄与することは分かります。しかし信じていない人、あるいは逆に乳がんヨガに対して過剰な期待を持って受けに来てしまった人(私がそうでした)だと、ストレス溜まって逆効果の可能性もあるんですよ。



私には「乳がんヨガ」は乳がん患者やヨガインストラクター資格保持者をカモにした詐欺のようにしか見えないんですよね…。その理由はまた次回、詳しく書こうと思います。


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Sage's Link List

  • がん対策推進基本計画
    厚生労働省が平成24年に発表したもの。これによると、治療せずに様子を見る「経過観察」はしちゃダメ!なのかな?なんで?w
  • 国立がん研究センター
    食事療法については何も載っていません。アルコール摂取を控えましょう、肥満に注意しましょう、ぐらい。

Sage's Music List

  • サラ・ブライトマン: 神々のシンフォニー
    日本盤のみボーナストラック追加。
  • 3/8にリマスター発売。
    Pink Floyd: 狂気
    まさに「狂気の沙汰」ですね。
  • Walk This Way
    RUN D.M.C.:
    エアロスミスとのコラボ。
  • Somewhere I Belong
    LINKIN PARK: METEORA
    あるプログラムでの使用曲。
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