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Sage's List

2020年5月24日 (日)

手術から1年経過

お久しぶりです。

去年、右左両方の乳がんの手術を受けてから、昨日で1年が経ちました。

おかげさまで、この一年再発せずに過ごしております。

去年の秋からは抗がん剤治療も始めました。

TS-1という経口摂取するタイプの抗がん剤です。

副作用としては今のところ、疲労感があったり爪が割れたり便秘したりなどが出ておりますが、以前に点滴を受けたときほどではありません。

抗がん剤にもいろいろあるのだな、と再確認いたしました。

しかし。

血液検査では白血球の数値が落ちてきております。

なので最近は、再発よりもCOVID-19で重症化する可能性の方が高く、しばらくCOVID-19関連を調べておりました。

そうしましたらその過程で、ちょっと興味あるものを発見しました。



「GcMAF」というものです。



日本人の山本信人という研究者がアメリカで研究していた時に発見したもののようです。

COVID-19では死亡した患者の多くがビタミンD欠乏症だったとのことで、ビタミンDと免疫について調べていたら、こんな論文を見つけました。

Immunotherapy of Metastatic Breast Cancer Patients With Vitamin D-binding Protein-Derived Macrophage Activating Factor (GcMAF)

ところがこれ、撤回されてるんです。

どういうことなんだろう?と思ったら、こんなサイトを発見しました。

「ズサン」:ノブト・ヤマモト、山本信人(Nobuto Yamamoto)(米)

GcMAFでがんが治るなんてウソだ、という話。

ふむふむそういうことか、と思って読んでいたらこんな記述が。

>★GcMAF(ジーシーマフ)医師の大量不審死

ヤマモトと関係ないと思うが、2015年6月から2017年3月までの2年弱の間に、世界中で60人ものホリスティック医療者(全体観医療者、holistic health practitioners)が死んでいる。死因は自殺なのか他殺なのか、不審な点が多い。ホリスティック医療の多くは、GcMAF(ジーシーマフ)医療である。

へぇ…?

そういえば、ワクチンに反対してる医師らの不審死が多すぎる、という情報がFBなどで回ってきてました。

陰謀論としては否定されていますが。

しかし医師がこんなに殺されるって…さすがアメリカ、治安悪すぎ。怖い。怖くてもう行けない。COVID-19死亡者数もすごいことになってるし。



でもGcMAF、論文は撤回されても、特許は撤回されないみたいです。

面白いですね。



それにしても。

今まで免疫といえば「ビタミンC」がいいと言われ、ホリスティック医師はビタミンC大量点滴をがんのみならずCOVID-19でも使うようですが、今まで骨形成に関わる話ぐらいしか聞かなかった「ビタミンD」が実は免疫に大きく関わっていた、というのは意外でした。

そういえば、大腿ヘルニアで緊急入院した時、手術後初めて太陽光を浴びた時には凄い爽快感がありました。

もしかして、太陽光を浴びたことでビタミンDが生成され、免疫細胞が活性化したのでしょうか?

ウォーキングが良いとされるのも、もしかしたら太陽光浴びてビタミンD生成するから?

などといろいろ考えてしまいました。



ビタミンDについては分からない点が多いので、今後も継続して調べてみることにします。

もし、何かしらの情報をお持ちの方はコメントよろしくお願いいたします。



2020年3月18日 (水)

運動と感染症予防

新型コロナウイルスが猛威を振るっています。

正式名称は「SARS-CoV-2」 (Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2=重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)、このウイルスによって発生する病気が「COVID-19」(CoronaVirus Disease, 2019)だそうです。

最近、メディアによく登場するようになりました。

我が家の近所でも感染者の発生が確認されました。

困ったことに私は今、服用している抗がん剤「TS-1」の副作用で白血球数が減っています。

感染したら、重症化するかもしれません。

というわけで、書きたいことはどんどん書いていくようにします。でないと間に合わなくなるかもしれないので。



とりあえず、話題のコロナウイルス関連から。



さて

その新型コロナウイルスの感染予防なんですが、必ずと言っていいほど出てくるのが「マスク」「手洗い」「人混みを避ける」、そして「運動」です。

しかし、おかしいと思いませんか?

