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2019年5月22日 (水)

手術を受けます

今回は「論文の読み方」シリーズは一旦お休みにしまして、乳がん治療の途中経過の報告です。



乳房切除術を受けることになりました。



放射線治療後はマーカーも下がり、副作用の皮膚の炎症も治まり、快方に向かっていると思っていたのですが。

経過確認のためのCTで、右乳房だけでなく左乳房にも腫瘍があることが確認されました。左も右同様、リンパ転移してます。

西洋医学的な治療をすると「がんが怒る」「がんが飛ぶ」と、自然派の方々がよく言いますが

右から左へ飛ぶとは…。

がん細胞も、放射線量が高い所から低い所へと避難したんですね。なかなかの賢さです。

というわけで

左の乳房、全摘出です。リンパ郭清もします。右に残った腫瘍も切除します。

どうなることやら。



手術で切ったからと言って寿命が延びるというエビデンスはない、むしろ転移したりがんが増えたりする、という説もあるようですが。

私の場合、他に腫瘍を縮小させる手立てが見つからないので、やむを得ません。苦渋の選択です。

乳房は私の年齢ではもう不要な臓器ですから、切ってもあまり影響はありませんし。

ガン病棟」に乳房切除することになりパニックに陥る少女のエピソードが出てきますが、今更あのようなこだわりもありませんし。むしろ、なくなった方が楽になるかもしれない、ぐらいに考えております。



今回は、おカネに関してはむしろ加入している保険の関係で、がんで放射線治療やら手術やら入院やらしますと、支払う医療費より入ってくる保険金その他の方が高くなり、全体としての収支はプラスになりますw

保険金詐欺?何をおっしゃいますか。約款通りの請求です、詐欺ではありません。

ただ、主婦業すらまともに出来ない「無職」に入院日額出るのは、引き受ける会社側のモラルが問われるかもしれませんねw

あの有名ながん保険の会社です。保険に関しては以前の記事を参照してください。



ちなみに今、病院からです。手術は明日です。

麻酔の際に口からチューブを入れるとかで口腔外科で診察を受けたり、麻酔科医の説明を受けたり。同意書にサインしたり。明日の手術の準備をいろいろと行っております。



手術が無事、成功しますように。

受ける側としては、麻酔を受けたら後は寝ているだけなので、祈ることしか出来ません。

スクナヒコナノミコト様、お守りください。お願いします。


2019年5月21日 (火)

論文の読み方 関連情報編

今まで三回にわたり、乳がん患者の身体活動に関する下記の論文につきまして、どういうことが書かれているかについての解説をしてまいりました。

Physical activity and survival after breast cancer diagnosis.

今回は、この論文の著者や研究グループが置かれた立場などを推察し、行間を読み解くための周辺情報について、これまで私が調べて知り得た情報を書いておきたいと思います。



まずはNurse's Health Study(NHS)を基にした他の論文について。



この論文を読むにあたり、何かの参考になるかも、と思い、近くの図書館に行き、乳がんに関する疫学について書いてある本をあたってみました。

たまたま見つけたのがこの二冊です。

がんの疫学

新版 乳癌 (図説臨床「癌」シリーズ8)

中身を読んでみますと「がんの疫学」p52-53にはこんなことが書かれています。

>脂肪摂取を減らし血中エストロゲン値への影響を調べる介入研究も,いくつか行われている.1999年に13の介入研究をまとめたメタアナリシスが行われているが2),閉経前,閉経後女性とも脂肪摂取を控えることで,有意なエストラジオールの低下が認められた.

>最近の米国のNurses' Health Study(コホート研究)参加者381名を対象とした横断研究では,脂肪摂取と血清エストラジオール値との間にむしろ負の関連が認められている3). Nurses' Health Study では,脂肪摂取と乳がんリスクとの間に負の関連性が示されており,横断研究での脂肪摂取と血清エストラジオールの関連はこの結果と合致する.

>筆者らは閉経前および閉経後女性を対象に横断研究を行い,脂肪摂取とエストロゲン値の関連について評価を行った.閉経前女性(60名)では,月経開始後11日目の採血を行い,脂肪その他の栄養摂取は月経開始後2-10日目にわたる9日間の食事記録から推定した.総脂肪摂取と血清エストロンおよびエストラジオール値との相関係数はそれぞれr= 0.30 (p=0.02), r=0.26(p= 0.05)で,脂肪摂取が高い女性でエストロゲンが高値であった4). 

