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2017年5月22日 (月)

病院の骸骨

今から半年ほど前の2016年のハロウィン、私は幽霊のコスプレをしました。

その理由は二つありまして。いろんな着物でさんざん着回した真っ白い長襦袢があったので、それをクリーニングに出す前にちょっと遊んでみようと思ったのが一つ。

もう一つの理由は、10月にヘルニアで三週間弱の入院をしたのですが、退院時には病的に痩せてしまい肌や髪のツヤもなくなり、鏡を見ても「我ながら幽霊みたいだな」としか思えない外見になってしまったから。もうこれは「酷い外見になった」とウツウツと落ち込むより、ネタとして遊んでしまった方がいいとキッパリ自覚できる、そのぐらい極端に痩せてしまったからでした。

ふくらはぎや太腿など、たぷんたぷんにたるんで、退院後はジーンズなどのボトムス全てゆるくなりました。



あの小林麻央さんも、ご自身のブログに書かれてたそうですが、



がん患者は、殆どの場合、痩せます。



太りたいと思っても、痩せます。



標準治療である三大療法のうち抗がん剤や放射線は副作用で食欲不振になったり吐き気がしたりしますし、胃や腸、肝臓などの手術後はなかなか栄養が摂取できないのも事実。食事療法では食べられないもの多いですし、がんにいい食べ物はローカロリーなものばかりですし。

仮に何の治療もしてないとしても、食べ過ぎると悪化して腫瘍が大きくなり、いろいろ害が出てきたりして結局治療せざるを得なくなり、そして食べられなくなり、結果、痩せていきます。

これはもう、「痩せた~い、でも食べた~い♡」とかいうふざけた人には、悪性腫瘍植え付けてやって「がんダイエット」させてやったらどうかと思うぐらい。それぐらい痩せます。

私は15年ほど前からいわゆる「ダイエット(健康的に痩せる、という日本語での意味)」にこだわってフィットネスクラブに通っていたのですが、そんなことしなくても良かった、との反省材料にもなっております。何しろ日本人の半分はがんになります。半分の人はそのうち痩せてしまう運命にあるのです。ならばせっかくだからその前に「太れる幸せ」を十分に味わって頂きたいと、最近切にそう思います。

しかし

私は去年10月にヘルニアで入院するまでは、抗がん剤で落ちた体重を少しずつ回復させていっていたのですよ。

にもかかわらず、何故、三週間でまた激痩せしたのか?

調べてみて初めて分かりました。

今回のタイトル「病院の骸骨」について説明しましょう。

1974年に発表された「The skeleton in the hospital closet」というタイトルの論文があります。栄養不足で痩せ細った入院患者が病院内に半数近くいる、と指摘したものです。このタイトルを和訳したのが「病院の骸骨」です。

タイトルに「closet」という単語がついているのは、英語での慣用句「skeleton in the closet」(知られたくない秘密、内輪の恥)とかけているようです。「病院での栄養管理が出来ていないという『恥』の証としての、栄養不良の患者」という意味でしょう。ちなみにこの慣用句、意味を調べて由来を知って驚きました。興味のある方は調べてみてください。

こう書くと「え、病院の点滴とか病院食とか、ちゃんと栄養管理されてるんでしょ?なんでこんなことが起きるの?」と思われる方が多いでしょう。

そこが「恥」なんです。

知ってるようで知らない、出来ているようで出来ていない。

「食事」というのは誰でも毎日食べているものなので、なんとなく知っているような錯覚に陥ってしまい、今まで疎かにされていた。それが「病院の骸骨」がゾンビのごとく大量発生する理由なのだそうです。

この本に書かれておりました。

「がんでは死なないがん患者」

この著者は研修医時代、肝臓がんの患者さんを死なせてしまった反省から代謝や栄養について学び直し、がんで死ぬ患者は全体の二割にも満たず他は栄養不良などが原因の感染症などで亡くなっていることを突き止めました。そしてアメリカに研修にも行き、帰国後は緩和ケア病棟で「病院の骸骨」を減らしたり、褥瘡(じょくそう、床ずれのこと)を減らしたりなどの成果を上げてたようです。

