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2019年8月15日 (木)

乳がん患者向けヨガの問題点

前回、リハビリやリンパドレナージは病院で個別に行い、教えてもらって自分で行うのが望ましい、そうでなければ自己責任で好きなことを、と書きました。

では乳がん関連で多い、「乳がん患者向けのヨガ」はどうか?

私は勧めません。というかむしろ、やらない方がいい。

何故か?

今回はそのあたりをもっと掘り下げたいと思います。


BCYI(Breast Cancer Yoga Institute)のサイトには、こんな画像が表示されています。


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しかしこれらのポーズは、BCYIの関連団体「日本ヨガメディカル協会」で紹介されている本「メディカルヨガ―ヨガの処方箋」のがんの章(12章)には載っていません。この本にはこんなのが載ってたりします。

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第一回International Yoga Therapy Day(2018.7.5)のララ先生のクラスは、実践はありませんでした。座学だったので途中で気分転換を兼ねたストレッチのようなことはしましたが。



そこで疑問に思いました。乳がん患者のためのヨガに「標準」ってあるんでしょうか?

試しにGoogleで「breast cancer yoga」と検索してみたら、サイトも動画も大量にヒットしました。

例えば動画ですと、

アメリカのジョンズホプキンス大学のグループのものらしい「LiveWell After Breast Cancer」という動画はイージーオプション入りのサンサルテーションに様々なポーズを入れ込む、いわゆる「アシュタンガヨガ」。

Under Armourのトレーナーさんが担当されてますので強度高めです。最初に"You are performing the exercise in this video at your own risk. "(このビデオの演習は自己責任で行ってください。)との注意書きがあります。



それに比べるとBreast Cancer Heaven(イギリスの慈善団体)の動画はかなり強度の低い「gentle」な(優しい)ヨガになってます。プロップス(ブロックなどの補助具)を多用したリストラティブ系。54秒あたりに"If you feel any discomfort, then you stop" (不快に感じたら止めてください)との注意が。




こちらの本はアメリカ人ヨガ講師によるリストラティブ系ヨガですが、上の動画よりもハードなアサナがいろいろ入ってます。シーケンスは特に記載されてないので、好きなアサナをどうぞ、ってことでしょうか?英文なのでまだよく読み込めてないのですが、19ページに "Always stop for any sharp pain, increased swelling or discomfort. "(鋭い痛みがあったり、腫れが増大したり不快感が増した場合は常に停止してください。)との注意書きに下線が引かれてあることは確認しました。「なか見!検索」でも読める範囲です。

Restorativeyoga
アサナはこんな感じです。ERYT500がどういう資格なのかが分かりますね。リストラティブヨガはアイアンガーヨガとは別物のようです。
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各アサナ毎にBenefitsが書かれています。下記画像はアルダチャンドラ(ハーフムーン)のBenefits。
001-3

機械翻訳しますと


利点
安定性を構築し、調整を改善します
調整とバランス感覚を改善します
リンパ節へのリンパの循環を促進します
体の中心にあるすべての筋肉(腹部、足首、太もも、to部、脊椎)を強化します
広背筋、斜筋、三角筋、台形筋を曲げて強化し、径部、ハムストリングス、ふくらはぎ、肩、胸、背骨を伸ばします
ストレス解消に役立ちます
股関節屈筋を開く腕を伸ばしたときに胸部全体を伸ばします(上下)


これが乳がんにどう影響するのかは分かりません。2014年出版。

下の画像はベルリンの大学教授が出版した本。チャプター毎に目的別の短いシーケンスを紹介しています。上の本より強度は低い印象。アメリカの方々は強度高め、ヨーロッパ系の方々は強度低めを好む印象です。

Yogaandbreastcancer

画像は白黒で数も少ないですが、アサナはベーシックなものが多い印象。

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 004-2  
各章の末尾にこうした表が。
005-2

こちらは機械翻訳だと読みづらかったので、読みやすく変えました。


早見表
第7章 地面から始めよう:姿勢の改善
シャンティアサナ 姿勢柔軟性に慣れるのに役立ちます。
仰向けのヤシの木の姿勢 胸を広げ、呼吸能力を高めることができます。
背中を捻る姿勢 脊椎下部の痛みに苦しんでいるすべての人のための非常に効果的な運動。
股関節の回転 股関節の可動性が向上します。
仰向けの木の姿勢 骨盤を開き、すべての座位姿勢を改善します。
仰向けでの膝の回転 膝関節の骨と靭帯を簡単に調整できます。
膝を胸に 息を深くし、腰椎骨間の間隔を広げます。
脚と腕のストレッチ リンパ郭清後のバイタル組織液が循環に戻り、柔軟性が向上します。脚と腹部の筋肉の柔軟性と強度を高めます。
背側のライオンの姿勢 首と肩の筋肉を強化し、二重顎と戦い、そして気分を改善することが知られています。


最初に2008年から2009年にかけて手術後の乳がん患者100人以上を対象とした研究を行った旨が書かれてました。それを元にした手術後のリハビリ目的のもののようです。2011年出版。

アメリカのDana-Farber Cancer Instituteのサイトでは上半身だけのヨガストレッチを推奨。

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どれもかなり違いますよねぇ。

普通のヨガのイージーオプションとどう違うの?どこが乳がん患者向けなの?

もう、何がなんだか。




結局、「乳がんヨガ」というものを思い立ったものの、何が効果あるのかがさっぱりわからない。

そう、医学的根拠がないので、皆、勝手に好きなことやってる。

体脂肪減らしてエストロゲン対策とか、肉体的にも精神的にもリラックスとか、リンパ浮腫対策とか、手術後の運動障害からのリハビリとか。

ただそれだけ。

そしてそれらが本当に効果出てるか、なんてどうでもいいんです。

ネットスラング風に揶揄するなら、これらは皆



「 ぼ く の か ん が え た 

  さ い き ょ う の に ゅ う が ん よ が 」 。



可動域が広がり、術後のリハビリに繋がることは確かでしょう。

しかし何度も言いますが、「乳がん」そのものの治療に繋がるような「医学的根拠はありません」。

どれをやっても生存率が上がるわけではないし、腫瘍サイズが小さくなるわけでもありません。

これらは全て、その指導者の好みで選んでるだけです。

その「自分好みのヨガ」を、動画を撮影してアップロードしたり、乳がん患者に指導して稼いでたりするわけです。



一方、乳がん関連ヨガで「痛みが出る」根拠はあります。成長ホルモン、IGF-1、TNF-α、IL-6その他のサイトカインの分泌による腫瘍の増大です。以前の記事で書きました。

IL-6、TNF‐αはヨガでは増えなかったという論文はあるようですが。それ以外のホルモン、サイトカインは分かりません。

乳がん関連ヨガには、上記のように、痛みや不快感が出たら「止めてください」との説明があるものがあります。

注意書きをわざわざ入れる、ということは「可能性がある」ことの証です。

その痛みや不快感はなぜ起こるのでしょうか?原因も分からないのに勧められたって、怖くて受けられません。

腫瘍が大きくなって神経を圧迫してきている可能性だってあるんです。

実際私も、痛みが出ました。他にも痛みが酷くなった人がいることは上記「メディカルヨガ―ヨガの処方箋」の202ページにも書いてあります。

僅かに残った腫瘍がもし増大しても、手術で神経切ってたら痛みも感じないかもしれません。だから痛みを訴える人が少ないことの理由の一つである可能性はあります。


乳がんになったヨガインストラクターもいます。ネット上探しただけで数人見つかります。

彼女らは何故、乳がんになったのでしょうか。ヨガによる乳がんリスクの低下はなかったのでしょうか?

彼女らが乳がんになる前に行っていたヨガは、乳がん患者向けヨガと一体どう違うのでしょうか?



アメリカでは、がんで有名な病院は軒並みヨガを導入しているようです。これはおそらく「手術のマイナスイメージを避けるため」だと思います。

「乳がん手術後は『運動障害からのリハビリ』や『リンパ浮腫予防のためのリンパドレナージ』をしましょう」と書けば「え?運動障害?リンパ浮腫?そんなことがあるの?手術ってコワイ!」ってなりますよね。

ところがこれを「手術後はQOL向上のためにヨガをしましょう」となれば「そうだよね、入院してると気が滅入るからね」なんて納得してしまうでしょう。

そう、「ヨガ」という言葉のイメージを利用しているのですよ。特に乳がん関連のヨガが多いのは、中高年女性が多い乳がん患者達は「言葉のイメージに左右されやすい層」だと思われているせいでもありましょう。

リンパ浮腫予防や手術からのリハビリだけなら、無治療の乳がん患者や、ラジオ波焼灼法や陽子線治療など「手術以外の治療」を選択した乳がん患者には、全く関係のないものです。

同様に、化学療法中や放射線治療中の疲労感や倦怠感を軽くするためであれば、それらの治療を受けてない人は関係ないはずです。

しかし、「リンパ浮腫予防」も「リハビリ」も「疲労感の改善」も、更には「肥満予防」も「フレイル(虚弱化)予防」もすべてひとまとめにして「ヨガ」にする。やりすぎて悪化する可能性はそのままに。

個別にやるよりその方が楽だからでしょう。ヨガの「万能感」がなせる技ではありますが。




こんなこと書いている私も、ヨガは好きです。だからこぞ、効果があって欲しいとの期待を込めて、あちこち調べました。

pubmedでも調べましたし、BCYI(Breast Cancer Yoga Institute)のサイトの「医療者の皆さまへ」「臨床情報」からの

厚生労働省のサイト『「統合医療」情報発信サイト』ヨガへのリンク、「新生物」に掲載されている論文も幾つか読んでみました。

しかし、

一見効果あるように見えても

コントロール群(対照群、ヨガを行った群との比較のためのグループ)が何か他のことを行っていて、そのせいでグループ間で有意差ありとなった可能性があるものとか、

コントロール群の方がステージが高く治療歴が長かったりとか(そりゃ悪い数値も出るでしょう)、

ドロップ率30%近いとか。3割の人が継続不能って…痛みが出たりして止めた人が多かったのか、或いは都合の悪いデータを排除した可能性もないとは言えません。どちらにしても信用できません。

或いはコルチゾールやTNF-αの値、うつ状態からの改善や睡眠障害の改善など、ある調査では有意差が出たものが、他の調査では差が出てないとか

何かいろいろ怪しかったりします。

実験に使われたヨガの内容も、論文によってバラバラですし。



瞑想を含めたヨガを8年以上続けると、左脳の前頭前野に変化があり、認知症の予防につながる可能性があるという論文はあります。瞑想ならQOLは上がる可能性が高いし、悪影響は殆どないものと考えられます。しかし、瞑想法を具体的に指導しているがん患者向けヨガは、いままで探した中では見つかっていません。

瞑想だけなら、座禅でも良さそうです。座禅は、ヨガの技法を仏教の修行の1つとして取り入れたものです。パドゥマアサナでの瞑想(サマーディ)が「禅定」と訳され、転じて「座禅」となったもの。ヨガで一番重要だからこそ、取り入れたのでしょうね。今では「マインドフルネス」などと呼ばれ、海外にも広まっています。



呼吸法も問題です。ヨガの呼吸法は効果ありそうだけど、教えるのが難しい、それ以前に学ぶこと自体が難しいので、教えられる人が殆どいない、そんな状況です。

だから乳がん患者向けヨガに関わる方々はやらないのです。そこまでヨガを極めてないから。

「副交感神経を優位にするので呼吸は重要!」とか言いますが、呼吸の仕方によっては交感神経優位になることもあります。

最近、交感神経は乳がん細胞に関係してるとの報告が出ましたから注意が必要です。

また、呼吸法の指導を間違うと過呼吸になることもあるそうですし、長期的に間違った呼吸法を続けると横隔膜を傷つけたりすることもあるそうです。

そうなった場合に対応できますか?それとも自己責任ですか?


さて

Googleで「乳がんヨガ」と入力すると、こういう表示が出ます。

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そう、まず出てくるのが「指導者養成」。

それは

乳がんヨガは「受ける側」の「乳がん患者」のためのものではなく、

「資格取得して稼ぎたい人向け」…つまり「教える側」のものであることを意味しています。

本当に「乳がん患者」や「乳がんサバイバー」に受けてもらいたいなら、そういう人達の注意を惹くような見出しを付けるはずですので。



何故か?

お分かりですよね。

ただの「資格商法」です。

1人1000円程度の参加費用での乳がん患者向けヨガを行うより、1日7時間3万円の指導者養成の方が儲かるから。

引っかからないでください。君子危うきに近寄らず、です。

これに関する話は長くなりますので、また次回。



どうしてもヨガをやりたい乳がん患者さんには、こちらをお勧めします。

この本の最後の方に、ヨガのシーケンスがいろいろ載っています。がん患者のためのものはありませんが。

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このぐらいの出費なら、まだ許せるでしょう。呼吸法についても少し載っています。

この本では分からない、という方はお近くのアイアンガーヨガのクラスを探してみて下さい。

アイアンガーヨガの指導員は個別対応可能な方ばかりですので、相談に乗ってくれると思います。




乳がんの治療には、いろいろコストがかかります。

だから、資格商法ごときに散財してしまうのはもったいない。

お金はもっと有意義に使いましょう。



次回は、どうしてこんなに「乳がん関連ヨガ」が溢れているのか、もっと深く掘り下げたいと思います。

2019年7月31日 (水)

乳がん患者がやるべき身体活動

前回は「身体活動量と乳がん死亡リスクに関する論文」と「乳がんヨガ」との関連について、殆ど関係ないのにエビデンス扱いしていること、乳がんヨガは効果が明らかでないこと、などを書きました。

では、乳がん患者は何をしたらいいか?

