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2019年7月31日 (水)

乳がん患者がやるべき身体活動

前回は「身体活動量と乳がん死亡リスクに関する論文」と「乳がんヨガ」との関連について、殆ど関係ないのにエビデンス扱いしていること、乳がんヨガは効果が明らかでないこと、などを書きました。

では、乳がん患者は何をしたらいいか?

今回は乳がん患者である私自身の経験から、そのあたりを書いてみたいと思います。



乳がん患者と一口に言っても、人それぞれ、症状も治療法も生活習慣も細胞診の結果も様々です。

なので

「乳がん患者だから」アレをすべきコレをすべき、ってのはあまりありません。

もちろん、生活習慣が乱れていたからこその病気なので、生活習慣を正す、というのは重要です。環境ホルモンの除去は特に。



乳がんの場合は侵襲性の高い治療が多く、QOLの低下は確かに問題であり、QOL維持のための活動をした方がいいのは確かでしょう。

しかし一口にQOL低下と言っても、状況は様々です。

なのでQOLを向上させる方法もまた、様々なのですよ。



私は先日、乳房全摘出手術を受けました。

というわけでまずは手術によりQOLがどう変化するかについて。



「乳がんの手術」と一口に言っても、腫瘍の大きさや転移状況などによりいろいろあります。



「非浸潤性乳管がん」などの転移もなく進行も遅く、かつ腫瘍サイズも小さい乳がんの場合、部分切除術が可能です。

この場合は入院期間も短く済みますし、手術後のリハビリもほとんど必要ないと思います。

腫瘍の個数や位置にもよりますが。



腫瘍が大きい場合や転移がある場合は、部分切除ではなく乳房全摘出となります。

皮膚浸潤を最小限に抑えるため、乳房周辺の皮膚はざっくり切り取ります。そして皮膚を無理やり引っ張って縫合します。

そのため、手術した側は肩が前に入り猫背気味になります。

手術の傷が治った後、リハビリを行った方がいいでしょう。

また、乳房の大きさにもよりますが、左右の重さのバランスが崩れるのでそれを正すのが大変、という方もいらっしゃるようです。



リンパ転移がある場合はリンパ郭清を行います。

この場合、郭清の度合いにもよるでしょうが、リンパ浮腫のおそれがあるのでリンパドレナージは必須です。

また、私のように神経を切られたりすると運動障害も残りますので、地道なリハビリは必要です。

しかし、汗を大量にかくような運動は避けなければいけません。リンパ浮腫になりやすくなります。

また、郭清した側の腕を圧迫すると良くないので、そのあたりも考慮すべきでしょう(加圧トレーニング不可)。



ハルステッド手術(大胸筋まで切り取る大手術)を行った場合については、どうなるのか、私にもわかりません。

術後の外見は、あばら骨が浮いたような状態になるそうです。

運動障害はどのくらい出るのでしょうか?かなり大変なことになるであろうことが想像できます。

数十年経っても痛みやしびれが出るという証言もあるようです。



これが右乳房のみか左乳房か両方か、でも違いますし、右と左で術式が違うケースもあります。

また、乳房再建術を受けている人もいます。保険適用になってから受ける人が増えたようです。

インプラントを使う人も、自家組織で再建する人もいます。

自家組織での乳房再建の場合、使う組織の元をとる背中やお腹や足などに傷が出来ます。これによっても対応が変わります。

インプラントでの再建の場合、何度か手術し直す必要があるそうです。

最近、シリコンインプラントの中に特殊なリンパ腫を引き起こすものがあったのでメーカーが対象製品を自主回収した、というニュースがありました。シリコンの方要注意です。

ちなみに私は、乳房再建はしていませんが、右側の植皮のために腹部を切りました。なのでお腹はまだ伸ばせません。



手術だけでこんなにいろいろあるのです。



そのため、リハビリは病院で行うのが良いでしょう。

病院でのリハビリは、理学療法士や作業療法士などの資格のある方が行います。

リンパドレナージは、研修を受けた看護師などが患者に指導します。

理学療法士、作業療法士、看護師はいずれも指定の学校を受験して、合格したら数年通って勉強して、国家試験を受けなければならないという取得が大変な資格であります。そういう信頼できる資格を持っている上に、病院での業務で毎日何十人もの患者さんの対応をしている、そういう方々です。

カルテも共有しているでしょう。そして何かあった場合の対応方法も知っています。

彼らは、安全です。もちろん「中には怪しい人もいる」という可能性は否定できませんが、それはどの職種でも同じです。



一方、ヨガに関しては国家資格はありません。

「乳がんヨガ」はただの民間資格です。指導者養成コースは1日7時間3万円だそうです。受講資格は特になく、誰でも受講料払って参加すれば、試験などもなく免状がもらえる、そういう資格のようです。

「乳がんヨガ」限定ではない一般的なヨガインストラクターの資格としては「全米ヨガアライアンス200」というものが有名です。これは、200時間の講座を受ければ取れる、というものです。1日8時間として25日。1カ月かかりません。最短では18日あれば取れるそうです。