感染拡大のクラスターとなったのが「スポーツクラブ」や「ホットヨガスタジオ」。運動が感染予防になるのであれば、そういう所に通ってる人は殆ど感染しないはずなのに。



どうして常日頃運動してても感染するのか?



それについては、アスリートと免疫についての論文が参考になります。

こちらの論文には、運動しすぎると免疫の「オープンウィンドウ」状態になってしまうと書かれています。

> 運動と免疫についての研究は多く報告されている.その中でもペダーセンらによって提唱された学説が「オープンウインドウ」である.

>「オープンウインドウ」とは,激運動後に一時的な免疫抑制状態が生じるとされる説である.実際に多くの研究で,唾液SIgA分泌の低下やリンパ球数の減少などが報告されている.

>しかも,疫学調査で一流のアスリート選手や激運動を行っている人は,上気道感染症にかかりやすいと報告されている.

>このように,激運動は,一過性に免疫機能を低下させ,感染症にかかりやすくするようである.

 
どういうことか?こちらに詳しく解説があります。

運動すればかぜをひかなくなりますか?
https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/14630/1/jinbunkagakuronshu_57_37.pdf

>これまでの研究でも適度な運動がかぜに対して予防的効果をもつことが分かっている。

>ところが,これとは反対にオリンピックに出るようなすばらしい身体能力を持った人がかぜをひきやすかったり,胃腸に不安を抱えていたりすることがある。

>1987年のロサンジェルスマラソンの参加者を対象にした研究では,ランナーがレース後に上気道感染にかかる率は同じようにトレーニングをしているがレースに参加しなかったランナーに比べ6倍も高かったことを示している

> 一過性の運動の影響とは逆に習慣的な運動が免疫機能を上げる可能性を示すことも報告されている。例えば,ウ ォーキングを習慣的に行っている高齢者の上気道感染症にかかる割合は同年代の人の感染率である50%に比べ半分以下の21%であった

> Tomasiらはエリートクロスカントリースキーヤーの唾液中の免疫グロブリンA(lgA)濃度が低いことを観察しており,レースの後ではさらに低下が見られることを報告している

>最大強度のような強い運動では,NK細胞の増加は極めて顕著となり,その濃度は安静時濃度の5倍にまで上がることがある。

>運動を終了するとこれらの反応は急速に収束することになる。

>運動中に大きな増加を示した細胞ほど大きな低下を示す。つまり,NK細胞が著しい低下を示すことになる。

>運動強度が高いほど傷害活性は高くなるが,運動が終了すると速やかに低下する。有酸素運動のような強度が低い運動の場合には運動中の増加の程度低く(ただし有意ではある),運動後の低下も小さなものである。

Openwindow  

要するに

強度の高い運動は運動中は免疫が上がるが、終わった後は運動前より免疫が下がる。この状態を『オープンウィンドウ』と呼び、この時間帯は感染症にかかりやすくなる。一方、軽めの運動だと運動時の免疫上昇は少ないが、運動後にはそれほど下がらず『オープンウィンドウ』 状態にはならない。

ということです。

つまり、

スポーツクラブやヨガスタジオで「激しい運動」をして、その後ロッカールームやお風呂や併設ショッピングモール、公共交通機関などで多くの人と接触することは、感染症予防のためには全くの逆効果でしかない、ということなのですよ。

感染症予防のために運動を勧めるメディアの多くがこの視点に欠けています。

しかも、「強度の高い」運動がどの程度のものかは人それぞれです。もともと筋力も持久力もある人ならばちょっと動くぐらいは平気でしょうけど、体力が落ちている人には、ちょっとした運動でも「強度の高い」運動になりかねません。

しかも、女性の場合は運動による免疫低下で男性よりも上気道感染症にかかりやすいそうです。

運動を勧めるなら、こういう情報も併せて紹介しませんと。



ウォーキングなら上記の論文のような「感染症にかかる割合が減った」というエビデンスがあります。

1人で歩くのなんてイヤだ、みんなでワイワイやりたい?