今回は乳がん患者である私自身の経験から、そのあたりを書いてみたいと思います。



乳がん患者と一口に言っても、人それぞれ、症状も治療法も生活習慣も細胞診の結果も様々です。

なので

「乳がん患者だから」アレをすべきコレをすべき、ってのはあまりありません。

もちろん、生活習慣が乱れていたからこその病気なので、生活習慣を正す、というのは重要です。環境ホルモンの除去は特に。



乳がんの場合は侵襲性の高い治療が多く、QOLの低下は確かに問題であり、QOL維持のための活動をした方がいいのは確かでしょう。

しかし一口にQOL低下と言っても、状況は様々です。

なのでQOLを向上させる方法もまた、様々なのですよ。



私は先日、乳房全摘出手術を受けました。

というわけでまずは手術によりQOLがどう変化するかについて。



「乳がんの手術」と一口に言っても、腫瘍の大きさや転移状況などによりいろいろあります。



「非浸潤性胆乳管がん」などの転移もなく進行も遅く、かつ腫瘍サイズも小さい乳がんの場合、部分切除術が可能です。

この場合は入院期間も短く済みますし、手術後のリハビリもほとんど必要ないと思います。

腫瘍の個数や位置にもよりますが。



腫瘍が大きい場合や転移がある場合は、部分切除ではなく乳房全摘出となります。

皮膚浸潤を最小限に抑えるため、乳房周辺の皮膚はざっくり切り取ります。そして皮膚を無理やり引っ張って縫合します。

そのため、手術した側は肩が前に入り猫背気味になります。

手術の傷が治った後、リハビリを行った方がいいでしょう。

また、乳房の大きさにもよりますが、左右の重さのバランスが崩れるのでそれを正すのが大変、という方もいらっしゃるようです。



リンパ転移がある場合はリンパ郭清を行います。

この場合、郭清の度合いにもよるでしょうが、リンパ浮腫のおそれがあるのでリンパドレナージは必須です。

また、私のように神経を切られたりすると運動障害も残りますので、地道なリハビリは必要です。

しかし、汗を大量にかくような運動は避けなければいけません。リンパ浮腫になりやすくなります。

また、郭清した側の腕を圧迫すると良くないので、そのあたりも考慮すべきでしょう(加圧トレーニング不可)。



ハルステッド手術(大胸筋まで切り取る大手術)を行った場合については、どうなるのか、私にもわかりません。

術後の外見は、あばら骨が浮いたような状態になるそうです。

運動障害はどのくらい出るのでしょうか?かなり大変なことになるであろうことが想像できます。

数十年経っても痛みやしびれが出るという証言もあるようです。



これが右乳房のみか左乳房か両方か、でも違いますし、右と左で術式が違うケースもあります。

また、乳房再建術を受けている人もいます。保険適用になってから受ける人が増えたようです。

インプラントを使う人も、自家組織で再建する人もいます。

自家組織での乳房再建の場合、使う組織の元をとる背中やお腹や足などに傷が出来ます。これによっても対応が変わります。

インプラントでの再建の場合、何度か手術し直す必要があるそうです。

最近、シリコンインプラントの中に特殊なリンパ腫を引き起こすものがあったのでメーカーが対象製品を自主回収した、というニュースがありました。シリコンの方要注意です。

ちなみに私は、乳房再建はしていませんが、右側の植皮のために腹部を切りました。なのでお腹はまだ伸ばせません。



手術だけでこんなにいろいろあるのです。



そのため、リハビリは病院で行うのが良いでしょう。

病院でのリハビリは、理学療法士や作業療法士などの資格のある方が行います。

リンパドレナージは、研修を受けた看護師などが患者に指導します。

理学療法士、作業療法士、看護師はいずれも指定の学校を受験して、合格したら数年通って勉強して、国家試験を受けなければならないという取得が大変な資格であります。そういう信頼できる資格を持っている上に、病院での業務で毎日何十人もの患者さんの対応をしている、そういう方々です。

カルテも共有しているでしょう。そして何かあった場合の対応方法も知っています。

彼らは、安全です。もちろん「中には怪しい人もいる」という可能性は否定できませんが、それはどの職種でも同じです。



一方、ヨガに関しては国家資格はありません。

「乳がんヨガ」はただの民間資格です。指導者養成コースは1日7時間3万円だそうです。受講資格は特になく、誰でも受講料払って参加すれば、試験などもなく免状がもらえる、そういう資格のようです。

「乳がんヨガ」限定ではない一般的なヨガインストラクターの資格としては「全米ヨガアライアンス200」というものが有名です。これは、200時間の講座を受ければ取れる、というものです。1日8時間として25日。1カ月かかりません。最短では18日あれば取れるそうです。

200時間+7時間の講座でがん患者を相手にすることに、不安は感じないのでしょうか?少なくとも、個別対応できるだけのスキルがこれだけで身につくとは思えません。

ちなみに、全米ヨガアライアンス以外にもヨガ資格出してる団体は山ほどあります。指導者養成にかかるコストも時間もまちまちです。当然、スキルのレベルもまちまちです。



話を戻しますと

手術のみならず、化学療法に関してもさまざまな種類があります。化学療法はQOLが下がるとよく言いますが、一体どんな副作用が出るのかが問題です。髪は抜けるのか、しびれはあるか、吐き気やめまいはあるか、免疫落ちて感染しやすくなってないか、などなど。

薬によって、かなり違います。

私の場合、最初の抗がん剤(EC療法)は髪も抜けたし体重は極端に減るし体力落ちるし不正出血もあったし目は悪くなるし爪は黒くなるし最悪でしたが、今飲んでいるTS-1は副作用はあまりありません。わずかに吐き気がして便が緩む程度です。

腎臓や肝臓に悪影響が出たり、手足にしびれが出たりなどもあるそうです。

ホルモン治療をしていると、関節痛(関節への負荷考慮)、骨粗鬆症(骨折のリスク)、ホットフラッシュ(体温調節困難)、血栓ができやすい(脳梗塞や心筋梗塞のリスク)などが出たりします。

他にも

放射線治療を行っている場合、その種類(X線、陽子線、重粒子線等)や強度によっても副作用(疲労感、皮膚炎など)の出方が違います。

皮膚にマジックで線を書いたり、皮膚の色が変わったりするので、薄着になりたがらない人もいるでしょう。そういう相手を気遣うことが出来ますか?

切らずに治す治療法としてラジオ波焼灼術や冷凍凝固療法、FUS(MRIガイド下収束超音波療法)などがありますが、これらについてその治療跡がどうなるのか、胸を開いて伸ばしたりするのは施術後どのぐらい経ってから可能なのか、把握しているのでしょうか?

また、免疫療法やビタミンC点滴、丸山ワクチンなど、代替療法もさまざまあります。それぞれ治療前後の注意事項は違うはずです。無治療の方、漢方やサプリなどの使用も含めますともう十人十色、千差万別です。

他の疾患での症状や服薬の状況なども違いますし、閉経前か後か、年齢、肥満度、体質の違いなども含めますと、まったく同じリハビリを要する人などまず、いないのです。



乳がんは転移再発しやすい病気です。本人も知らないうちに骨転移していてホルモン治療と相まって骨が弱ってしまっていて、たまたまヨガを受けたら骨が折れてしまった、というケースもあり得なくはないと思います。きちんと想定して対策を考えているのでしょうか?

万が一トラブルが発生しても(副作用で嘔吐したり出血したり半月板損傷したり蜂窩織炎になったり)、理学療法士や看護師が病院内で行っているのであれば対応は可能でしょう。医師もすぐそばに控えてますし。

しかし一般のヨガインストラクターが、ヨガスタジオや自宅で行った場合はどうでしょう?救急車呼びますか?



しかも、病院スタッフは忙しいのです。毎回来てもらうのではなく、自宅で自分で出来るようなリハビリ方法を教えてくれます(病院にもよりますが)。

乳がんヨガのような「教室」だと、毎回通う前提です。でないとインストラクターが儲からないから。

そして、集団でいると、どうしても他の人と自分を比べたりしますよね。

「あの人、私より後に手術受けたのに、もうあんなに元気そう。私は全然動けないのに…。」

「あの人、同じ薬使っててなんであんなに副作用軽いんだろう。私は酷いのに…。」

よりケアを必要とする(QOLが低下してる)人ほど、嫌になってしまったり、無理して動き過ぎてしまったり。

ナーバスな患者達の気持ちをうまくくみ取れるインストラクターならいいと思いますが、ヘタなこと言ってしまうとかえって患者を落ち込ませることにもなりかねません。

で、自宅で自分でやりたければ「3万円払って資格取れ」、ってことになるわけです。



「乳がん」そのものの治療には直接は関係しない「QOL向上」だけなら、「乳がんヨガ」に限らず好きなことをすればいいと思います。

激しすぎない、ウォーキング程度の身体活動ならエビデンスもあるわけですから、ウォーキングでもいいと思います。捻ったりしないので怪我の心配はありませんし。他にもやりたいものであれば、医師と相談の上、本人の責任においてやればいいと思います。やりすぎは禁物ですが。

「ずぼらヨガ」的なゆる~いヨガを自分でやってもいいし(乳がんヨガもずぼらヨガと大して変わりません)。



運動でなくてもいいのです。アメリカのMDアンダーソンがんセンターでは音楽療法や鍼なども行っているそうですし、韓国の病院では園芸療法などさらにいろいろな補完療法を行っているそうです。

「乳がんヨガ」を信じて受けるのであれば、QOL向上には寄与することは分かります。しかし信じていない人、あるいは逆に乳がんヨガに対して過剰な期待を持って受けに来てしまった人(私がそうでした)だと、ストレス溜まって逆効果の可能性もあるんですよ。



私には「乳がんヨガ」は乳がん患者やヨガインストラクター資格保持者をカモにした詐欺のようにしか見えないんですよね…。その理由はまた次回、詳しく書こうと思います。


2019年7月25日 (木)

論文と乳がんヨガ

前回、こちらの論文に関する考察を書きました。

私の考察をざっくりまとめますと

「運動しすぎると悪化する可能性があるのに無視してんじゃねーよ!」

ということなのですが

この論文、もともとは「乳がんヨガ」のサイトにリンクが貼られていた、厚生労働省の統合医療に関するパンフレットから参考文献ひいてって見つけたものです。

そこで今回は、この論文と乳がんヨガとの関連について書いてみたいと思います。



論文のレファレンスの30番の付表に、どういう運動をするとどのぐらいの活動量になるかという数字(MET表)が載っています。

それによりますと、「ヨガ」は02100にConditioning exercise,Streching Hatha yogaとして4.0と記載されております。なので身体活動量としては、週に1時間行ったとして4MET/wk。

少し早めのウォーキング(3.5mph)と同じぐらいの運動量ですね。しかしこれは「ハタヨガ」の場合です。




レファレンス38では、運動群は1日45分の有酸素活動を含む身体活動を行い、週平均171分活動したそうですが、

この時の対照群(比較のための集団。この場合は運動しなかった人達の群)は、週に45分未満のストレッチ、それ以上の運動はしない、という条件でした。



…って…。

この文献では、週に1時間弱程度のストレッチは、身体活動に含まれない?

ならば、病院での月1時間の「乳がんヨガ」って、この論文とは殆ど関係ないのでは???



そりゃ、身体活動量が多いヨガもあります。太陽礼拝の間にいろいろなポーズを入れ込む「アシュタンガヨガ」などは結構汗かいたりしますよね。

しかし、乳がんヨガは「リストラティブ系」なんだそうですよ。

リストラティブヨガってこんなのです。

(私が受けた乳がんヨガはそうではなかったのですが。ブロックもブランケットも使いませんでしたし。何しろ空手パンチもどきとため息呼吸でしたからw )

この「リストラティブヨガ」。

折りたたんだブランケットの上に寝転んだり、ブロックやボルスターで身体を支えたり。

座ってるか、寝転がってるか、うつぶせになってるか、壁に寄りかかったり、もたれかかったりしているか。



この内容で

いったい

どのぐらいの

「 身 体 活 動 量 」が

あると

思いますか???



寝ている状態(07030 Inactivity, Quiet Sleeping 0.9MET)に近いのでは?????



ヨガというのはもともと何でもありです。

ポーズによってはストレッチにも筋トレにもなりますし、ポーズを連続して行えば有酸素運動にもなります。

しかし「リストラティブヨガ」に関して言えば、有酸素運動の要素も筋トレの要素もありません。

殆ど動かず、リラクゼーションのみ。ストレッチ要素もわずかしかない。



そういう乳がんヨガの説明に、「身体活動量と死亡リスクの相関」に関する論文を大元にしたパンフレットへのリンク貼り付ける、って

BCYIの皆様、一体、何を考えてるんでしょうか?????



もしかして、根拠となる本や論文、読んでなかった?????

仕事として、「乳がんヨガ」やろうって人達が、

これから全国展開していこうっていう「BCYI」立ち上げた人達が、

誰一人として、

読んでない??????????

えっ?

まさか!!!!!



いやいや…

多分、サイトのパンフと本ぐらいは読んでたんですよね。読んでたけど、医師が書いてるんだからと信用してた。

それとも、論文も読んでみたけどわからなかった。

或いは、論文の中身は把握したけどリストラティブヨガとの関連は考えなかった。

もしかして、読んで中身もしっかり把握して、まったく関係ないインチキな論文だと分かってはいるけども「厚生労働省が推してるんだから」患者さんのためになろうがなるまいが、べつにいいかぁー、とりあえず貼っとけ!という感じ???