NHSの研究では、他の研究と違って何故か脂肪摂取と血清エストラジオールの間に「負の相関」がでているそうです。記載されていたその参考文献がこちらになります。

Dietary fat intake and endogenous sex steroid hormone levels in postmenopausal women.

著者欄にご注目ください。なんと、筆頭著者はHolmes MDさんでございました。偶然図書館で見つけた本に載っているとは…Holmesさんなかなか有名なんですねw



そして図説臨床癌シリーズの「乳癌」、1993年版なのですが、こんな表が記載されておりました。

 002-2_1

脂肪摂取と乳がんリスクの相関、他のグループでは正の相関が出ていますが、アメリカ人看護婦を対象とした研究だけは何故か「負の相関」。おそらくこちらの論文かと思われます。

Dietary fat and the risk of breast cancer.

著者はWillett WCさん。あれ?この名前はどこかで見覚えが。確かつい最近どこかで見たような気が…。そういえば…。

さっきの「がんと疫学」に載ってたこの論文

Dietary fat intake and endogenous sex steroid hormone levels in postmenopausal women.

ここの著者欄で見たのでした。Holmesさんの次の次にWillettさんが名前を連ねています。同じグループだったんですね。

他にも、このお二人、こんな論文出してます。乳製品の摂取と乳がんリスクの関連について。

Intake of dairy products, calcium, and vitamin d and risk of breast cancer.

We found no association between intake of dairy products and breast cancer in postmenopausal women. Among premenopausal women, high intake of low-fat dairy foods, especially skim/low-fat milk, was associated with reduced risk of breast cancer. 

閉経後の女性では、乳製品の摂取と乳がんとの間に関連性は見られませんでした。閉経前の女性では、低脂肪乳製品、特にスキムミルク/低脂肪牛乳の高摂取は、乳がんリスクの低下と関連していました。

へぇ~、牛乳や乳製品の摂取と乳がんには相関なし、「乳がんと牛乳」のジェイン・プラント博士の説とは逆の結果ですねぇ。しかもここではカルシウムだのビタミンDだのって話ばかりでIGF-1は無視してます。

でも実はこの論文の発表と同時期に、Holmesさんはこんな論文も書いています。こちらにはIGF-1が出てきます。

Dietary correlates of plasma insulin-like growth factor I and insulin-like growth factor binding protein 3 concentrations.

Higher fat intake, in particular saturated fat, was associated with lower levels of IGFBP-3. We conclude that higher energy, protein, and milk intakes were associated with higher levels of IGF-I. These associations raise the possibility that diet could affect cancer risk through influencing IGF-I level.

より高い脂肪摂取、特に飽和脂肪は、より低いレベルのIGFBP-3と関連していた。我々は、より高いエネルギー、タンパク質、およびミルク摂取がより高レベルのIGF-Iと関連していたと結論します。これらの関係は、食事がIGF-Iレベルに影響を与えることによって癌のリスクに影響を与える可能性を高めています。

乳がんではなくがん全体のリスクが上がるという表現ですね。しかもIGFBP3/IGF-1比が重要、という説を出してます。これは確かにそうなんですが、プラント博士が本を出す前に気付かなかったんでしょうか?

日本語版「乳がんと牛乳」の原著である「Your Life In Your Hands」の出版は2000年です。そしてHolmesさんグループが乳製品と乳がんリスクに相関はない、むしろリスク下がるという上記の論文出したのは2002年。

1980年代から90年代にかけては脂肪と乳がんの相関ばかり書いてたHolmesさん達のグループが2002年に突然、乳製品との関連を調べ始め、結果はプラント博士の説とは違う結果だった、と。