そういう人が感染しやすいのかもしれません。

1人でいても寂しく感じないようにメンタルを鍛えておくことも、感染症予防になるのかも知れませんね。



今回もやっぱり、「ウォーキング」と「瞑想」が大事、という結論になりました。

運動してNK細胞活性化でがん治療or予防、とか言ってる人は、運動後のこともちゃんと考えましょうね。


2019年9月14日 (土)

乳がん患者がやるべき身体活動 2 手術からのリハビリ

乳がん患者、乳がんサバイバーなどと一口に言いますが、治療法もサブタイプも人それぞれです。

ですが、手術は多くの人が受けています。私も3ヶ月ほど前に受けたばかりです。



なので今回は、手術を受けた人向けのリハビリを自分の経験も含め、幾つかご紹介いたします。

乳がん関連ヨガも、もともとは手術後のリハビリから始まったようですので。



参考にしたのはこちら

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アメリカの理学療法士さんが書いた本ですが、数人の患者さんの症例をもとに、どの場合にどのリハビリを勧めるか、という内容が書いてあります。

アメリカの医療本の場合、患者さんが実名で登場するんですよね。日本だと架空の人物だったり匿名だったりするんですが。

その分リアリティはあります。



ただ、この本は理学療法士さんが書いたものですので

症状や治療法など、専門用語が多く出てきます。一般の乳がん患者さんには少し読みにくいかもしれません。

その分、説得力はあります。病院で習ったリハビリも幾つか含まれていましたので、看護師さん達は読んでいるのかもしれません。

患者さんとのやり取りの実例から、この著者の理学療法士さんはリハビリと同時にカウンセリングも行っている実態が見てとれます。患者としてはなかなか興味深い所です。



さて、ではこの本に書かれている具体的なリハビリの方法についてみていきます。

まずは手術直後から行ってよいもの。



「深呼吸」
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これは一番最初に行うことを勧められてます。

まず、口からゆっくり長く吐いて、その後吸い込む。

腹式かどうかとかは具体的には書いていません。「出産時の呼吸と同じ」だそうです。

「横隔膜を使う」などの記述から腹式だとは思いますが、

健康な人でも呼吸法は難しいのに、手術後の乳がん患者にいきなり複雑な呼吸が出来るわけありませんから、あまりこだわらないのでしょう。

「自然呼吸」でもいい、ということでしょうね。



実は、

乳がん切除後、特に乳房全摘出した後は、かなり呼吸が苦しいのです。

何しろ、胸の皮膚を「縫い縮めてる」わけですから、胸郭が締め付けられているような状態なのです。

ですので、肺を空気で満たすような深い呼吸は出来ません。

なので吐くことだけに集中し、吸うのは少しずつにしようと思っています。

無理して肺いっぱいに空気を入れようとすると交感神経を刺激してしまう「胸式呼吸」になりかねないので危険ですし。

ゆっくり、呼吸の練習をしながら、皮膚を伸ばしましょう。

 

「棒の挙上」

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手術後にまず困るのが、腕が上がらないこと。いわゆる「運動障害」。

着替えも大変、ヘアケアも大変、洗濯物干したり高い所にある調理器具を取ったりなどが出来ずに落ち込む日々でした。

まずはそれを改善します。腕が上がれば、動作はあまり問題なくなるそうです。

仰向けになって腕を垂直に上げ、それを頭の方へ向けて少しずつ動かしていく。手が床について仰向けで万歳できればいいのですが、手術後はおそらく45度ぐらいの角度で止まってしまうと思います。