いずれにせよ

乳がん患者のことをきちんと考えて、やってるようには見えないんですよね。



「利益相反」という言葉があります。

英語ではconflict of interest(COI)。

直訳すると「利害の対立」。

どういう意味かと言いますと

例えば医学の研究者であれば、科学的客観性の確保や、患者や被験者の利益を保護するという「責任」がありますが、

資金の提供元(企業や国など)にとって有利あるいは不利になる可能性がある場合に、「公正であるべき」研究結果の判断に影響をもたらしかねないと懸念される状況を意味します。

なので、最近の論文には資金の提供元を明示する決まりになっています。



乳がんヨガで言えば

彼らは「乳がん患者の利益」よりも、ヨガ団体の維持発展或いはインストラクターの収入という「組織や個人の利益」のため、指導内容の検証がおざなりになっているのではないかという懸念がある、ということ。

少なくとも、私が客観的に判断した限りでは。

しかし私自身も「乳がんヨガ」の体験クラスを受けた際、「ため息呼吸」などという「ヒトのことバカにしてんのか?」と思わざるを得ない対応を受けた経験から「乳がんヨガ」に関してはマイナスイメージしかないのです。なのでここは第三者の方から見たら懸念材料かもしれませんけど。

ついでに書いておくと、「空手」のMETスコアは10です(15430)。「グーパー空手もどき」はどのぐらいか分かりませんが。



リストラティブヨガを「乳がんヨガ」として広めたいのだったら、呼吸法やメディテーション、リラクゼーションが乳がんにどういう影響を与えるのかを医学的に証明すべきだと思います。

しかし、彼らはそれをやろうとしない。

出来ないからでしょう。

彼らの知識の浅さでは、無理です。乳がんに関してもヨガに関しても。



「乳がんヨガ」のサイトにコメント寄せてるお医者さん達も、このくらいのアドバイスしてあげればいいのに。

ま、こんなことしても何のメリットもないってことで、衝突を避けて言わないだけだろうけど。

お医者さん達も私のブログ読むまで、彼らが出してきたエビデンスの意味のなさに気付かなかったのかもしれないし。

もしかして乳がんヨガのサイト自体もこのブログも読んでなくて未だに何も知らないかもしれないし。

何しろ「乳がんヨガ」だもの。とりあえず勧めるようなコメント出しておけば、「乳がんヨガ」に釣られた乳がん患者が自分の病院に来てくれるかもしれない、ぐらいの感覚なんでしょうね、お医者さん達。



あーあ。

こういう所でも乳がん患者はバカにされている。「カモ」としか思われてない。

乳がん患者の皆様、気を付けてくださいね。騙されないように。

次回は「では乳がん患者は何をすべきか」を語ってみたいと思いますので、よろしくお願いします。

2019年7月24日 (水)

論文の読み方 考察編

これまで何度かに分けて、下記の論文についてどういう内容が書かれているかレファレンスの内容は、著者らの他の論文は、などの解説をしてきました。

Physical Activity and Survival After Breast Cancer Diagnosis

今回は、私はこの論文をどう読むか?を書いていきます。かなり批判的な内容になってます。

もちろん異論はあるでしょう。

しかしレファレンスや関連情報からは、私には下記のようにしか受け取れないのです。ご意見のある方は、コメントにてお願いいたします。



論文の主旨は、わかりやすく説明するとこんな感じです。



アメリカ看護師調査(Nurse's Health Study、以下NHSと略す)回答者の中から乳がん患者の記録を調べた結果、

1.運動している患者の方が乳がん死亡リスク、再発リスクともに低かった。

2.ホルモン感受性のないER-HER2+の患者の乳がん死亡リスクは、ホルモン感受性のあるER+の患者の乳がん死亡リスクより高かった。

3.よって運動で死亡リスクが下がるのは、エストロゲンレベルが低下するからであると思われる。参考文献にもそう記載されている。

4.より運動量が増えれば乳がん死亡リスクもより下がると予測したが、15MET/wk以上は横ばいだった。

5.乳がん患者も一日30分以上のエクササイズをすべき。



さて、これらの主張は正しいのでしょうか?



まず、1.の乳がん死亡リスク、再発リスクですが、確かに週9METまでは、身体活動量が増えると死亡リスクも再発リスクも下がる、という結果になっています。

おそらく、エストロゲンよりもむしろインスリンが関係しています(レファレンス40参照)。

ウォーキングなどの軽い運動でインスリン抵抗性が改善され、筋肉が糖を取り込むので血糖値が下がります。その結果、がん細胞に栄養(糖分)が回らなくなったためにがん細胞の増殖が抑えられた、そういう可能性があります。

一方、 運動強度が大きい場合、あるいは運動時間が長く及んだ場合、グルカゴン、カテコールアミンなどのインスリン拮抗ホルモンの分泌が増加し、これらの影響により、血糖値は上昇してしまうそうです。だからやりすぎると効果がなくなります。


そして、週平均の身体活動量が「ゼロ」という人はいったいどういう人か?についても考えてみましょう。

おそらく、体調が悪化して、動けない状態の人です。

病気の進行により、或いは治療の副作用により寝たきり状態であった場合など、死亡率が高いのもやむを得ないように思います。

毎日10分のウォーキング(3MET/wk程度)が出来る程度の人はそういう人達より死亡率が低い、さらに毎日30分程度のウォーキング(9MET/wk程度)が出来る程度に動けるくらい症状の軽い人は、もっと死亡率が低い。

ある意味、当たり前の話のような気もします。体力がある人の方が手術など侵襲性の高い治療に耐えられますし。




2.のHER2+については、年代が問題となります。

この論文で扱ったNHSのデータは、1986年から2002年6月のものまで。

HER2+適応の分子標的薬ハーセプチンがアメリカで認可されたのは1998年。全16年の調査期間中、使われたのは最後の4年間のみです。

使用が広まるまでの期間を考慮すると、調査対象中のHER2+の患者さん達のうち、ハーセプチンが使われていない人は8割以上いるであろうことが予測できます。

そう、この論文でのHER2+死亡者というのは、殆どがハーセプチンの製品化に間に合わず、古いタイプの抗がん剤が使われた可能性が高い患者さん達なのです。

おそらく、1998年前後でHER2+患者の生存率はかなり変化していると思われます。

そして論文が出たのは2005年。

ハーセプチン以前の記憶が薄れてきた頃です。この著者まで忘れてしまっていたのでしょうか?



3.のエストロゲンに関しては、レファレンス編で説明しましたが、女性アスリートの話(レファレンス5)です。アスリートでない普通の女性でも毎日10マイル(16km)走るようなハードトレーニングをしていると無月経になる可能性がある(レファレンス6)、という話です。

「身体活動量に比例してエストロゲンが減少」という話ではなく「身体活動量が多すぎる場合」限定、それも摂取エネルギーとの相関であり摂取エネルギーが少ないアスリートの話で、摂取エネルギーが多ければ無月経にはならないのです。

つまり、乳がん患者が食事を変えずにウォーキングのような軽い運動をしただけでは、エストロゲンが減少する可能性はかなり低いと思われます。

しかもこれは閉経前女性の、卵巣からのエストロゲン分泌の話です。



閉経後の女性のホルモンレベルを運動群とコントロール群で比較した文献(レファレンス38)では「有意差はない」程度に下がった、という結果でした。

そしてこれは「濃度」の話。エストロゲン総量がどれぐらい作られてたのか、という視点からの論述はありません。

閉経後は脂肪細胞でエストロゲンが作られるので、月経のようなホルモン量の指標がありません。

アロマターゼ阻害剤の副作用で関節痛が出たり骨粗鬆症になったりする人は、アロマターゼ阻害剤服用以前は軟骨の再生や骨の分解予防に寄与するエストロゲン量が多く作られ、消費されていたと推測できますが、そのあたりの説明がないのです。

ただ、閉経後はエストロゲンは脂肪細胞でアンドロゲンから作られますので、体脂肪を減らせばエストロゲン生成量は減るようです。実際、レファレンス38にもそう書いてあります。そういう意味で、もともと体脂肪量が多い人には、運動も効果があるのかもしれません。

しかし肥満予防はむしろ食事で行うべきでしょう。脂肪分が多い食事はエストロゲンを増やすとの論文も多数あります。Holmesさん達のグループでは違う結果(脂肪分が多い食事はエストロゲンを減らす)でしたが、他のグループは軒並み脂肪摂取とエストロゲンの正の相関を指摘しています。

そのため、エストロゲンを減らしたければ脂肪分の摂取を控えた方がいいであろうことは予測できます。




4.「15MET/wk以上は横ばいだった」については明らかなウソです。グラフにしてみましょう。
    Photo_20190724160901    
    

確かに身体活動量9MET/wkまでは下がっています。しかし15MET超えると、死亡リスクも再発リスクも上がっています。

それを無視して、横ばい(flat)であると言い切ってしまっています。


なのに5.では上限を設けずに運動を勧めている。



これは一体どういうことでしょうか?



15MET/wk超えると死亡率、再発率が増加した分は、上記のインスリン拮抗ホルモン以外にも、インスリン様成長因子(IGF-1)の影響が考えられます(レファレンス40参照)。

論文中では有意差はないとされておりますが、IGF-1濃度が高いと死亡リスクも再発リスクも若干上がっています。

同じ文献では、エストロゲン濃度が低い方がむしろ死亡リスクが若干上がってます。これも有意差はない程度ですが。

エストロゲンに関しては、濃度ではなく総量で考えれば納得がいきます。

エストロゲン受容体が多い、或いは活発であるような、エストロゲンの消費が多い人は、アロマターゼによるエストロゲンの生産が追い付いておらず、空腹時のエストロゲン濃度は低くなる、という可能性があるのではないでしょうか。

そして身体活動とエストロゲンの関連についてはこちらの論文が参考になります。

The role of cytokines in regulating estrogen synthesis: implications for the etiology of breast cancer


運動すると分泌されるマイオカイン、インターロイキン6(IL-6)が酵素であるアロマターゼを活性化し、エストロゲンの分泌を促すとのことです。

むしろ、運動で乳がん細胞中のエストロゲンは増える、と。
 

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2005年以前に発表された論文なので、世界的に有名な研究者であるHolmesさんがご存知ないはずはないと思うのですが。

一方、IL-6は卵巣においてはアロマターゼ活性を阻害するようです。女性アスリートの月経障害にも関係している可能性があります。


また、IL-6そのものにもがんを進行させる作用があるそうです。活動量が増えると死亡率も再発率も上がるのはIL-6の増加が影響している可能性もあります。

IL-6だけではありません。

成長ホルモン(GH)もインスリン様成長因子(IGF-1)も、乳がん細胞を増殖させます。また、アディポネクチンというサイトカインには抗がん作用があり、低アディポネクチン血症は乳がんの発がんと関連がありますが、アディポネクチンは握力や脚伸展筋力と逆相関の関係にあり、運動して筋力がつくと逆に減ってしまうのです。

さらに、動き過ぎるとインスリン拮抗ホルモンであるグルカゴン、カテコールアミンなども分泌されます。上記のようにこれらはインスリンの作用を阻害し血糖値を上げますので、がん細胞の増殖に繋がります。

このように、運動するとがん細胞を増殖させる方向に働く物質が多くあります。

運動して分泌されるサイトカインの中では唯一、SPARCという物質には抗がん作用があるようです。しかし大腸がんでは運動でのSPARC分泌による予防効果は確認されているのですが、乳がんでは論文を検索しても殆ど出てきません。「化学療法(nab-パクリタキセル)の効果を向上させる」程度のようです。

以上の理由により、「身体活動量が増えるとエストロゲンが減り、再発リスクも死亡リスクも下がるので乳がん患者には運動を勧めるべき」は殆どウソであることがわかります。



ところで。

私のような素人が読んでもわかるような論文のウソを、どうして厚生労働省の優秀な官僚の皆様には見抜けなかったのでしょうか?

或いは、厚生労働省が参考にしたという書籍

「がんに効く」民間療法のホント・ウソ

の著者である医師達には、何故見抜けなかったのでしょうか?

おそらく、見抜「け」なかったのではなく、見抜「か」なかったのです。

ハーバード大学、或いはその研究資金を提供したアメリカNIHに対する「忖度」ですよ。

なにしろ日本の医療は中曽根政権時のMOSS協議以降、アメリカ追従せざるをえない状況になっているので、否定するのは難しいでしょう。

このあたりもそのうち書きます。



それにしても、乳がん患者はいったいどれだけバカにされているのか。

以前、乳がん患者には運動がいいとする論文を検証し、QOL改善だけじゃん!と指摘しましたが。

今回は、もっとひどい結果となりました。悪化する可能性を隠しているとは…。

はぁ~…ため息が出ます。

ため息とはこういう時に自然と出るものです。わざわざ出すものではありません。



しかし。著者のHolmesさん、実は根はいい人なのではないかと思ったりもします。

何しろ、レファレンスのチョイスが最高です。しっかり読めばカラクリが分かるようになっています。

新元号発表後にネット上にいろいろ噂が流れましたが、それに近いものを感じました。

レファレンスを読んでいて、とでも勉強になりました。紹介して頂き、ありがとうございました。



せっかくの頭脳と知識を、忖度論文にしか生かせないのはもったいないとは思いますけども。

2019年7月 4日 (木)

手術を受けました

今回も「論文の読み方」シリーズは一旦お休みにしまして、乳がん治療の途中経過の報告です。

前回の記事に書きました通り、手術を受けました。

5月の下旬に受けて、3週間ほど入院したのち退院いたしました。

今は、通院治療を受けております。



右の植皮部分がなかなか生着せず、いまだにガーゼのお世話になっていますが、とりあえずがんの塊はなくなりました。

しかしまだ取り切れてないものもあるので化学療法を勧められています。来週までに回答を出さねばなりません。

というわけで今、抗がん剤についていろいろ調べています。

「抗がん剤批判してたくせに何を言ってるw」とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし最近は毒性の高いアンスラサイクリン系は使わない、と書かれたパンフレットを目にしまして、ではそれ以外は毒性は低いのか、比較してみるとどうなのか?気になったので試してみることにしました。毒食らわば皿まで、です。



手術についても、自分が実際に受けてみるまでは分からなかったことが沢山ありました。

何しろ身体の一部を切り取るのです。乳がんの場合、乳房を取って皮膚を縫い合わせますが、かなり無理やり引っ張っての縫合なので、肩が前に下がり、胸郭が狭くなったような感じがします。これは想像しておりませんでした。

特に私の場合、左右同時に切り取りましたので、片側だけの人よりもひどくなっていると思います。

しかも右乳房切除部分の植皮を下腹から切り取ったのですが、そのお腹の傷もまだ伸ばすと痛むので、どうしても前かがみになってしまいます。姿勢が悪いと血行も悪いし気分的にも落ち込みます。そろそろこのあたりのリハビリも始めないといけません。



そして、腕の運動障害(乳がん手術後の一般的な運動障害についてはこちらをどうぞ)。

右も左も、傷口のひきつれで腕が上がりません。リハビリ必須です。

以前、五十肩気味になった時にリハビリで治した経験がありますので、今回もそのつもりでおりましたが

右はともかく、左側は神経にもがん細胞が絡みついていたそうで、神経の一部(おそらく肋間上腕神経)を切除したとの説明が医師からありました。

そのため、術後殆ど痛みを感じなかったのは良かったのですが。左側はひじを上げようと思っても肩の高さまでしか上がりません。右手で左ひじを持ってあげると、肩より高いところへも上がるのですが、いかんせん脳からの指示が腕に届かないのです。そして左の二の腕は痛み同様、熱さも冷たさも感じず、ただただ痺れただけの状態になっております。

最近ようやく、背中を使うことで左ひじも上がるようになってきました。

こうしたリハビリは個別には行うべきだと思いますが、某ヨガのように集団で行う必要はありません。



そして、例の身体活動と乳がんに関する論文で、ウォーキングやジョギングをする人ばかりだったのは何故か、ようやく理由が分かりました。

あの論文はデータが古いので、ハルステッド手術やリンパ郭清術を受けた人の割合、かなり高いのではないかと思われます。神経を切断された人も多くいたのではないでしょうか。

手が動かなければ、球技全般、出来ません。テニスもバスケもバレーボールも野球もソフトも。せいぜいサッカーぐらいでしょうか。

エアロビクスはじめ、ダンス系も厳しいでしょう。

水泳も同様。筋トレも困難。

そもそもリンパ郭清をした患者はリンパ浮腫予防のため、激しい動きで汗を大量にかくような運動は行わない方がいいのです。

結果、ウォーキングや軽めのジョギングに落ち着くことになります。

もちろん、どれもこれもやろうと思えば「出来ない」ことはありません。しかし手が上がらないと着替えも困難で、被り物の服(Tシャツなど)が着れずに前開きのものばかりだったりします。これではウェアも選べません。



私の場合、手作業さえ出来ればいいので、手術後も何とか生活は出来そうです。抗がん剤の副作用は心配ですが、これについてはまた後日。



今回の手術は、いろいろ説明を受けて納得の上で受けたものでしたが、こういう後遺症が残ってしまうので、やはり手術を受けるのはよく考えてからの方がいいとは思います。

例えば、こんな本があります。

「乳がんです」と言われたら、あわてて切ってはいけない!