プラント博士の本を否定したがってるとしか思えないんですが。

ちなみに日本ではどうかと言いますと。

内閣府の食品安全委員会では、IGF-1の発がん性は認めた上で「牛乳や乳製品の摂取ではIGF-1濃度は上がらない」というフランス食品環境労働衛生安全庁ANSESの説を採用し、牛乳に発がん性はないとの見解を出しています。これに関してはHolmesさんの、乳製品摂取でIGF-1が上がり脂肪摂取でIGFBP3が下がりがんリスク上がる、という論文の方が正しいような気がします。アメリカでは遺伝子組み換え肥育ホルモンが使われていてそれがIGF-1濃度を上げるっていう説もありますので、フランスと状況が違う可能性はありますが。何しろ内閣府のサイト、ANSESの報告書へのリンクが切れていて、内容が確認できません。困ったもんです。


そして、Nurse's Health Studyという調査そのものについて。

これはどういう調査かといいますと、英語版Wikipediaによれば、経口避妊薬の長期使用の影響を調べるために開始された調査のようです。

当初は医師の奥様に調査を依頼したのですが、医学的知識が不足していたため調査対象が看護師に変更になり、その後は調査内容を経口避妊薬や心血管疾患に限定せず、徐々に拡大していったそうです。

こんな記述もあります。

>The Nurses' Health Study faced controversy based on its recommendations. The study published in 1985 that taking estrogen as a part of Hormone Replacement Therapy would lead to large decreases in risk of heart disease (a third of the risk of those who did not take supplements).[42] However, the Framingham Heart Study fond the opposite result.[43] This controversy caused a 10 year follow up by the Nurses' Health Study which again concluded that risks of CVD were lower in samples currently taking hormones.[43] However, further studies such as the Heart and Estrogen-progestin Replacement Study found that estrogen tablets actually increase risk for heart disease. This was a double-blind trial following an experimental group of women who were given replacement therapy pills and a control group following the same procedure with placebos.[44] Findings from the study displayed a direct relationship between therapy and risk for heart disease, as opposed to the previously stated benefits.[45] This finding largely opposed the published NHS conclusion.

『看護師の健康調査はその推薦に基づいて論争に直面した。1985年に発表されたこの研究は、ホルモン補充療法の一部としてエストロゲンを摂取すると、心疾患のリスクが大幅に減少することを示唆しています(サプリメントを摂取していない人のリスクの3分の1)。[42]しかしながら、Framingham Heart Studyは反対の結果を好んだ。[43]この論争は看護師の健康調査による10年間の追跡調査を引き起こした。これもまた、現在ホルモンを服用しているサンプルでCVDのリスクが低いと結論付けた。[43]しかし、Heart and Estrogen-progestin Replacement Studyなどのさらなる研究では、エストロゲン錠が実際に心臓病のリスクを高めることがわかりました。これは、補充療法ピルを投与された女性の実験群とプラセボを用いた同じ手順に従った対照群を対象とした二重盲検試験でした。[44]この研究の知見は、前述の利点とは対照的に、治療法と心疾患のリスクとの間の直接的な関係を示した。[45]この発見は公表されたNHSの結論に大きく反対した。』

ほほぉ…エストロゲン錠と心疾患との関連について、他の調査、それも二重盲検での試験と違う結果が出てる、と…。

NHSの方は製薬会社に都合のいい結果だったようですね。Holmesさん達の論文も、特定の食品ががんリスクを上げることはないっていう生産者側に都合のいい結果となっていたり、運動はする方がいいというフィットネス業界に都合のいい結果となっていたり。



てことは。

NHSを利用した疫学調査って…。

本当に、信用できるんでしょうか?

もしかして、医療業界側が、論文捏造するための調査だったりするのでは…?????

 

まぁ…NHSについては各自の判断にお任せします。

他の周辺情報として、この論文が出た頃の乳がん治療の変化について、少し記しておきます。


2000年前後、がん関連では様々な薬が世に出ました。

アメリカでは1998年に認可された乳がん初の分子標的薬、ハーセプチン。HER2+タイプの方はお世話になっていると思います。

今では当たり前に使われるハーセプチンですが、この論文は2002年までのデータを使用しています。なので、この論文で「死亡者」とカウントされたHER2+患者の多くは、ハーセプチンではなく他の抗がん剤を使われていた可能性があります。

つまり、2002年までに死亡したHER2+患者は「ハーセプチンに間に合わなかった」方々なのではないでしょうか。2005年頃にはハーセプチン以前の状況は忘れられていたかもしれませんが。