まぁ、私が先に書いたような「治療の副作用による食欲不振、体重減少」を軽視している所は気になるんですが…栄養学的な内容については納得できる部分が多いのでご紹介いたします。

まず、この著者はがんというのは「代謝異常」の病気であると定義しています。

まず、糖について。悪性腫瘍細胞は有酸素下でもミトコンドリアの酸化的リン酸化よりも、解糖系でATPを産生する。ブドウ糖(グルコース)は、解糖系で代謝されピルビン酸を経た後にミトコンドリアに入ることなく、最終代謝産物として乳酸に変換される。糖の代謝が好気性ではなく嫌気性解糖になってしまう、というワールブルグの発見については前回も書きました。

そしてたんぱく質。がん細胞は炎症性サイトカインやたんぱく質分解誘導因子(PIF)と呼ばれる物質を放出し、筋肉を分解してがん細胞の元とします。なのでリハビリをするのにもたんぱく質を補給してやらないと、ただただ筋肉量が減少していってしまいます。

脂質については、サイトカインや脂質動員因子(LMF)などの働きにより脂肪細胞から血中に脂肪が溶け出すのですが、今度はサイトカインなどの働きで血中脂質の代謝は抑制されてしまいます。この結果、高度に進行したがん患者は高脂血症になります。なので脂質をエネルギーとしてうまく利用することが出来ない上に、皮下脂肪は減って、冷えやすい身体になります。

これらの代謝異常が、激痩せの原因です。

この「激痩せ」、医学用語では「サルコペニア」と言うそうです。しかし加齢によるものと疾病によるもの、また筋肉量の減少か或いは筋力の低下か、などで意見が分かれたり違う用語を使うケースもあるそうで、このあたりまだ研究段階なのかもしれません。

しかし、痩せすぎるのが良くないからといって、食べすぎたら今度は悪化するのでは?という懸念もありますよね。

ところがこの著者によれば「がんは、栄養を入れようが入れまいが、大きくなる時は大きくなる」。

確かにそうでした。食べ過ぎて悪化することもありますが、食べなくても悪化するときもあるし、食べて回復するときも食べなくても回復するときもあります。

但し、急に大量の栄養を与えると「リフィーディング・シンドローム(再栄養症候群)」という合併症を引き起こすことがあるそうで、要は程度問題なのでしょう。

少しずつ、徐々に栄養を与えていけば悪液質(カヘキシア)に陥らずに回復することが多々あるのだとか。

例えば、この本の序章には、ガリガリに痩せてもうあと余命一ヶ月とされた咽頭がんの患者さんが、栄養の改善で点滴のみの寝たきりから退院できるまでになり、5年間生き延びた、という事例が紹介されています。ちなみにこの方は「これといった治療もしていないのに腫瘍も小さくなった」そうです。

むしろがんの場合、食べないでいると本当に痩せて体力が落ち、気力まで落ちてしまい、悪化していくことの方が多いそうです。

なので、要は「何をどのように食べるか」と、後はこの本にはあまり書かれていない、リハビリなどの「食事以外の生活習慣」が重要なのでしょうね。


では、がん患者に必要な栄養分とは何なのでしょう?


まずは筋肉の分解を防ぐためのBCAA。

好気性解糖を活性化するためのビタミンB1。

乳酸からピルビン酸への代謝を促進するクエン酸(BCAAも)。

血中脂肪酸をミトコンドリアに代謝させるためのコエンザイムQ10とL-カルニチン。

肝機能活性化のためのアルギニン。

腸のエネルギー源であるグルタミン、食物繊維。

炎症性サイトカインの抑制、そしてコラーゲンの合成などにω3系脂肪酸。

活性酸素対策、副作用対策その他に、抗酸化作用のあるビタミンA、C、E。

そして亜鉛などのミネラル。

糖質としてはすぐに血糖値を上げ、インスリン分泌後は低血糖になる砂糖やブドウ糖、異性化糖などではなく、オリゴ糖またはでんぷん質。


この著者は、これらをサプリメントの形で患者に与え、効果を上げています。

こういうサプリは健康保険で認めてくれてもいいのにな、と思ったりしますが…まぁそれが日本の医学ですから仕方ないでしょう。


でも私としては、抗がん剤の点滴以降、やっぱりサプリ等の「薬品」には頼りたくないのが実情です。


果たして何を食べるべきか?