清水市民病院で手術を受けた人のインタビューが載っているのですが、実は清水市民病院では大変なことが起きていたようです。病院もしっかり選ばないといけません。

また、近藤誠医師監修のマンガ

医者を見たら死神と思え

には「検査」と偽って乳房全摘出してしまう、という悪質な医師の例も載っていました。

こういう悪どい医師らがいるから、セカンドオピニオン必須なんですよね…。



「手術」というものは「腫瘍を切り取ることで骨転移や悪液質への進行を防ぐ代わりに後遺症が残る」というメリットもデメリットもあるものであると同時に、病院側が「稼ぐ」手段でもあるわけです。

そのあたり、患者はしっかり考えておかないといけません。



何しろ、手術がもし失敗してしまった場合、被害を被るのは患者側なのですから。

2019年5月22日 (水)

手術を受けます

今回は「論文の読み方」シリーズは一旦お休みにしまして、乳がん治療の途中経過の報告です。



乳房切除術を受けることになりました。



放射線治療後はマーカーも下がり、副作用の皮膚の炎症も治まり、快方に向かっていると思っていたのですが。

経過確認のためのCTで、右乳房だけでなく左乳房にも腫瘍があることが確認されました。左も右同様、リンパ転移してます。

西洋医学的な治療をすると「がんが怒る」「がんが飛ぶ」と、自然派の方々がよく言いますが

右から左へ飛ぶとは…。

がん細胞も、放射線量が高い所から低い所へと避難したんですね。なかなかの賢さです。

というわけで

左の乳房、全摘出です。リンパ郭清もします。右に残った腫瘍も切除します。

どうなることやら。



手術で切ったからと言って寿命が延びるというエビデンスはない、むしろ転移したりがんが増えたりする、という説もあるようですが。

私の場合、他に腫瘍を縮小させる手立てが見つからないので、やむを得ません。苦渋の選択です。

乳房は私の年齢ではもう不要な臓器ですから、切ってもあまり影響はありませんし。

ガン病棟」に乳房切除することになりパニックに陥る少女のエピソードが出てきますが、今更あのようなこだわりもありませんし。むしろ、なくなった方が楽になるかもしれない、ぐらいに考えております。



今回は、おカネに関してはむしろ加入している保険の関係で、がんで放射線治療やら手術やら入院やらしますと、支払う医療費より入ってくる保険金その他の方が高くなり、全体としての収支はプラスになりますw

保険金詐欺?何をおっしゃいますか。約款通りの請求です、詐欺ではありません。

ただ、主婦業すらまともに出来ない「無職」に入院日額出るのは、引き受ける会社側のモラルが問われるかもしれませんねw

あの有名ながん保険の会社です。保険に関しては以前の記事を参照してください。



ちなみに今、病院からです。手術は明日です。

麻酔の際に口からチューブを入れるとかで口腔外科で診察を受けたり、麻酔科医の説明を受けたり。同意書にサインしたり。明日の手術の準備をいろいろと行っております。



手術が無事、成功しますように。

受ける側としては、麻酔を受けたら後は寝ているだけなので、祈ることしか出来ません。

スクナヒコナノミコト様、お守りください。お願いします。


2019年5月21日 (火)

論文の読み方 関連情報編

今まで三回にわたり、乳がん患者の身体活動に関する下記の論文につきまして、どういうことが書かれているかについての解説をしてまいりました。

Physical activity and survival after breast cancer diagnosis.

今回は、この論文の著者や研究グループが置かれた立場などを推察し、行間を読み解くための周辺情報について、これまで私が調べて知り得た情報を書いておきたいと思います。



まずはNurse's Health Study(NHS)を基にした他の論文について。



この論文を読むにあたり、何かの参考になるかも、と思い、近くの図書館に行き、乳がんに関する疫学について書いてある本をあたってみました。

たまたま見つけたのがこの二冊です。

がんの疫学

新版 乳癌 (図説臨床「癌」シリーズ8)

中身を読んでみますと「がんの疫学」p52-53にはこんなことが書かれています。

>脂肪摂取を減らし血中エストロゲン値への影響を調べる介入研究も,いくつか行われている.1999年に13の介入研究をまとめたメタアナリシスが行われているが2),閉経前,閉経後女性とも脂肪摂取を控えることで,有意なエストラジオールの低下が認められた.

>最近の米国のNurses' Health Study(コホート研究)参加者381名を対象とした横断研究では,脂肪摂取と血清エストラジオール値との間にむしろ負の関連が認められている3). Nurses' Health Study では,脂肪摂取と乳がんリスクとの間に負の関連性が示されており,横断研究での脂肪摂取と血清エストラジオールの関連はこの結果と合致する.

>筆者らは閉経前および閉経後女性を対象に横断研究を行い,脂肪摂取とエストロゲン値の関連について評価を行った.閉経前女性(60名)では,月経開始後11日目の採血を行い,脂肪その他の栄養摂取は月経開始後2-10日目にわたる9日間の食事記録から推定した.総脂肪摂取と血清エストロンおよびエストラジオール値との相関係数はそれぞれr= 0.30 (p=0.02), r=0.26(p= 0.05)で,脂肪摂取が高い女性でエストロゲンが高値であった4). 

NHSの研究では、他の研究と違って何故か脂肪摂取と血清エストラジオールの間に「負の相関」がでているそうです。記載されていたその参考文献がこちらになります。

Dietary fat intake and endogenous sex steroid hormone levels in postmenopausal women.

著者欄にご注目ください。なんと、筆頭著者はHolmes MDさんでございました。偶然図書館で見つけた本に載っているとは…Holmesさんなかなか有名なんですねw



そして図説臨床癌シリーズの「乳癌」、1993年版なのですが、こんな表が記載されておりました。

 002-2_1

脂肪摂取と乳がんリスクの相関、他のグループでは正の相関が出ていますが、アメリカ人看護婦を対象とした研究だけは何故か「負の相関」。おそらくこちらの論文かと思われます。

Dietary fat and the risk of breast cancer.

著者はWillett WCさん。あれ?この名前はどこかで見覚えが。確かつい最近どこかで見たような気が…。そういえば…。

さっきの「がんと疫学」に載ってたこの論文

Dietary fat intake and endogenous sex steroid hormone levels in postmenopausal women.

ここの著者欄で見たのでした。Holmesさんの次の次にWillettさんが名前を連ねています。同じグループだったんですね。

他にも、このお二人、こんな論文出してます。乳製品の摂取と乳がんリスクの関連について。

Intake of dairy products, calcium, and vitamin d and risk of breast cancer.

We found no association between intake of dairy products and breast cancer in postmenopausal women. Among premenopausal women, high intake of low-fat dairy foods, especially skim/low-fat milk, was associated with reduced risk of breast cancer. 

閉経後の女性では、乳製品の摂取と乳がんとの間に関連性は見られませんでした。閉経前の女性では、低脂肪乳製品、特にスキムミルク/低脂肪牛乳の高摂取は、乳がんリスクの低下と関連していました。

へぇ~、牛乳や乳製品の摂取と乳がんには相関なし、「乳がんと牛乳」のジェイン・プラント博士の説とは逆の結果ですねぇ。しかもここではカルシウムだのビタミンDだのって話ばかりでIGF-1は無視してます。

でも実はこの論文の発表と同時期に、Holmesさんはこんな論文も書いています。こちらにはIGF-1が出てきます。

Dietary correlates of plasma insulin-like growth factor I and insulin-like growth factor binding protein 3 concentrations.

Higher fat intake, in particular saturated fat, was associated with lower levels of IGFBP-3. We conclude that higher energy, protein, and milk intakes were associated with higher levels of IGF-I. These associations raise the possibility that diet could affect cancer risk through influencing IGF-I level.

より高い脂肪摂取、特に飽和脂肪は、より低いレベルのIGFBP-3と関連していた。我々は、より高いエネルギー、タンパク質、およびミルク摂取がより高レベルのIGF-Iと関連していたと結論します。これらの関係は、食事がIGF-Iレベルに影響を与えることによって癌のリスクに影響を与える可能性を高めています。

乳がんではなくがん全体のリスクが上がるという表現ですね。しかもIGFBP3/IGF-1比が重要、という説を出してます。これは確かにそうなんですが、プラント博士が本を出す前に気付かなかったんでしょうか?

日本語版「乳がんと牛乳」の原著である「Your Life In Your Hands」の出版は2000年です。そしてHolmesさんグループが乳製品と乳がんリスクに相関はない、むしろリスク下がるという上記の論文出したのは2002年。

1980年代から90年代にかけては脂肪と乳がんの相関ばかり書いてたHolmesさん達のグループが2002年に突然、乳製品との関連を調べ始め、結果はプラント博士の説とは違う結果だった、と。

プラント博士の本を否定したがってるとしか思えないんですが。

ちなみに日本ではどうかと言いますと。

内閣府の食品安全委員会では、IGF-1の発がん性は認めた上で「牛乳や乳製品の摂取ではIGF-1濃度は上がらない」というフランス食品環境労働衛生安全庁ANSESの説を採用し、牛乳に発がん性はないとの見解を出しています。これに関してはHolmesさんの、乳製品摂取でIGF-1が上がり脂肪摂取でIGFBP3が下がりがんリスク上がる、という論文の方が正しいような気がします。アメリカでは遺伝子組み換え肥育ホルモンが使われていてそれがIGF-1濃度を上げるっていう説もありますので、フランスと状況が違う可能性はありますが。何しろ内閣府のサイト、ANSESの報告書へのリンクが切れていて、内容が確認できません。困ったもんです。


そして、Nurse's Health Studyという調査そのものについて。

これはどういう調査かといいますと、英語版Wikipediaによれば、経口避妊薬の長期使用の影響を調べるために開始された調査のようです。

当初は医師の奥様に調査を依頼したのですが、医学的知識が不足していたため調査対象が看護師に変更になり、その後は調査内容を経口避妊薬や心血管疾患に限定せず、徐々に拡大していったそうです。

こんな記述もあります。

>The Nurses' Health Study faced controversy based on its recommendations. The study published in 1985 that taking estrogen as a part of Hormone Replacement Therapy would lead to large decreases in risk of heart disease (a third of the risk of those who did not take supplements).[42] However, the Framingham Heart Study fond the opposite result.[43] This controversy caused a 10 year follow up by the Nurses' Health Study which again concluded that risks of CVD were lower in samples currently taking hormones.[43] However, further studies such as the Heart and Estrogen-progestin Replacement Study found that estrogen tablets actually increase risk for heart disease. This was a double-blind trial following an experimental group of women who were given replacement therapy pills and a control group following the same procedure with placebos.[44] Findings from the study displayed a direct relationship between therapy and risk for heart disease, as opposed to the previously stated benefits.[45] This finding largely opposed the published NHS conclusion.

『看護師の健康調査はその推薦に基づいて論争に直面した。1985年に発表されたこの研究は、ホルモン補充療法の一部としてエストロゲンを摂取すると、心疾患のリスクが大幅に減少することを示唆しています(サプリメントを摂取していない人のリスクの3分の1)。[42]しかしながら、Framingham Heart Studyは反対の結果を好んだ。[43]この論争は看護師の健康調査による10年間の追跡調査を引き起こした。これもまた、現在ホルモンを服用しているサンプルでCVDのリスクが低いと結論付けた。[43]しかし、Heart and Estrogen-progestin Replacement Studyなどのさらなる研究では、エストロゲン錠が実際に心臓病のリスクを高めることがわかりました。これは、補充療法ピルを投与された女性の実験群とプラセボを用いた同じ手順に従った対照群を対象とした二重盲検試験でした。[44]この研究の知見は、前述の利点とは対照的に、治療法と心疾患のリスクとの間の直接的な関係を示した。[45]この発見は公表されたNHSの結論に大きく反対した。』

ほほぉ…エストロゲン錠と心疾患との関連について、他の調査、それも二重盲検での試験と違う結果が出てる、と…。

NHSの方は製薬会社に都合のいい結果だったようですね。Holmesさん達の論文も、特定の食品ががんリスクを上げることはないっていう生産者側に都合のいい結果となっていたり、運動はする方がいいというフィットネス業界に都合のいい結果となっていたり。



てことは。

NHSを利用した疫学調査って…。

本当に、信用できるんでしょうか?

もしかして、医療業界側が、論文捏造するための調査だったりするのでは…?????