棒を持つのは多分、左右の腕を同じように動かすためだと思われます。

これ、私は棒なしでやりました。

ベッドのヘッドボード(または壁、テーブル、ソファなど)に手をつけて、しばらくそのままストレッチ。

毎日1回でも続けていくと、少しずつ可動域が拡大していきます。



「壁のぼり」

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これも目的は手を上げること。前と横、両方行います。

「棒の挙上」とこれで、かなり可動域拡大します。

ある程度上がるようになったら、洗濯物干しなど、実生活で手を上げる動作を多くしてリハビリを兼ねてもいいそうです。

私も実践してます。

手を上げたりするリハビリは、3ヶ月以上は続けるのが望ましいようです。リンパの流れが悪くなると「リンパ浮腫」「石灰沈着性腱板炎」(これはこの本の記載ではなくネット情報)になったりするらしいので、あくまで強度は軽めに、期間は長めにするのがいいようです。



「おじぎストレッチ」
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手術後に筋肉の「攣縮(れんしゅく)」がおきて痛みが発生することがあるそうです。それが改善した例が載っていました。

アドムカウィラアサナ。リラックスして筋肉を伸ばすのには良いポーズですね。



この本、放射線治療前の人や乳房再建した人など、いろんなケースについて書かれてるので参考になります。

痛みの表現の仕方とか、痛みのパターンについても書いてあります。

今まで自分では「痛みのパターン」を把握しようと試みたりしていたものの、医療関係者からはあまりそういう話を聞いたことはなかったし、こういうことを具体的に書かれた本は初めて読みました。

また、手術後のリンパや筋肉の状態など、痛みの原因が詳しく書かれているので参考になります。



一方で、ストレッチに関する解剖学的なことはあまり書かれていないのが残念です。



日本語版の出版は1997年。英語の原著は1995年、Windows95が発売された年です。

「乳がんと牛乳」(原著は2000年発行)よりずっと前ですね。



そういう古い本ですので、その頃は画像処理があまり進んでいなかったから書籍化の際に載せるのが難しかった、だから省略した、という可能性はありますが。

リハビリの動作も、全て上記のようなモノクロイラストで描かれていました。ボブ・アンダーソンの「ストレッチング」の真似をしたのかも。



また、その時代はおそらく、サイトカインだのマイオカインだのが乳がんに与える影響が、まだ明らかになっていない頃です。

ですので、軽い筋トレも含まれています。ダンベル持たせたり。



しかし、このあたりは最新の乳がん関連のリハビリではどうなのか?と思いネット上をあちこち探してみたのですが、なかなか見当たりません。



ちなみに私、ケロイド体質のようです。手術の傷跡が赤く腫れあがったような感じで盛り上がってます。この周辺に痒みを感じることがあります。

ケロイド体質とは、どうもコラーゲン生成過多であることが原因の一つのようです。

コラーゲンの生成にはエストロゲンが関与しています。

一方私は、関節痛が出やすい体質でもあります。

どうも私の場合、骨や皮膚を形成する1型コラーゲンはできやすく、軟骨の主成分である2型コラーゲンができにくい体質のようです。

2型コラーゲンが足りないのでどんどんコラーゲンを生成するためホルモンやサイトカインが出されるのだけど、1型ばかりできて2型はやっぱり足りない、これは遺伝体質のようです。



だから私のような体質の乳がん患者は、運動をしてもストレッチをしても、1型コラーゲンばかりできてケロイド悪化、しかも関節の軟骨はすり減るので2型コラーゲン生成のためのエストロゲンが過剰分泌されてしまい、乳がんは進行する方向へ向かってしまうのではないでしょうか。

そのためヨガをやるなら極力身体を動かさないリストラティブタイプのものを、自分に合った形で行うしかないと考えています。

ジョンズホプキンス大学の動画にあるような立ちポーズの多いアシュタンガ系のヨガなどは、関節痛が余計悪化しそうですので絶対やりません。



乳がんの手術には、上に示したようなリハビリを行わなければならない「障害」を負ってしまうというデメリットがあります。

しかし

抗がん剤の害については知られるようになっても、手術による運動障害についてはあまり知られていません。




ただ、上述しましたようにリハビリ関係の最近の本の出版はありません。医療関係者も恐らく、乳がん患者にはどこまで運動させていいのか良くわからない、というのが本音ではないでしょうか。