200時間+7時間の講座でがん患者を相手にすることに、不安は感じないのでしょうか?少なくとも、個別対応できるだけのスキルがこれだけで身につくとは思えません。

ちなみに、全米ヨガアライアンス以外にもヨガ資格出してる団体は山ほどあります。指導者養成にかかるコストも時間もまちまちです。当然、スキルのレベルもまちまちです。



話を戻しますと

手術のみならず、化学療法に関してもさまざまな種類があります。化学療法はQOLが下がるとよく言いますが、一体どんな副作用が出るのかが問題です。髪は抜けるのか、しびれはあるか、吐き気やめまいはあるか、免疫落ちて感染しやすくなってないか、などなど。

薬によって、かなり違います。

私の場合、最初の抗がん剤(EC療法)は髪も抜けたし体重は極端に減るし体力落ちるし不正出血もあったし目は悪くなるし爪は黒くなるし最悪でしたが、今飲んでいるTS-1は副作用はあまりありません。わずかに吐き気がして便が緩む程度です。

腎臓や肝臓に悪影響が出たり、手足にしびれが出たりなどもあるそうです。

ホルモン治療をしていると、関節痛(関節への負荷考慮)、骨粗鬆症(骨折のリスク)、ホットフラッシュ(体温調節困難)、血栓ができやすい(脳梗塞や心筋梗塞のリスク)などが出たりします。

他にも

放射線治療を行っている場合、その種類(X線、陽子線、重粒子線等)や強度によっても副作用(疲労感、皮膚炎など)の出方が違います。

皮膚にマジックで線を書いたり、皮膚の色が変わったりするので、薄着になりたがらない人もいるでしょう。そういう相手を気遣うことが出来ますか?

切らずに治す治療法としてラジオ波焼灼術や冷凍凝固療法、FUS(MRIガイド下収束超音波療法)などがありますが、これらについてその治療跡がどうなるのか、胸を開いて伸ばしたりするのは施術後どのぐらい経ってから可能なのか、把握しているのでしょうか?

また、免疫療法やビタミンC点滴、丸山ワクチンなど、代替療法もさまざまあります。それぞれ治療前後の注意事項は違うはずです。無治療の方、漢方やサプリなどの使用も含めますともう十人十色、千差万別です。

他の疾患での症状や服薬の状況なども違いますし、閉経前か後か、年齢、肥満度、体質の違いなども含めますと、まったく同じリハビリを要する人などまず、いないのです。



乳がんは転移再発しやすい病気です。本人も知らないうちに骨転移していてホルモン治療と相まって骨が弱ってしまっていて、たまたまヨガを受けたら骨が折れてしまった、というケースもあり得なくはないと思います。きちんと想定して対策を考えているのでしょうか?

万が一トラブルが発生しても(副作用で嘔吐したり出血したり半月板損傷したり蜂窩織炎になったり)、理学療法士や看護師が病院内で行っているのであれば対応は可能でしょう。医師もすぐそばに控えてますし。

しかし一般のヨガインストラクターが、ヨガスタジオや自宅で行った場合はどうでしょう?救急車呼びますか?



しかも、病院スタッフは忙しいのです。毎回来てもらうのではなく、自宅で自分で出来るようなリハビリ方法を教えてくれます(病院にもよりますが)。

乳がんヨガのような「教室」だと、毎回通う前提です。でないとインストラクターが儲からないから。

そして、集団でいると、どうしても他の人と自分を比べたりしますよね。

「あの人、私より後に手術受けたのに、もうあんなに元気そう。私は全然動けないのに…。」

「あの人、同じ薬使っててなんであんなに副作用軽いんだろう。私は酷いのに…。」

よりケアを必要とする(QOLが低下してる)人ほど、嫌になってしまったり、無理して動き過ぎてしまったり。

ナーバスな患者達の気持ちをうまくくみ取れるインストラクターならいいと思いますが、ヘタなこと言ってしまうとかえって患者を落ち込ませることにもなりかねません。

で、自宅で自分でやりたければ「3万円払って資格取れ」、ってことになるわけです。



「乳がん」そのものの治療には直接は関係しない「QOL向上」だけなら、「乳がんヨガ」に限らず好きなことをすればいいと思います。

激しすぎない、ウォーキング程度の身体活動ならエビデンスもあるわけですから、ウォーキングでもいいと思います。捻ったりしないので怪我の心配はありませんし。他にもやりたいものであれば、医師と相談の上、本人の責任においてやればいいと思います。やりすぎは禁物ですが。

「ずぼらヨガ」的なゆる~いヨガを自分でやってもいいし(乳がんヨガもずぼらヨガと大して変わりません)。



運動でなくてもいいのです。アメリカのMDアンダーソンがんセンターでは音楽療法や鍼なども行っているそうですし、韓国の病院では園芸療法などさらにいろいろな補完療法を行っているそうです。

「乳がんヨガ」を信じて受けるのであれば、QOL向上には寄与することは分かります。しかし信じていない人、あるいは逆に乳がんヨガに対して過剰な期待を持って受けに来てしまった人(私がそうでした)だと、ストレス溜まって逆効果の可能性もあるんですよ。



私には「乳がんヨガ」は乳がん患者やヨガインストラクター資格保持者をカモにした詐欺のようにしか見えないんですよね…。その理由はまた次回、詳しく書こうと思います。


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  • がん対策推進基本計画
    厚生労働省が平成24年に発表したもの。これによると、治療せずに様子を見る「経過観察」はしちゃダメ!なのかな?なんで?w
  • 国立がん研究センター
    食事療法については何も載っていません。アルコール摂取を控えましょう、肥満に注意しましょう、ぐらい。

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