 

まぁ…NHSについては各自の判断にお任せします。

他の周辺情報として、この論文が出た頃の乳がん治療の変化について、少し記しておきます。


2000年前後、がん関連では様々な薬が世に出ました。

アメリカでは1998年に認可された乳がん初の分子標的薬、ハーセプチン。HER2+タイプの方はお世話になっていると思います。

今では当たり前に使われるハーセプチンですが、この論文は2002年までのデータを使用しています。なので、この論文で「死亡者」とカウントされたHER2+患者の多くは、ハーセプチンではなく他の抗がん剤を使われていた可能性があります。

つまり、2002年までに死亡したHER2+患者は「ハーセプチンに間に合わなかった」方々なのではないでしょうか。2005年頃にはハーセプチン以前の状況は忘れられていたかもしれませんが。



また、2000年代はホルモン治療にアロマターゼ阻害剤が登場します。タモキシフェンより副作用が少ないということで適応が拡大されていきました。実際にはタモキシフェンのような「子宮体がん」のリスクは低いのですが「心疾患」リスクは上がるうえ、関節痛や骨粗鬆症になったりする薬なんですが。

今回の論文にもアロマターゼ阻害剤などの言葉が出てきます。しかし詳しくは書かれていません。当時はアロマターゼ阻害剤がどういうものか、まだ判断がつかなかったのかもしれません。アリミデックスが初期乳がんにも適用されることになるのは2006年、つまりこの論文が出た次の年です。



さて次回は、この辺りの内容も踏まえた上で、総合的な考察を行いたいと思います。



5/30 追記

乳製品摂取と乳がんに関するHolmesさんの論文

Intake of dairy products, calcium, and vitamin d and risk of breast cancer.

これに対する反論は「乳がんと牛乳」p150-152に訳者注として掲載されていました。読み飛ばしておりました。

以下、引用します。

>酪農業界にとっては一大事なので、プラント教授の「乳製品主犯説」(本書の初版は2000年)を撃破するために多くの知識人が動員されたらしい。その際、反対論者が強力に援用したのはハーバード大学の「乳製品と乳がんに関する研究」であった。その理由は、この研究がアメリカ国立衛生研究所(NIH)の資金援助を受けて、ハーバード大学という超一流の研究機関が、8万8691人もの看護師の乳がん発生を16年にわたって追跡した大規模疫学研究(Harvard Nurse's Health Study:HNHS)であり、しかもその成果が、アメリカがん研究所雑誌(Journal of the National Cancer Institute)という一流のがん学術誌に掲載されたからである。

>この論文を批判的に読んでみよう。

>本来のコホート研究(前向き研究)なら、乳製品をとっていないグループととっているグループのあいだで乳がんの発生率を比較するのが筋であるが、この研究では、乳がんの発生した女性が発生前に乳製品をどのぐらい摂取していたかということだけを問題にして、乳がんが発生しなかった8万5209人の食生活はまったく問題にしていない。

>乳がんが発生する前の乳・乳製品の摂取量を3~5段階にわけ、摂取量別に乳がんリスクを計算している。摂取量のもっとも少ない人の乳がんリスクを1.00として、摂取量が増えるとリスクがどうなるかを計算したのである(相対リスクという)。

>この研究で、乳製品の摂取量が多い人、あるいは少ない人というのはどんなひとなのだろうか。一般に成人女性の1日あたりの摂取カロリーは日本でも1800~2000キロカロリーとされているが、驚いたことに、乳がんの発生が多かった牛乳の少量摂取群の女性たちの1日あたりの平均摂取カロリーはたったの1398キロカロリーであった。この人たちの平均体重は記録されていない。身長だけである。身長164センチメートルの看護師が、1日1400キロカロリーの摂取カロリーでまともな看護労働ができるだろうか。しかも、この人たちの脂肪のエネルギー比(脂肪カロリーが総摂取カロリーに占める割合)は47.1パーセントである。総摂取エネルギーのほぼ半分を脂肪から摂取していることになる。こんなにたくさんの脂肪をとっている人が乳がんになりやすいことは肯ける。脂肪摂取量がかくも多い人には肥満が多いからである。しかし、体重の記録がない。1日にわずか1400キロカロリーの人が肥満であるわけはない。この論文は矛盾に満ちている!

>この研究が採用した食品接種頻度調査には大きな欠陥がある。調査票に記載されている食品の摂取量と頻度を自己記入して郵送するという方式であるが、回答者が食品の摂取頻度を正確に記入しているという保証はまったくない。

だそうです。

「この論文は矛盾に満ちている!」

まさに、この一文に尽きますね。

2019年4月15日 (月)

論文の読み方 レファレンス編

今回も下記の論文の内容についての記事です。

Physical Activity and Survival After Breast Cancer Diagnosis  

『乳がん診断後の身体活動と生存』

前々回はAbstractについて、前回は本文の内容について、それぞれ解説をいたしました。

お読みいただければ、論文の大まかな内容は把握できるかと思います。



しかし、論文に書かれている内容は、論文本体のみならずその周辺の情報も考慮して解釈せねばなりません。

前回の最後にはArticle Information「記事情報」欄の記述についてご紹介しました。

今回はそのArticle Informationの後の、論文の一番最後に書かれているReferencesの内容について解説したいと思います。

他にも論文に使われたNHS(Nurse's Health Study)とはどういう調査か? といったことや、著者個人及びこの研究チームの他の論文などの実績、論文が出された年代周辺の乳がん治療の動きなども考慮する必要があるのですが、それらの情報や考察などはまた別途記事にします。

論文一つでこんなに幾つもの記事が書けるとは思いもよりませんでした…。はぁ。疲れる…。

気を取り直してReferences「参考文献」。

論文の文中には随所に小さな数字が書かれておりますが、その部分の内容は該当する番号の文献を参考に書いている、という意味です。そしてそれらの文献は論文末尾にまとめて書かれます。それがReferences「参考文献」です。

これらの文献に果たして何が書かれていて、どの部分を参考にしているのかは論文を読み解く上でかなり重要です。しっかり読みこんでみなければ、著者らの考え方が分かりません。中には参考文献と全く同じようなことを書いただけのパクリ論文みたいなものもあったりしますし、参考文献とは明らかに違う結果が出てもそれが何故か分からないという意味不明な論文や、よくわからない結果となってしまったが明らかにするにはこういう調査が必要だろう、などの誤魔化しがある論文はよくあります。

この論文の場合はどうでしょうか。

この論文の参考文献は58本記載されています。ネット上でフルテキスト確認できるもの、登録その他が必要なもの、紙の雑誌からコピーするほかないものなどいろいろありましたが、出来るだけ集めて確認してみました。

この中で重要なのは5,7,31,40。特に40は全文を転載したいぐらい。ネットでフルテキスト読めないのが残念です。

1-3は乳がん診断後のQOLに関する論文。

1はリハビリについて、2は化学療法の予後因子について、3は生存率とQOL測定値の相関について。しかしこの論文ではQOLはあまり重視してないので、ここら辺は興味があったら読む程度でいいでしょう。

4についてはこの著者は『WHOが活動的な女性の乳癌発症リスクが20〜40%減少すると推定した』と書いてますが、元の文献では『癌の約4分の1から3分の1が過剰な体重および身体的不活発の原因であると推定した』つまり身体的な活動だけでなく「過体重」を問題視しているのです。ですが、この著者は無視してます。 

重要なのが5-7

この論文では「身体活動量が増えればエストロゲンレベルが下がる」と書いてあり、参考文献として5,6,7と3本の論文が表示されています。

5は無月経アスリートのホルモンレベルを、正常アスリートや殆ど運動しない女性達と比較したもの。

6大学生28人を対象に、一日4-10マイル(6.4-16.1km) 走らせ、月経やホルモンレベルがどうなるか調べたもの。

7乳がんの過体重および肥満の女性は、痩せてる女性と比較して生存率が劣るので肥満とホルモンの関連を調べてみた、という内容。

えーと。

これらの内容は「運動しすぎると女性ホルモンのレベルが下がって無月経になることがある(ならないこともある)」(5,6)「肥満女性は痩せてる女性よりエストラジオール濃度が高い」(7)という話であって、「運動すればエストロゲンレベルが下がる」とは微妙に違うんですよね…。

しかも5の文献は、月経に異常があるアスリートとそうでないアスリートの違いは「摂取エネルギー量」、つまり無月経アスリートは正常アスリートよりも摂取エネルギーが少ないので、更なる介入調査が必要、と締めくくられています。その後の調査では、無月経になるかどうかは摂取エネルギーとのバランスによるという結果が出ているようです。

ちなみに今回の論文のデータでは9-14.9MET-h/wkのカテゴリの方々が死亡率も再発率も一番低かったのですが、そのカテゴリでの摂取エネルギー(Intake)が一番多くなってました。おかしいですね、これではエストロゲンレベルは下がらないはず。しかしこの著者は何らコメントしていません。

7は性ホルモン濃度は体重と相関がある、性ホルモン結合グロブリン濃度は体重と逆相関がある、という内容です。もしエストロゲンレベルが低い方がリスク下がるなら、体重は少なければ少ない方がリスク下がるはずですが、他の参考文献(40)ではBMI22-25あたりの「標準的な体重の女性」が一番乳がんリスクが低いと出ているのです。このあたりの齟齬に関してもコメントなし。

8-9の番号の所には『乳がんと物理的にアクティブな女性の間で低エストロゲンのレベルは、潜在的に、生存率を向上させることができます。 』とありますが、

8はエストロン(E1)とエストラジオール(E2)の比率やエストロゲンレベルとの再発までの期間の相関の話であって、「物理的にアクティブ」とは関連ありません。

9は手術前のエストロゲン値の話。エストロゲン値低い方が生存率が高いというデータではありますが、手術を受けた後しばらく運動できない状態が続いた後での再発率等も手術前のエストロゲン値と関連があった、という話ですから「物理的にアクティブ」とは関連ありません。

10は、化学療法を受けた乳がん患者の体重増加と身体活動の欠如との関連。特にサルコペニック肥満について。

11,12は、体重増加は予後が良くないという内容。

13-22は診断時の過体重、診断後の過体重と体重増加がいかにリスクを上げるか、という内容。

私の場合、該当しないんですけどね…。乳がん発覚時から種々の治療を経てもなお乳がんが進行してる今まで、BMI25超えたことないんですよ。BMI18に下がったこともあるぐらいで。小林麻央さんも激痩せしてましたしね。

「体重増えるのは良くない」と繰り返し、そのためには「運動が良い」と刷り込み、「体重少なければいいのね!」と思い込ませることで「激しい運動で痩せすぎる」方向へ向かわせ、結果として「リスク上がる方」へ誘導してる、みたいな印象受けるのは私だけでしょうか?私自身、一時期はその流れに乗っかってしまいまして、それを反省している所なんですが。

23身体活動と食事の摂取量およびそれらの体重との関係を評価したコホート研究のメタアナリシスにより、低レベルの身体活動が摂取エネルギー過多よりも体重増加や肥満のリスク増加と関連している、という内容。コホート研究での摂取エネルギー量の多くは自己申告ですから、あまり信頼できませんけどね。

24Rohanら の論文は、フルテキストがまだ見つかりません。pubmedでAbstractを読む限りでは、死亡率は身体活動量とも個々のレクリエーションとも相関はない、という論文らしいのですが。


25,26,27は調査に対し無回答の患者のデータをNational Death Indexで検索し、死因コード等から患者の情報を把握するための方法について。乳がん患者の死亡率を死因コードから確定するのは難しいようです。ただ、NHSでは対象者の医療情報を得る許可を得ているので、これらの方法で死亡者の98%を確定できたとのことです。ちなみに27はタイトルと著者などしか登録されておらず、内容については未確認です。

28は今回の調査での再発率が妥当なものかどうかの比較のため別な調査と比較したそうですが、その調査の内容です。放射線治療の是非を調べるための調査のようです。 

29は身体活動と乳がんリスクについてのCollege Alumni Health Studyという、ペンシルベニア大学卒業生対象の調査の結果を解析した論文。閉経前の女性は身体活動量(カロリー換算)と乳がんリスクに関連はなかった、という内容。50歳未満では身体活動量が高い(1000kcal/wk超)と相対リスクが上がる(1.83,CI 0.77-4.31 P trend=0.14 )、BMI<22の女性では500-999kcal/wkで相対リスクが1.22(1.22 CI 0.66-2.27 P trend=0.41)、他は相対リスク1未満。1998年に出されたものです。

30はMETスコアについての論文。どのスポーツはどのぐらいのMET数か、という一覧が載っています。

31は更年期女性の股関節骨折を予防するための運動について。ウォーキングが勧められています。あれ?運動でエストロゲンレベルが下がるなら、ウォーキングでもエストロゲン下がるわけで、そうしたら更年期障害である骨粗鬆症は、予防するどころか進行してしまうのでは…???

を見ると、閉経後ホルモン(おそらくエストロゲン剤)使用者は最初からリスクが低い。非使用者は運動強度を上げていくとリスクが下がり、ホルモン使用者と同じ位になる。コメント欄には、『脂肪組織のアンドロゲンのエストロゲンへの転換 』とあります。活動的な女性はエストロゲンの服用者と同じぐらい股関節骨折から保護される、とも書いてあります。エストロゲンが脚周りで発生することが重要なのかな…???

このあたりからデータの信頼性について書かれています。『前年度全体の活動を評価する活動アンケートの能力は、151人の女性のサンプルでテストされました。』 『この年齢の女性の主な活動である歩行については、個人内相関は0.70(95%CI、0.49-0.84)でした。 』これをどう読むか?参考文献、いろいろ紹介されています。

32、これ面白いですね。自己申告した活動量の再現性。読んでみたいんですが、フルテキストは登録制なので読めずにおります。何しろテストと再テストであまり変わらない数字だから再現性は保たれているという結論なんですが、数字自体が0.79と0.83とか、0.52と0.55とかなので、何と比較しての0.79、0.83なのか、詳しい方法を読まないと分からないのですよ。余裕があったら登録してみますが、疫学の雑誌なんですよね。乳がん関連の疫学、怪しいのが多いからなぁ…。(このあたり後述します)


33、乳がん関連の疫学で怪しいのって、こういうのです。『診断後の食事の多変量解析では、脂肪摂取量と死亡率の間に明らかな関連性は見られませんでした。』とありますが、他の研究では脂肪摂取量との相関が認められてたりするんですよ。(それも複数。詳細は別途記事の予定)
。脂肪摂取量によるエストロゲン増加との関連が指摘されています。誰だよこんなの書いたのは…!と思ったら筆頭著者がHolmes MD、なんと今回読んでるPhysical Activity and Survival After Breast Cancer Diagnosis の著者でもあるHolmesさんではないですかw しかもまたしてもNHSですwww

34は食事量の再現性について。これも面白そう、読んでみたいけどフルテキスト見つかりません。

35これはアルコール摂取量の再現性について。32、34と同じStampfer MJ 先生のグループの論文です。いろいろ調べてますね。

36はウォーキングが心筋梗塞、冠状動脈疾患などの心疾患のリスクを下げるという内容。 ウォーキングの万能感すごい。

コメント欄には『過体重の閉経後の女性における身体活動の無作為化試験では、アンドロゲンおよびエストロゲンの血清レベルの低下が示されました。』とありますが。

37は閉経後のホルモン療法をしない過体重の女性のアンドロゲン濃度が、運動でどう変わるかを調べた調査。45分週5日の中/強程度の運動を含む週171分の運動により、有意差とは言えない程度減少したとのこと。この運動量でこの結果では…。それにアンドロゲンは筋肉の再生にも使われますが、エストロゲンにも変化します。減った分はどう使われたのか、も重要なのでは?