しかもそれは人によって違いますから。

安易にサイトに書いたり本を出したりは出来ないのでしょう。

アメリカは本の出版に関しては割と厳しくファクトチェックするらしいですし。そうはいってもファクトとしての「論文」が間違ってる場合もありますから何とも言えませんが。



一方、乳がん関連ヨガについては前々回も書きましたが書籍、動画、ネットサイトでの解説など多数あります。

リハビリが必要であることに加えて副作用の緩和についてもケアせねばならず、その中で「ヨガでまとめてやってしまってはどうか」という話が出てきたとしても、流れとしては不思議ではありません。



しかし、前回前々回も書きましたように、乳がん関連ヨガの「インストラクター」の質に関しては甚だ疑問です。

少なくとも私が受けた「乳がんヨガ」のインストラクターの知識は、この本の著者の足元にも及びません。

医療側はそれを分かっているのでしょうか?

もしかして、そういうインストラクターに任せることで「ヨガをやりすぎて乳がんが悪化して病院に戻ってくる」ことを、狙ってたりしませんか?



万一やりすぎて悪化しても、「治療」のための「医療」ではなく「QOL向上目的」のための「ヨガ」だから自己責任或いはヨガインストラクターの責任として病院側の言い逃れは可能、だからリハビリではなく「ヨガ」、という可能性は十分あると思います。

乳がん関連ヨガに関わる医師の言葉に「2012年にアメリカで発表された研究では、ホルモン療法を受けているがん患者さんが、ヨガを行うことによって関節や筋肉の痛みを和らげることができたという結果が出ています。2)」とあります。

しかしその根拠となる資料をネット上で確認しましたところ、

ここの動画(12分頃から)、最後の方に「Translational research」(橋渡し研究)が必要となっていて、メカニズムはまだわかってないようなこと言ってますよね。

分かってないのに勧めてるんですよ。



でもこれって私が思うに、ヨガで筋肉や関節に負荷がかかり、その回復のためにエストロゲンが出た、そのせいで筋肉痛や関節痛が改善されたのではないのですか?



もしそうだとしたら、筋肉痛や関節痛の痛みは治まっても、乳がんは悪化しますよ。



放射線療法や化学療法中にヨガを行うとある程度効果が上がるのは、血行が良くなるからです。

しかしそれだってIGF-1陽性だとどうなるかわかりません。

しかもこの本「乳がん手術後のリハビリ」には、痛みを改善するための「超音波治療」について書かれています。

「超音波治療」は局所的に超音波を当て、温熱作用で血行を良くして痛みをとる、という手法らしいのですが、ハツカネズミの実験では連続して超音波を当てると腫瘍が増大するというデータがあるそうです。血行が良くなってがん細胞にも血液が回るようになるから、とか。

安易に血行を良くすればいいというわけでもないようです。

だから、乳がん患者がヨガをやるとしたら、「放射線治療中」か「化学療法中」だけに限るべきなんですよ。

少なくとも無治療の人はやらない方がいい。

これは患者としての私の実感でもあります。



とにかく

乳がんの手術後は最低限のリハビリを行い運動障害の改善とリンパ浮腫予防をはかる。

それだけで十分だと思います。いや、それだけにとどめておいた方がいいと思います。



乳がん関連ヨガで痛みが出てもヨガインストラクターは責任とろうとはせず、言い逃れするだけでしょう。

皆さんも気を付けてください。






2019年7月31日 (水)

乳がん患者がやるべき身体活動

前回は「身体活動量と乳がん死亡リスクに関する論文」と「乳がんヨガ」との関連について、殆ど関係ないのにエビデンス扱いしていること、乳がんヨガは効果が明らかでないこと、などを書きました。

では、乳がん患者は何をしたらいいか?