また、2000年代はホルモン治療にアロマターゼ阻害剤が登場します。タモキシフェンより副作用が少ないということで適応が拡大されていきました。実際にはタモキシフェンのような「子宮体がん」のリスクは低いのですが「心疾患」リスクは上がるうえ、関節痛や骨粗鬆症になったりする薬なんですが。

今回の論文にもアロマターゼ阻害剤などの言葉が出てきます。しかし詳しくは書かれていません。当時はアロマターゼ阻害剤がどういうものか、まだ判断がつかなかったのかもしれません。アリミデックスが初期乳がんにも適用されることになるのは2006年、つまりこの論文が出た次の年です。



さて次回は、この辺りの内容も踏まえた上で、総合的な考察を行いたいと思います。



5/30 追記

乳製品摂取と乳がんに関するHolmesさんの論文

Intake of dairy products, calcium, and vitamin d and risk of breast cancer.

これに対する反論は「乳がんと牛乳」p150-152に訳者注として掲載されていました。読み飛ばしておりました。

以下、引用します。

>酪農業界にとっては一大事なので、プラント教授の「乳製品主犯説」(本書の初版は2000年)を撃破するために多くの知識人が動員されたらしい。その際、反対論者が強力に援用したのはハーバード大学の「乳製品と乳がんに関する研究」であった。その理由は、この研究がアメリカ国立衛生研究所(NIH)の資金援助を受けて、ハーバード大学という超一流の研究機関が、8万8691人もの看護師の乳がん発生を16年にわたって追跡した大規模疫学研究(Harvard Nurse's Health Study:HNHS)であり、しかもその成果が、アメリカがん研究所雑誌(Journal of the National Cancer Institute)という一流のがん学術誌に掲載されたからである。

>この論文を批判的に読んでみよう。

>本来のコホート研究(前向き研究)なら、乳製品をとっていないグループととっているグループのあいだで乳がんの発生率を比較するのが筋であるが、この研究では、乳がんの発生した女性が発生前に乳製品をどのぐらい摂取していたかということだけを問題にして、乳がんが発生しなかった8万5209人の食生活はまったく問題にしていない。

>乳がんが発生する前の乳・乳製品の摂取量を3~5段階にわけ、摂取量別に乳がんリスクを計算している。摂取量のもっとも少ない人の乳がんリスクを1.00として、摂取量が増えるとリスクがどうなるかを計算したのである(相対リスクという)。

>この研究で、乳製品の摂取量が多い人、あるいは少ない人というのはどんなひとなのだろうか。一般に成人女性の1日あたりの摂取カロリーは日本でも1800~2000キロカロリーとされているが、驚いたことに、乳がんの発生が多かった牛乳の少量摂取群の女性たちの1日あたりの平均摂取カロリーはたったの1398キロカロリーであった。この人たちの平均体重は記録されていない。身長だけである。身長164センチメートルの看護師が、1日1400キロカロリーの摂取カロリーでまともな看護労働ができるだろうか。しかも、この人たちの脂肪のエネルギー比(脂肪カロリーが総摂取カロリーに占める割合)は47.1パーセントである。総摂取エネルギーのほぼ半分を脂肪から摂取していることになる。こんなにたくさんの脂肪をとっている人が乳がんになりやすいことは肯ける。脂肪摂取量がかくも多い人には肥満が多いからである。しかし、体重の記録がない。1日にわずか1400キロカロリーの人が肥満であるわけはない。この論文は矛盾に満ちている!

>この研究が採用した食品接種頻度調査には大きな欠陥がある。調査票に記載されている食品の摂取量と頻度を自己記入して郵送するという方式であるが、回答者が食品の摂取頻度を正確に記入しているという保証はまったくない。

だそうです。

「この論文は矛盾に満ちている!」

まさに、この一文に尽きますね。

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    厚生労働省が平成24年に発表したもの。これによると、治療せずに様子を見る「経過観察」はしちゃダメ!なのかな?なんで?w
  • 国立がん研究センター
    食事療法については何も載っていません。アルコール摂取を控えましょう、肥満に注意しましょう、ぐらい。

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