まず、分かりやすいのはビタミンB1。これが欠乏すると「かっけ」という病気になるということは、このブログの読者でしたらご存知かと思います。「かっけ」は白米ばかりを食べているとかかってしまう病気。そばや雑穀、玄米などを食べれば改善するのは江戸時代にも経験的に知られていました。


そう、玄米です。


玄米って意外とスグレモノなんですよ。

ビタミンB1もそうですが、糖質部分はGI値が低くて、血糖値が上がりにくい。

そして食物繊維が豊富。たんぱく質も多く、当然BCAA、アルギニン、グルタミンも含まれています。カルニチンの元となる物質も含まれますし、ミネラルも多目、γオリザノールという自律神経を整える物質まで。ただの糖質ではないのですよ。

そして玄米ときたらお味噌汁と、イワシの干物、青菜のお総菜だとかのイメージですよね?

お味噌汁には大豆のビタミンE、BCAAなどのアミノ酸類が含まれます。具によってはビタミン類、ミネラル類その他も摂取可能。

そして魚は良質のたんぱく源。ω3系脂肪酸も含まれます。コエンザイムQ10は青魚やブロッコリなどに多く含まれるそうでこれもクリア。

そして玄米の上には梅干(クエン酸)をのせて、さらにごま塩(脂肪酸、ミネラル類がたっぷり)をかければ、玄米のデメリットである「ミネラルを輩出しやすい」という点もカバーできます。

後は多過ぎず少な過ぎず、と、量にさえ気を付ければOK。


圧倒的ではないか、わが玄米食は…w


ちなみに。コエンザイムQ10やカルニチン、ビタミンB1は肉類からでも摂取できます。

しかし私があまり食べないようにしている理由は「他に余計なものが沢山入っているから」です。

例えば、成長ホルモン。肥育ホルモンとして与えられなくても、本来動物の中に備わっているホルモンが含まれています。また、肉の加工品には廃乳牛(乳が出なくなった乳牛)の肉が含まれていることがありますが、この肉には女性ホルモンが含まれています。女性ホルモンは牛でも人でも同じ構造です。もしかしたらサイトカインその他も、人間と共通のものがあるかもしれません。だからあまり食べたくないのです。健康な人なら、適量ならば食べてもいいのでしょうけど。


がんによるサルコペニアについて、もうちょっと医学的に突っ込んだ内容が知りたい方は、ここに似たようなことが書かれています。

■がん悪液質■~「炎症」に着目したケア~

PDFですが、専門家の方には分かりやすいと思いますのでご参考までに。


しかし…。

この本には、「病院の骸骨」化を避けるためには「絶食期間をできる限り短くすることが重要です。」と書かれています。そして「私は基本的に、手術前4時間と、手術後12時間の計16時間以上は絶食させないようにしています。」だそうで…。

え?

あのー。

私の場合、ヘルニア手術だったので、腸を切りました。ですがそういう場合でも、この著者は「唾液をはじめとする消化液は出ていて、消化管を通過しているわけですから」問題ないとしています。

それなのに。私が初めて口にしたのは「ペプチーノ」というパック入りのジュースみたいな飲み物。

これが出たのが術後4日目でした。

さらに、「食事」といえる内容のものが出てきたのが術後10日以上経ってから。


その間、ずっと点滴でした。


これでは、サルコペニアになって当然なんですなぁ…。ホント、あの病院の「恥」ですよ。

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  • がん対策推進基本計画
    厚生労働省が平成24年に発表したもの。これによると、治療せずに様子を見る「経過観察」はしちゃダメ!なのかな?なんで?w
  • 国立がん研究センター
    食事療法については何も載っていません。アルコール摂取を控えましょう、肥満に注意しましょう、ぐらい。

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    日本盤のみボーナストラック追加。
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