同じ著者による38はエストロゲン濃度について。

運動者は、コントロールの変化なしまたは濃度の増加に対して、それぞれ、3.8、7.7、および8.2%のエストロン、エストラジオール、および遊離エストラジオールの減少を経験した(P= 0.03、0.07、0.02)。12か月時点で、効果の方向は同じままでしたが、差異はもはや統計的に有意ではありませんでした。効果は、体脂肪を失った女性に限定されていました。

要するに運動で体脂肪が減ればエストロゲンも減りますよ、という内容。同じ調査で、アンドロゲン(アンドロステンジオン、テストステロン)とエストロゲン(エストロン、エストラジオール)両方測定して、論文は2本に分けたみたいです。

面白いのは、対照群が「週に45分のストレッチ、それ以外の運動をしない」人達であること。この方々のエストラジオール濃度は殆ど変わってません(-0.6%)w しかも、エストロンは増えてます。

かといって運動した群でも若干下がってはいるものの、有意差があるわけでもなく。

これらの参考文献を挙げておいて『過体重の閉経後の女性における身体活動の無作為化試験では、アンドロゲンおよびエストロゲンの血清レベルの低下が示されました。』と書いてしまうHolmesさん。これはもう、確信犯としか…。

39はドイツの文献。まず最初に『身体活動乳がん リスクとの間の認められた逆の関係の重要な側面はまだ議論中です。』とあります。ドイツでは運動で乳がんリスクが上がる、と言われているようですね。他の幾つかの論文にもありました。しかし『活動の種類による分析は、最高レベルのサイクリング活動を報告した女性に対する有意な保護効果を明らかにしました(調整オッズ比= 0.66、95%信頼区間:0.45、0.97)。 』なのでまだ調査が必要、とのこと。フルテキスト見つからないので詳細は分かりませんが、他の運動では保護効果が認められていないようですね。

そして『身体活動はまた、インスリン抵抗性の急性および慢性の改善ならびに高インスリン血症の減少を通じて生存を改善するかもしれない。ホルモンレベルを抑制するためのアロマターゼ阻害剤の使用は、より人気になると私たちが観察された関連は、時間の経過とともに変化することがあります。

ここで40が参考文献として挙げられていますが。ここに書いてあるのは驚くべき内容。

空腹時インスリンレベルが高い乳がん患者は再発までの期間や死亡の相対リスクが高い。えっ?エストロゲンじゃないの?

エストラジオール濃度は、再発とも死亡とも相関がない!えっ???

フルテキストを医学系の図書館でコピーしてきました。空腹時インスリン、IGF-1、IGF-2、エストラジオール、BMIと乳がん再発までの期間の長さ、死亡率から相対リスクを算出したもの。

出ましたIGF-1!

この結論に至ったデータの内容はと申しますと

 001-2
 

ご覧ください。この表は、各測定値を上から順に人数を揃えて4つのグループに分け、どのグループの相対リスクが高いかを比較しています。

まず、空腹時インスリン。高い群は明らかにリスク上がってます。相関ありです。このあたり考察編で解説する予定です。

IGF-1。有意とは言えないレベルですが、死亡率の相対リスクがわずかに上がり、再発の相対リスクがそれより高く上がっています。

これ、今回の論文の、週9MET以上のデータと重なりますね。

そしてエストラジオールレベルは再発、死亡リスクと相関はない、という結果。むしろ高い人の方がリスク若干下がってる。

どういうこと?絶対量ではなくプロゲステロンとのバランスが問題なのでしょうか。私が飲んでたアロマターゼ阻害剤は…いったい…???

BMIとの相関は下のグラフの通り。
  002-2
 
インスリン、IGF-1についての詳細は後ほど別記事にて。

41は乳がん診断後の治療で身体活動量がどう変わるか。大幅に減少するそうです。

42は化学療法中は安静時代謝率が低下するという内容。食欲が落ちるので体重はそれほど変わらないけど筋肉も落ちるので安静時代謝が落ち、治療が終わっても戻らない、という内容のようです。

要するに化学療法で筋肉落ちるから、疲労感があっても運動しなさいね、ということのようです。なら化学療法しなくていいのに…。ってか、化学療法中に運動すると血行良くなって薬の効果が高まるので、筋肉落ちやすいんですけど(経験者は語る)。がん利権とフィットネス利権、繋がってるようですね。

43は前回も紹介しました。『より高い病期と診断された女性は、in situ乳がんと診断された女性と比較して総身体活動に15%多く費やされた時間を報告しました(p = 0.031)(表2b)。この総身体活動量の増加は、家庭活動の違いによるものと思われます。

household「家事」が乳がんのステージを上げてしまったのだとしたらその原因はストレスか、或いは手を動かすことによるホルモン分泌の可能性があるのではないでしょうか。胸周辺の筋肉を動かすことで成長ホルモンやIGF-1、アンドロゲンからのエストロゲン分泌が盛んになった結果かと。この文献にはそんな考察は一切書いてありませんが。

44のタイトルは『運動、上気道感染症、そして免疫システム。』強度の高い運動は、上気道感染症リスクが上がるそうです。まったく運動しない場合よりも、運動しすぎる方がリスクが上がるのだとか。このあたり、今回の論文にも影響ありそうですが、Holmesさんは否定してますね。
  003-2

454647は高齢者の運動はいい影響を与えるんだから、もっと運動しなさいという内容。フルテキスト読んでないんですが、Abstractからは良いことばかり書いてあって、転倒による骨折のリスクなどはあまり書かれていないような印象を受けます。ちなみに47には『1日に30分の中程度の強度の運動をしている人は、もっと運動すればさらなる健康上の利益を達成する可能性があります。』と書かれていますが、この研究はNIH(アメリカ保健福祉省国立衛生研究所)の助成金を受けています。


48糖尿病女性の間で身体活動心血管疾患のリスクを減少させるかどうかという研究。これも40の文献と同様、4つの群に分けて相対リスクを算出してます。何故Holmesさんは四分割ではなく二分割にしたか?それが問題。 

49身体活動と総脳卒中および脳卒中サブタイプのリスクとの関連性を調べた研究。48と同じ著者です。結果も同様、長時間または早く歩いた方がリスクが下がるという結果。 

50はNHSからの身体活動と乳がんリスクの関連調査。『身体活動の増加は、主に循環卵巣ホルモンへの累積生涯曝露を減らすことによって、乳がんを予防すると仮定されています。しかし、疫学的所見は矛盾しており、身体活動を定量化するための最善の方法についてはコンセンサスがありません。』とあります。活動量はMETではなく時間です。結果は、週7時間以上で相対リスクは0.82(95%信頼区間、0.70-0.97、P = 0.004)。 これもNIHからの助成金の支給を受けてますね。

51はNHSからの余暇活動、BMIと結腸癌リスクの関連調査。余暇活動が多い、BMIが低いとリスクが下がるのだそう。NIHからの助成金支給あり。

52Health Professionals Follow-up Study健康専門家追跡調査 、HPFS)とNHSからの身長、BMI、身体活動量と膵臓がんリスクの関連調査。この論文に似ています。NIHからの助成金支給あり。

53はNHSからの身体活動と不妊症の関連調査。DISCUSSIONにこう書かれています。『長期間の身体活動習慣は、持続的な体重増加、インスリン抵抗性の増加、および生殖能力障害を含む症候群を予防する可能性がある。我々のデータは、競争力のある運動トレーニングを除いて、女性が妊娠しようと試みる前の数年間の活発な活動の習慣は出生率を減少させず、そしておそらく増強するかもしれないことを示唆している。

「競争力のある運動トレーニングを除いて」が重要なポイントですね。ちなみにこれもNIHからの助成金支給あり。

54はNHSからの身体活動と胆石の関連調査。NIHからの助成金支給あり。

55はNHSからの身体活動と認知症の関連調査。NIHからの助成金支給あり。

56,57はNHSからの身体活動と総死亡率の関連調査。NIHからの助成金支給あり。

58はこれらの論文を基にした年代別の身体活動ガイドライン。CDC(アメリカ保健福祉省疾病管理予防センター)のサイトです。

どうも、NIHは身体活動と疾病に関して、たくさんの論文書かせてるようですね。そしてその多くにNHSが使われている。そしてCDCはそれを基に身体活動ガイドラインを定める。

しかし。今回のこの論文は、かなり、「こじつけ」が強いような気がしました。

もしかして他の論文もそうなんでしょうか?だとしたら…???


とりあえず次回は、参考文献からの情報を基に、この論文のデータを私なりに読み解いてみたいと思います。

これからまた治療に入るかもしれませんので、公開まで時間がかかるかもしれません。ご了承ください。



2019年3月31日 (日)

論文の読み方 本文編

前回に引き続き、論文の読み方について。 前回はAbstractでしたが今回は本文の方です。

Physical Activity and Survival After Breast Cancer Diagnosis

邦訳しますと『乳がん診断後の身体活動と生存』。乳がん診断後、身体活動量で死亡率がどう変わるか?という論文です。

この論文を読むに至った経緯は、前々回の記事をご参照ください。

この論文、前回説明しましたAbstractに続いて、前文のようなものが書かれています。pdfだとAbstractの方が文字が小さく、この前文の方が文字が大きく書かれてます。Abstractのみのpubmedと、Abstractが真っ先に書かれ、続く前文の印象が薄いJAMA(Journal of American Medical Assosiation)のwebバージョンと紙の誌面そのままのpdf、随分イメージが違いますね。

その前文の出だしがこちら。

>Physical activity after a breast cancer diagnosis may reduce the risk of death from this disease. The greatest benefit occurred in women who performed the equivalent of walking 3 to 5 hours per week at an average pace, with little evidence of a correlation between increased benefit and greater energy expenditure. Women with breast cancer who follow US physical activity recommendations may improve their survival.. ...

『乳がんの診断後の身体活動は、生活の質の向上と強く関連しています。身体活動が乳がんの女性の生存期間を延ばす可能性があると信じる理由があります。身体活動もまた、乳がんのリスクの低下と関連しています。世界保健機関(WHO)の国際癌研究機関の専門家委員会は、更年期障害の状態、タイプ、または活動の強度にかかわらず、最も身体的に活動的な女性の乳癌発症リスクが20〜40%減少すると推定した。...』

全部訳すと長くなりますので、訳したものをまとめます。ここには、乳がんに関していかに運動がよい影響を与えるか、ということが書かれています。乳がん患者のQOLを上げる、乳がんのリスクを低下させる、ホルモンレベルを下げる、運動しないと体重が増加する、と。そして他のグループ(Rohan他)は診断前の運動と生存率には相関がないことを発見したが、「我々は高いレベルの身体活動はより長い生存期間と関連すると仮定して解析した」とのことです。

ホルモンレベルに関しては、レファレンス読んでみますと著者のHolmesさん、勘違いというか誤解というか曲解というか、理解してないとしか思えないんですけどね…。ちなみにここ、後ほど別記事で解説しますので覚えといてくださいw

次にMethod。具体的な方法が書かれています。

Study Participants「研究参加者」ではまずNHSについての説明。

>In 1976, the Nurses’ Health Study (NHS) cohort was established when 121 700 female registered nurses from across the United States, aged 30 to 55 years, answered a mailed questionnaire on risk factors for cancer and cardiovascular disease. 

1976年に、看護師の健康調査(NHS)コホートが設立されました。これは、30歳から55歳までの全米からの121,700人の女性看護師が、癌と心血管疾患の危険因子に関する質問票に回答したためです。

Wikipediaには”to better understand the effects of long-term use of oral contraceptives on the health of women”女性の健康への経口避妊薬の長期使用の影響をよりよく理解するため』とありますが…「薬の副作用調査」から始まった、ってことは伏せるんですね。

Measurement of Breast Cancer「乳がんの測定」では乳がんの診断に関して。

In the NHS, incident breast cancer was ascertained by biennial mailing of the questionnaire to participants. For any report of breast cancer, written permission was obtained from study participants to review their medical records. 

NHSでは、参加者へのアンケートの2年に1度の郵送によって乳がんの発生が確認された。乳がんのいかなる報告についても、研究参加者から彼らの医療記録をレビューするための書面による許可を得た。』

医療記録の開示にあまり抵抗がないのは、病院勤務の看護師さん達だから、でしょうか。

また、身体活動記録をとり始めたのが1986年からなので、その前の1984年以降に乳がんと診断された人を対象にしたそうです。

Measurement of Mortlity「死亡率の測定」は死亡者の記録の扱いについて。

2002年6月までに死亡した場合はその時点までの記録。回答がなかった場合はNational Death Index(アメリカでの死亡者データベース)で検索され、医療記録を入手。死亡者の98%が特定されてるそうです。

Measurement of Breast Cancer Reccurence「乳がん再発率の測定」はどういう場合に再発したとカウントしたかの説明。

肺がん、肝臓、骨、または脳への転移は、乳がんが再発したと考えられ、再発扱いに。また、乳がんで死亡した女性は、死亡の2年前に乳がんの再発があったとみなして再発カウントしたそうです。

再発についてもデータとってたんですね。何故Abstractには載せなかったのか?気になります。


Exclusions「除外」はどういう場合にデータから除外されたかの説明。

1984年以前に診断を受けた、身体活動に関する情報が欠落している、診断時ステージIVだった、4つ以上の陽性結節を有するが完全な転移性精査を欠いた女性、病期に関する情報が欠けていた場合など。

100MET以上の活動量の女性はいなかったそうです。もしいたら、その人のデータも除外対象だったということでしょう。ちなみに、乳がん診断前の私は週100METぐらいやってました。抗がん剤の副作用で出来なくなりましたが。

Exposure Assesment「暴露評価」もっといい訳し方がありそうですが、Google翻訳結果がこれでした。身体活動に「暴露された」記録の評価、という意味でしょう。

活動記録の取り方とその活動内容のジャンル分け、METスコア換算法などの説明です。


Physical activity was reassessed in 1988, 1992, 1994, 1996, 1998, and 2000. 