今回は乳がん患者である私自身の経験から、そのあたりを書いてみたいと思います。



乳がん患者と一口に言っても、人それぞれ、症状も治療法も生活習慣も細胞診の結果も様々です。

なので

「乳がん患者だから」アレをすべきコレをすべき、ってのはあまりありません。

もちろん、生活習慣が乱れていたからこその病気なので、生活習慣を正す、というのは重要です。環境ホルモンの除去は特に。



乳がんの場合は侵襲性の高い治療が多く、QOLの低下は確かに問題であり、QOL維持のための活動をした方がいいのは確かでしょう。

しかし一口にQOL低下と言っても、状況は様々です。

なのでQOLを向上させる方法もまた、様々なのですよ。



私は先日、乳房全摘出手術を受けました。

というわけでまずは手術によりQOLがどう変化するかについて。



「乳がんの手術」と一口に言っても、腫瘍の大きさや転移状況などによりいろいろあります。



「非浸潤性乳管がん」などの転移もなく進行も遅く、かつ腫瘍サイズも小さい乳がんの場合、部分切除術が可能です。

この場合は入院期間も短く済みますし、手術後のリハビリもほとんど必要ないと思います。

腫瘍の個数や位置にもよりますが。



腫瘍が大きい場合や転移がある場合は、部分切除ではなく乳房全摘出となります。

皮膚浸潤を最小限に抑えるため、乳房周辺の皮膚はざっくり切り取ります。そして皮膚を無理やり引っ張って縫合します。

そのため、手術した側は肩が前に入り猫背気味になります。

手術の傷が治った後、リハビリを行った方がいいでしょう。

また、乳房の大きさにもよりますが、左右の重さのバランスが崩れるのでそれを正すのが大変、という方もいらっしゃるようです。



リンパ転移がある場合はリンパ郭清を行います。

この場合、郭清の度合いにもよるでしょうが、リンパ浮腫のおそれがあるのでリンパドレナージは必須です。

また、私のように神経を切られたりすると運動障害も残りますので、地道なリハビリは必要です。

しかし、汗を大量にかくような運動は避けなければいけません。リンパ浮腫になりやすくなります。

また、郭清した側の腕を圧迫すると良くないので、そのあたりも考慮すべきでしょう(加圧トレーニング不可)。



ハルステッド手術(大胸筋まで切り取る大手術)を行った場合については、どうなるのか、私にもわかりません。

術後の外見は、あばら骨が浮いたような状態になるそうです。

運動障害はどのくらい出るのでしょうか?かなり大変なことになるであろうことが想像できます。

数十年経っても痛みやしびれが出るという証言もあるようです。



これが右乳房のみか左乳房か両方か、でも違いますし、右と左で術式が違うケースもあります。

また、乳房再建術を受けている人もいます。保険適用になってから受ける人が増えたようです。

インプラントを使う人も、自家組織で再建する人もいます。

自家組織での乳房再建の場合、使う組織の元をとる背中やお腹や足などに傷が出来ます。これによっても対応が変わります。

インプラントでの再建の場合、何度か手術し直す必要があるそうです。

最近、シリコンインプラントの中に特殊なリンパ腫を引き起こすものがあったのでメーカーが対象製品を自主回収した、というニュースがありました。シリコンの方要注意です。

ちなみに私は、乳房再建はしていませんが、右側の植皮のために腹部を切りました。なのでお腹はまだ伸ばせません。



手術だけでこんなにいろいろあるのです。



そのため、リハビリは病院で行うのが良いでしょう。

病院でのリハビリは、理学療法士や作業療法士などの資格のある方が行います。

リンパドレナージは、研修を受けた看護師などが患者に指導します。

理学療法士、作業療法士、看護師はいずれも指定の学校を受験して、合格したら数年通って勉強して、国家試験を受けなければならないという取得が大変な資格であります。そういう信頼できる資格を持っている上に、病院での業務で毎日何十人もの患者さんの対応をしている、そういう方々です。

カルテも共有しているでしょう。そして何かあった場合の対応方法も知っています。

彼らは、安全です。もちろん「中には怪しい人もいる」という可能性は否定できませんが、それはどの職種でも同じです。



一方、ヨガに関しては国家資格はありません。

「乳がんヨガ」はただの民間資格です。指導者養成コースは1日7時間3万円だそうです。受講資格は特になく、誰でも受講料払って参加すれば、試験などもなく免状がもらえる、そういう資格のようです。