『身体活動は再評価された』とあります。METスコアが1993年に出され2000年に改訂されたので、最新のスコアで計算しなおした、という意味でしょうか?また、『転移性乳がんの診断の直前および直後に身体活動が低下することによる偏りを避けるために、身体活動は更新されていない。』後の方を見ると、治療中は活動量がどうしても減るので、そのバイアスを避けるために転移性との診断前後のデータは入れていないようです。

Covariates「共変量」統計用語です。分散分析を行うときに解析に含めるデータのうち、連続量で量的に表される変数のことをいうそうです。要するに、偏りを修正するための補正に使うデータです。

乳がんに関しては腫瘍の大きさや転移性リンパ節の数、ホルモン受容体陽性かどうか、治療方法など。他の要因としては閉経期の状態、妊娠初期の年齢、出産歴、閉経後ホルモンの使用、経口避妊薬の使用、BMIなど。


Statistical Analysis「統計分析」経時的コックス比例ハザードモデルという分析手法を用いて、死亡の相対リスク(Rerative Risk, RR)、乳がんによる死亡、または生存のための他の危険因子について調整した再発を計算したそうです。

RRは、1週間あたり3 MET時間未満のカテゴリーを参照グループとして、1週間あたりの身体活動のMET時間毎のカテゴリーについて示されています。

そしてそれらを腫瘍の大きさなどの変数による補正を行い、最終的な相対リスクを算出したようです。


そしてResult「結果」。

乳がんと診断された4484人のうち、除外対象となる人(38+305+829+140+78+107)を除いた2987人のデータが解析の対象となりました。

>A total of 2987 women with stages I, II, or III breast cancer were included in the analyses. There were 463 deaths: 280 were from breast cancer. There were 370 breast cancer recurrences. Physical activity assessment occurred a median of 38 months after diagnosis; the 10th and 90th percentiles were 27 and 59 months, respectively. The median length of follow-up for the breast cancer mortality analyses was 96 months; the 10th and 90th percentiles were 47 and 187 months, respectively.

『ステージI、II、またはIIIの乳がんを有する合計2987人の女性が分析に含まれた。463人が死亡しました:280人は乳がんによるものでした。370の乳がん再発がありました。身体活動評価は診断後38ヶ月の中央値で行われた。10番目と90番目の百分位数は、それぞれ27ヶ月と59ヶ月でした。乳がん死亡率分析の追跡期間中央値は96ヶ月でした。10番目と90番目の百分位数は、それぞれ47ヶ月と187ヶ月でした。』


共変量のデータがTable1にあります。PNGデータですが、見づらい方はサイトの論文の方でご確認をお願いします。画面右側の「FIGURES/TABLES」タブをクリックするとグラフと表が出てきます。クリックすると別タブで拡大表示されます。

Joc50040t1

Table1には身体活動量のカテゴリ毎に、喫煙者や経口避妊薬使用者がどのぐらいいるか、ホルモン療法や化学療法を受けた割合、などのデータが載っています。

著者が言及したのは次の3点。

より活発な女性はより低いBMIを持ちより多くのタンパク質を消費し、そして診断時から活動評価時までの間に体重が増加した可能性は低かった』まぁそうですね。摂取エネルギー一番多いのは相対リスクが一番低かった9-14.9MET群ですが、これについては言及せず。

1週間に3 MET時間未満の女性は喫煙者である可能性が高かった』これは確かにそうですね。健康に関心がないのか、そういう環境で育ったか。


身体活動高いカテゴリーの女性(≧15MET)は、ステージIIの疾患を持つ可能性が高かった』逆に喫煙者が多く活動時間が少ない<3MET群にはステージⅠが多い、と。ステージⅢはあまり偏りはないようですがこれには言及されてません。

これらの変数を使用して出した結果がTable2。相対死亡リスク、相対再発リスクが載っています。

Joc50040t2 


運動量順に
相対死亡リスクは 1.0、0.80、0.50、0.56、0.60(Abstractに載ってた数字) 
相対再発リスクは 1.0、0.83、0.57、0.66、0.74

だそうです。

えっ?

相対死亡リスク同様、9-14.9METまでは相対再発リスクも下がってはいるけれど。それを超える活動量だと…???
しかしその説明は

>Despite a significant linear trend, the RR was relatively flat in the 3 highest activity categories.

『著しい直線的傾向にもかかわらず、RRは3つの最も高い活動カテゴリーで比較的横ばいでした。』

何?0.57から0.74が「横ばい(flat)」ですと??ハーバード大ではそういうデータ解釈をするのでしょうか???

私には、運動量が週15MET超えると逆に再発率上がってるように見えますが…死亡率もわずかだけど上がってるし…。私がおかしいのかな…???

この論文では、グラフは上の表をそのままプロットするのではなく、カプランマイヤー法による死亡率の折れ線グラフ(Figure.)を使用しています。生存率グラフだと100から下がってくるのですが、このグラフは「死亡率」なので最初はゼロ、徐々に上がっていきます。

Joc50040f1

>The cutoff of 9 MET-hours per week was chosen for these analyses because this was the predetermined category that divided the cohort almost in half. The RR of death for women who engaged in 9 or more MET-hours per week of physical activity was 0.63 (95% CI, 0.48-0.81) compared with less than 9 MET-hours per week.

『1週間あたり9 MET時間のカットオフがこれらの分析のために選択された。なぜならこれはコホートをほぼ半分に分けた所定のカテゴリーだからである。1週間に9時間以上の身体活動を行った女性の死亡率は、1週間に9回未満のMET時間と比較して、0.63(95%CI、0.48-0.81)でした。』


要するに、週9METが境目だと。何故なら、人数の問題。半数がそれ未満、半数がそれ以上だから。

で、9MET以上の3つの群は、合算でのグラフ作成。せっかく5つのカテゴリに分けたんだから、5つのまま出せばいいのに。

しかもこれも、再発率については出てない。

まぁ、とりあえずTable3に移りましょう。

Joc50040t3

BMI25未満とそれ以上で分けた場合の相対死亡リスク。

かなりバラついてますね…。BMI<25、9-14.9METの0.35(0.18-0.68)ぐらいですね、「有意に下がってる」って言えるのは。BMI≧25の3-8.9METなどは相対リスク1.0超えてます(1.01(0.66-1.55))。

他は、ばらつきの上が1を超えてたりもするので、何とも言えません。リスク下がる人数の方がリスク上がる人数より多いから、平均すると「下がる」ような印象も受けます。

おやぁ?これ、前々回私が書いた「IGF-1陽性だと運動リスク上がる説」を裏付けてくれそうな…?


著者のコメントは以下の通り。

Among women with a BMI of 30 or higher and compared with women who engaged in less than 3 MET-hours per week of physical activity, the RR of death from breast cancer was 0.63 (95% CI, 0.26-1.52) for 3 to 8.9 MET-hours per week; 0.78 (95% CI, 0.20-3.04) for 9 to 14.9 MET-hours per week; 0.22 (95% CI, 0.03-1.82) for 15 to 23.9 MET-hours per week; and 0.36 (95% CI, 0.08-1.55) for 24 or more MET-hours per week (P for trend = .09). These results suggest additional benefit of physical activity for obese women; however, this analysis was limited by the small number of breast cancer deaths (n = 38) among women with a BMI of 30 or higher.

BMIが30以上の女性で、1週間に3 MET時間未満の身体活動に従事している女性と比較した場合、乳がんによる死亡のRRは3〜8.9で0.63(95%CI、0.26〜1.52)でした。 1週間あたりのMET時間 1週間あたり9から14.9 MET - 時間で0.78(95%CI、0.20から3.04)。週に15から23.9 MET時間の間、0.22(95%CI、0.03-1.82)。1週間に24時間以上のMET時間で0.36(95%CI、0.08-1.55)(傾向に対するP = 0.09)。これらの結果は肥満女性のための身体活動のさらなる利益を示唆しています。しかし、この分析は、BMIが30以上の女性の乳がん死亡数の少なさ(n = 38)によって制限されていました。

表にはBMI25で分けた数字しか出してないのに、表の解説に何故かBMI30以上の女性のデータを出してきました。

運動でエストロゲンが減るにしても、BMIの高低には関係ないはずなんですが…。BMI30以上だと

相対死亡リスク 1.0 0.63 0.78 0.22 0.36

ばらつきが多い、としか言いようがないと思います。

「BMI30以上の女性の乳がん死亡者の少なさによって」分析が制限されたなら、人数の少ない死亡者(280人)ではなく人数の多い再発者(370人)で解析してみたらどうかと思いますが。何故か人数の少ない死亡者データによる「相対死亡リスクのみ」の算出。「相対再発リスク」のデータ、隠しているんでしょうか?

Table4は閉経前か後か、ホルモン受容体の状態、ステージ別の死亡率を活動量9METで区切って表示したもの。死亡者数が少ないので9METで分けることにしたそうです。

Joc50040t4

Physical activity appeared beneficial to women whose tumors had both estrogen and progesterone receptors (RR, 0.50; 95% CI, 0.34-0.74) and not to women whose tumors lacked hormone receptors (RR, 0.91; 95% CI, 0.43-1.96). 

腫瘍がエストロゲン受容体とプロゲステロン受容体の両方を有する女性(RR、0.50; 95%CI、0.34-0.74)には身体活動は有益であると思われたが、腫瘍にホルモン受容体を欠く女性(RR、0.91; 95%CI、0.43-1.96)には有益ではなかった。

Negative for estrogen and progesteron receptors『腫瘍にホルモン受容体を欠く女性』の方が死亡率が高かったから、運動でエストロゲン
レベルが下がって死亡率が下がった、っていう解釈をしたようですね。私は『腫瘍にホルモン受容体を欠く女性』の死亡率が高かったのは違う理由があると考えてますが…これも別記事にします。

閉経前の女性よりも閉経後の女性の方が死亡率の差が少ないのは、運動すると卵巣からのエストロゲン分泌が減るから、という解釈のようですね。脂肪細胞でアンドロゲンから作られるエストロゲンは減りにくいようで。

ステージⅢだと運動の効果が高い?これは何故でしょうね。

人数が少なくて…とか言い訳してますが、ここでも人数の多い再発者データ使っての再発率は算出しない不思議。

Table5は、ウォーキングがいいのか激しい運動(1時間当たり6MET以上の)がいいのか?を調べるための表。

ウォーキングなどの強度の低い運動を週に0.7MET未満行った人を基準に、強度の低い運動ばかり時間を多く行った人と、強度の低い運動は少なく激しい運動が多い人、両方多い人、の死亡率を出してます。

著者は『ウォーキングと活発な活動の両方が、乳がん死のリスクの低下に貢献しました。』としか書いてませんが、この表の数字だけ見ると、ウォーキング時間が少なく(週に0.7MET未満)激しい運動が多い(≧7.0)群が0.30と一番低くなってますね。しかしばらつきが大きいので(0.07-1.25)人による、という感じでしょうか。他の群もばらつきは大きく、上は1.0前後ばかり。ああやっぱりIGF...。

最後にComment「解説、論評」。

We found that any category of activity higher than the reference category of less than 3 MET-hours per week was associated with a decreased risk of an adverse breast cancer outcome. 

我々は、1週間に3 MET時間未満の参照カテゴリーよりも高いあらゆるカテゴリーの活動が、有害な乳がん転帰のリスク低下と関連していることを見出した。

そうですね。ただ、週に1時間も歩けない人がどんな人なのか、ただ単に運動嫌いなのか、それとも病気の進行や治療の副作用等で外出もままならないような人だったのか、っていうのが少し気になりますけど。

>A randomized trial of physical activity among overweight postmenopausal women demonstrated declines in serum levels of androgen and estrogen.

過体重の閉経後女性における身体活動の無作為化試験では、アンドロゲンとエストロゲンの血清レベルの低下が示されました。

その割には、閉経前の女性の方が運動による死亡率がより低下してます(Table4)が。そしてBMI高い人の方が運動の効果は少ない(Table3)ように見えますけど?

Physical activity might also improve survival through acute and chronic improvements in insulin resistance and reduction in hyperinsulinemia. The associations we observed may change over time as the use of aromatase inhibitors to suppress hormone levels becomes more popular.

身体活動はまた、インスリン抵抗性の急性および慢性の改善ならびに高インスリン血症の減少を通じて生存を改善するかもしれない。ホルモンレベルを抑制するためのアロマターゼ阻害剤の使用がより一般的になるにつれて、我々が観察した関連性は時間とともに変化するかもしれません。

そうですよね。「運動がエストロゲンを減らすから」乳がん死亡率を低下させる効果があるとするなら、閉経後はアロマターゼ阻害剤を服用してれば運動しなくていい、ってことになります。むしろインスリンなどとの関連の方があるのではないですか?

ちなみに、この論文が出た翌年、アロマターゼ阻害剤の適用範囲が拡大されます。

放射線療法や化学療法で治療中の人は疲労感を感じやすいし、転移した人は活動がしづらい可能性があるので除外した、とあります。週に1時間歩くことも出来ない人は、化学療法の後遺症で疲労感が抜けなかった人、なのではないのかなぁ…?

>A recent report of physical activity levels among breast cancer survivors in the Health, Eating, Activity, and Lifestyle (HEAL) study found that women diagnosed with a higher stage of disease reported 15% more time engaged in physical activity compared with women diagnosed with in situ disease, although this difference was accounted for by household and not by recreational activity.

『健康、摂食、活動、および生活習慣(HEAL)の研究における乳がん生存者の身体活動レベルの最近の報告では、より病期の高いと診断された女性は、女性と診断された女性と比較して15%多く身体活動に従事していると報告した。この差は娯楽活動によるものではなく、世帯によって説明されたが、原位置病。』

自動翻訳がバグってますが、要するに「他の報告ではステージが高いと診断された女性は15%多く身体活動してたが、これは家事の問題であって運動の問題ではない」とのこと。

こちらのレファレンスの、Table 2aの下に書いてありますね。身体活動が余暇か家事かで女性ホルモンレベルに影響があるというのでしょうか?余暇なら良くて家事がダメなのだとしたらそれはストレスの影響ですよね。だとしたらエストロゲンよりも、コルチゾールやオキシトシン、セロトニン、ドーパミンあたりの方が関係してるのではないでしょうか?

Women in the highest category of activity like the rest of the cohort were primarily walkers but they walked for longer periods. Forty-five percent reported walking 5 or more hours per week, 28% reported bicycling 1 or more hours per week, and 28% reported participating in aerobics classes 1 or more hours per week. 

コホートの残りの部分のような活動の最も高いカテゴリーの女性は主に歩行者でしたが、彼らはより長い期間歩いていました。45%が週5時間以上の歩行、28%が週1時間以上の自転車走行、28%が週1時間以上のエアロビクスクラスへの参加を報告しています。

アメリカ人はスポーツ好きで、普段からさまざまなスポーツしたり筋トレしたりしてるもんなんですが、この調査の対象者はウォーキングばかりしていました。これも不思議なんですよね…。

>Overall, given the uniform evidence of the benefits of moderate physical activity to health, we believe that it is unlikely that exercise at the highest levels is detrimental to women with breast cancer.

『全体的に見れば、健康に対する中程度の身体活動の恩恵の一貫した証拠を考えると、我々は、最高レベルの運動が乳がんの女性にとって有害で​​あるとは考えにくいと考えています。』

なんで…?せっかく出した数字を無視するわけ…???

Our study was limited by the fact that physical activity was self-reported. 

私たちの研究は身体活動が自己申告であるという事実によって制限されていました。

それもあります。ですが、運動した群とそうでない群を比較した研究でも、運動の効果は「QOL向上」しか出てませんよね?死亡率や再発率や腫瘍サイズの変化は出てないんですよ。もっと違う視点が必要なのではないですか?

>Our results suggest that physical activity after a breast cancer diagnosis may lower the risk of death from that disease. The benefit was seen particularly among women who had tumors overexpressing estrogen receptors and progesterone receptors.

『我々の結果は、乳がんの診断後の身体活動がその病気による死亡の危険性を下げるかもしれないことを示唆しています。特にエストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体を過剰発現している腫瘍を有する女性の間で有益性が見られた。』

当時はホルモン治療はタモキシフェン(エストロゲン受容体阻害剤)が主流だったようですが、そのタモキシフェンの効果は少ないが運動は効果がある、ということ?或いは、運動がタモキシフェンの効果を上げる、ということですか?ちなみにこの調査のエンドポイントである2002年は、ハーセプチンが認可(1998年)されて間もない頃です。

>The maximal benefit occurred among women who performed the equivalent of walking 3 to 5 hours per week at an average pace (2-2.9 mph) with little evidence of increased benefit for more exercise.

『最大の利益は、平均的なペース(毎時2〜2.9マイル)で1週間に3〜5時間歩くことと同等のパフォーマンスを示した女性の間で起こり、より多くの運動に対する利益の増加の証拠はほとんどなかった。』

>Women with breast cancer who follow the Centers for Disease Control and Prevention recommendations for all individuals in the United States to exercise at moderate intensity for 30 or more minutes per day for 5 or more days per week may survive longer.

『米国のすべての個人に対する疾病管理予防センターの勧告に従い、1週間に5日以上、1日に30分以上中程度の強度で運動することを推奨する乳がんの女性は、より長く生き残ることができます。』

3-5時間の歩行が最大の利益。しかしそれ以上は『利益の増加の証拠はほとんどなかった。』???

要するに「いっぱい運動した方が相対リスク下がるはずなんだけどな、そういう結果にならなかったな。おかしーなー?」ってことですよね。

自分の立てた仮説が正しいと証明するための証拠となるような結果が出なかった。だとしたら、何故出なかったのか、その理由を考えるのが研究者ってもんでしょうが!

彼らは何故、それをしようとしないのか…?

Article Information「記事情報」の欄にこんな記載があります。

Funding/Support: The research for this article was funded by grant CA87969 from the National Institutes of Health.

資金/支援:この記事のための研究は国立衛生研究所からの助成金CA87969によって資金を供給されました。

アメリカ国立衛生研究所は、Wikipediaによれば、アメリカ合衆国の保健福祉省公衆衛生局の下にあり、1887年に設立された合衆国で最も古い医学研究の拠点機関。

論文の最後に書かれていた「1週間に5日以上、1日に30分以上中程度の強度で運動することを推奨する」というアメリカ疾病管理予防センターは、Wikipediaによれば、アメリカ合衆国ジョージア州アトランタにある保健福祉省所管の感染症対策の総合研究所。公衆衛生局内の機関なのだそう。

ということは。

結局、アメリカ保健福祉省公衆衛生局管轄の「国立衛生研究所」が、乳がん患者も、同じアメリカ保健福祉省公衆衛生局「疾病管理予防センター」の勧告に従いなさい!という論文を、アメリカ最古の大学であるハーバード大学の研究者にカネ出して書かせた、ということ…?



論文、きちんと読んでみるものですね。

前文の『我々は、乳がん診断後のより高いレベルの身体活動はより長い生存期間と関連すると仮定した。』からのあのデータ、この結論。「この仮定は絶対に間違っていない、今回は証拠が出なかっただけ」という著者らの主張。

そしてその理由が、最後の最後になって判明しました。

こういったさまざまな周辺情報も、この論文の解釈には重要なものとなってくるようです。「周辺情報」と「考察」、別途記事にして上げる予定です。

2019年3月18日 (月)

論文の読み方 Abstract編

前回、運動と乳がんの関係について、下記の論文をご紹介しました。

Physical Activity and Survival After Breast Cancer Diagnosis

この論文には、一体どんなことが書かれているのでしょうか。

論文の内容が理解できないと、間違った解釈で引用されたりした場合に、それを見抜くことが出来ませんよね。(たまにいるんです、論文の内容を明らかに曲解して紹介してる人が)

というわけで

今回は、この論文には何が書かれているか?ということを説明しつつ、そもそも科学系の学術論文とはどういうものか、どこに注目し、どう解釈すべきなのか?そのあたりについて書いてみたいと思います。

私、医学関連は素人ですが、これでも大学では理系の研究室に所属しておりましたので。



さて。上記の論文を見てみましょう。PCの方はリンクを別のタブまたはウィンドウで開けてみて下さい。スマホの方も、とりあえず目を通してみましょう。

Pubmedでこの論文を検索しますと、Abstractのみが表示されます。


Abstractとは「要旨」「要約」などのことです。これを読めば大まかな内容は把握できます。

もっと詳しく知りたい場合は画面右上の方に「full text link」が表示されますので、そちらにアクセスすれば全文読むことが出来ます。

※PubMed(パブメド)は生命科学や生物医学に関する参考文献や要約を掲載するMEDLINEなどへの無料検索エンジンです。 アメリカ国立衛生研究所のアメリカ国立医学図書館(NLM)が情報検索Entrezシステムの一部としてデータベースを運用しているそうです。

「full text link」が表示されない論文もあります。また、「full text link」のリンク先は全てフリーで見れるとは限りません。無料でも登録が必要な場合もありますし、有料の場合もあります。

医学部のある大学の図書館では、レファレンスカウンターで調べてもらい、印刷してもらうことも可能な場合があります。一般人でも使える大学図書館もありますし、公立図書館でも検索依頼を受け付けてくれる場合もあります。読みたい論文のある方は、お近くの図書館へお問い合わせを。



では、論文の中身を読んでみましょう。

この論文のAbstractは、「Context」「Objective」「Design, Setting, and Participants」「Main Outcome Measure」「Results」「Conclusions」に分かれています。

まずContext。これは「文脈」の意味ですが、論文の場合「背景」と訳されます。Backgroundという言葉が使われることもあります。現状はこうなので、我々はこの点を調べてみた、というような内容が書かれることが多いです。

>Physical activity has been shown to decrease the incidence of breast cancer, but the effect on recurrence or survival after a breast cancer diagnosis is not known.

Google翻訳しますと、(以下、『』内はGoogle翻訳結果)

『身体活動は乳がんの発生率を低下させることが示されていますが、乳がんの診断後の再発または生存への影響は知られていません。』

身体活動は乳がんの発生率を「上げる」という論文も「下げる」という論文もあるのですが、ここには「下げる」と書かれています。

ということは、彼らは「身体活動は乳がんの発生率を低下させる」方の論文を支持した上で調査研究し、この論文を書いた、ということです。短い文章ですが、これだけで筆者らの考え方や、どういう説を支持しているのかが分かるわけです。

次にObjective。これは論文においては「目標」ではなく「目的」です。

>To determine whether physical activity among women with breast cancer decreases their risk of death from breast cancer compared with more sedentary women.


『乳がん女性の身体活動が、座りがちな女性と比較して乳がんによる死亡リスクを減少させるかどうかを判定すること。』

sedentaryを「座りがちな」と訳してくれました。和製英語の「デスクワーク」を英語では”sedentary job”と表現したりするそうです。

乳がん患者のことですから、運動してない場合でも「デスクワークしてる」というよりは「安静にしてる」というイメージですけどね。

次にDesign, Setting, and Participants。直訳すると「設計、配置、参加者」となります。ここは英語でもMethodなどいろいろな単語が出てきますが、「手法」「実験方法」など、実験や調査に関する具体的な方法の記述をするところです。

この論文は大規模なアンケート調査の結果を解析していますので、その調査はどのようなものだったか、対象者の属性や人数、調査対象期間、調査内容などが書かれています。

>Prospective observational study based on responses from 2987 female registered nurses in the Nurses’ Health Study who were diagnosed with stage I, II, or III breast cancer between 1984 and 1998 and who were followed up until death or June 2002, whichever came first.

アメリカで1984年から1998年の間にステージI、II、またはIIIの乳がんと診断された看護師さん達の追跡調査(看護師健康調査 Nurse's Health Study,以下NHSと記します)を元にしたものだそうです。診断から2002年6月まで、その前に亡くなられた方は亡くなった時まで。

Main Outcome Measureは「主な調査結果」。今回はアンケート調査なので、そのデータ解析で何を得たか、が書かれています。

>Breast cancer mortality risk according to physical activity category (<3, 3-8.9, 9-14.9, 15-23.9, or ≥24 metabolic equivalent task [MET] hours per week).

『身体活動のカテゴリーによる乳がん死亡リスク(3、3〜8.9、9〜14.9、15〜23.9、または24以上の代謝同等課題[MET] 1週間あたりの時間)。』

死亡リスクを身体活動の量(MET)毎に5段階に分けて計算してみました、ということです。

どんな数値を得られたか、次のResult「結果」を見てみましょう。

>Compared with women who engaged in less than 3 MET-hours per week of physical activity, the adjusted relative risk (RR) of death from breast cancer was 0.80 (95% confidence interval [CI], 0.60-1.06) for 3 to 8.9 MET-hours per week; 0.50 (95% CI, 0.31-0.82) for 9 to 14.9 MET-hours per week; 0.56 (95% CI, 0.38-0.84) for 15 to 23.9 MET-hours per week; and 0.60 (95% CI, 0.40-0.89) for 24 or more MET-hours per week (P for trend = .004).

『週に3 MET時間未満の身体活動に従事している女性と比較して、乳がんによる死亡の調整相対リスク(RR)は3〜8.9で0.80(95%信頼区間[CI]、0.60〜1.06)であった。 1週間あたりのMET時間 1週間あたり9から14.9 MET - 時間で0.50(95%CI、0.31-0.82)。毎週15から23.9 MET時間の間0.56(95%CI、0.38-0.84)。1週間に24時間以上のMET時間で0.60(95%CI、0.40-0.89)(傾向に対するP = 0.004)。』

乳がん死亡率を運動量(MET)で比較すると

0-3METでは 1.0(これが基準)

3-9METでは 0.80

9-15METでは 0.50

15-24METでは 0.56

24-METでは 0.60

であった、と。

しかしこの数字、「適正な運動量だと死亡率が下がるけど、上げすぎると死亡リスクも上がる」印象ですが。

>Three MET-hours is equivalent to walking at average pace of 2 to 2.9 mph for 1 hour.

『3 MET時間は、1時間に平均時速2〜2.9マイルで歩くことに相当します。』

1マイルは1.6kmなので、3.2-4.64km/h。普通に歩くぐらいですね。

> The benefit of physical activity was particularly apparent among women with hormone-responsive tumors. The RR of breast cancer death for women with hormone-responsive tumors who engaged in 9 or more MET-hours per week of activity compared with women with hormone-responsive tumors who engaged in less than 9 MET-hours per week was 0.50 (95% CI, 0.34-0.74).

『身体活動の利点は、ホルモン反応性腫瘍を持つ女性の間で特に明白でした。週9 MET時間未満のホルモン反応性腫瘍を有する女性と比較して、週9 MET時間以上の活性を有するホルモン反応性腫瘍を有する女性の乳がん死亡のRRは0.50(95%)であった。 C.I。、0.34〜0.74)。』

えっ?ER+のみ対象?HER2+やトリプルネガティブは?

しかも私、ER+なのに運動は効かなかったけど…。

> Compared with women who engaged in less than 3 MET-hours per week of activity, the absolute unadjusted mortality risk reduction was 6% at 10 years for women who engaged in 9 or more MET-hours per week.

『1週間当たり3 MET時間未満の活動に従事していた女性と比較して、未調整の死亡率リスクの絶対減少率は、10年間で1週間当たり9 MET時間以上に従事している女性で6%でした。』

死亡リスクが「6%」下がる…まぁ、そんなもんでしょう。


Conclusions「結論」にはこうあります。

>Physical activity after a breast cancer diagnosis may reduce the risk of death from this disease. The greatest benefit occurred in women who performed the equivalent of walking 3 to 5 hours per week at an average pace, with little evidence of a correlation between increased benefit and greater energy expenditure. Women with breast cancer who follow US physical activity recommendations may improve their survival.

『乳癌診断後の身体活動は、この疾患による死亡のリスクを減らす可能性があります。最大の利益は、平均的なペースで週に3〜5時間歩くことと同等の行動をとった女性に生じ、利益の増加とより大きなエネルギー消費の間には相関関係の証拠はほとんどない。米国の身体活動に関する推奨事項に従っている乳がんの女性は、生存期間を延ばすことができます。』

ふーむ。3〜5時間の歩行が一番メリットがある、と。しかし強度上げたからといって、よりメリットがあるわけではない、と。

いや、強度上げると死亡率上がってるけど。そこはスルー?あと、再発率とかは?調べてないのかな?



Abstractはここまでです。若干の疑問がありますので、更なる情報をフルテキストの方を読んで探っていきたいと思います。

印刷して読みたい方はpdfファイルをどうぞ。



長くなりましたので、本文の方はまた後程。

 

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