「乳がんヨガ」限定ではない一般的なヨガインストラクターの資格としては「全米ヨガアライアンス200」というものが有名です。これは、200時間の講座を受ければ取れる、というものです。1日8時間として25日。1カ月かかりません。最短では18日あれば取れるそうです。

200時間+7時間の講座でがん患者を相手にすることに、不安は感じないのでしょうか?少なくとも、個別対応できるだけのスキルがこれだけで身につくとは思えません。

ちなみに、全米ヨガアライアンス以外にもヨガ資格出してる団体は山ほどあります。指導者養成にかかるコストも時間もまちまちです。当然、スキルのレベルもまちまちです。



話を戻しますと

手術のみならず、化学療法に関してもさまざまな種類があります。化学療法はQOLが下がるとよく言いますが、一体どんな副作用が出るのかが問題です。髪は抜けるのか、しびれはあるか、吐き気やめまいはあるか、免疫落ちて感染しやすくなってないか、などなど。

薬によって、かなり違います。

私の場合、最初の抗がん剤(EC療法)は髪も抜けたし体重は極端に減るし体力落ちるし不正出血もあったし目は悪くなるし爪は黒くなるし最悪でしたが、今飲んでいるTS-1は副作用はあまりありません。わずかに吐き気がして便が緩む程度です。

腎臓や肝臓に悪影響が出たり、手足にしびれが出たりなどもあるそうです。

ホルモン治療をしていると、関節痛(関節への負荷考慮)、骨粗鬆症(骨折のリスク)、ホットフラッシュ(体温調節困難)、血栓ができやすい(脳梗塞や心筋梗塞のリスク)などが出たりします。

他にも

放射線治療を行っている場合、その種類(X線、陽子線、重粒子線等)や強度によっても副作用(疲労感、皮膚炎など)の出方が違います。

皮膚にマジックで線を書いたり、皮膚の色が変わったりするので、薄着になりたがらない人もいるでしょう。そういう相手を気遣うことが出来ますか?

切らずに治す治療法としてラジオ波焼灼術や冷凍凝固療法、FUS(MRIガイド下収束超音波療法)などがありますが、これらについてその治療跡がどうなるのか、胸を開いて伸ばしたりするのは施術後どのぐらい経ってから可能なのか、把握しているのでしょうか?

また、免疫療法やビタミンC点滴、丸山ワクチンなど、代替療法もさまざまあります。それぞれ治療前後の注意事項は違うはずです。無治療の方、漢方やサプリなどの使用も含めますともう十人十色、千差万別です。

他の疾患での症状や服薬の状況なども違いますし、閉経前か後か、年齢、肥満度、体質の違いなども含めますと、まったく同じリハビリを要する人などまず、いないのです。



乳がんは転移再発しやすい病気です。本人も知らないうちに骨転移していてホルモン治療と相まって骨が弱ってしまっていて、たまたまヨガを受けたら骨が折れてしまった、というケースもあり得なくはないと思います。きちんと想定して対策を考えているのでしょうか?

万が一トラブルが発生しても(副作用で嘔吐したり出血したり半月板損傷したり蜂窩織炎になったり)、理学療法士や看護師が病院内で行っているのであれば対応は可能でしょう。医師もすぐそばに控えてますし。

しかし一般のヨガインストラクターが、ヨガスタジオや自宅で行った場合はどうでしょう?救急車呼びますか?



しかも、病院スタッフは忙しいのです。毎回来てもらうのではなく、自宅で自分で出来るようなリハビリ方法を教えてくれます(病院にもよりますが)。

乳がんヨガのような「教室」だと、毎回通う前提です。でないとインストラクターが儲からないから。

そして、集団でいると、どうしても他の人と自分を比べたりしますよね。

「あの人、私より後に手術受けたのに、もうあんなに元気そう。私は全然動けないのに…。」

「あの人、同じ薬使っててなんであんなに副作用軽いんだろう。私は酷いのに…。」

よりケアを必要とする(QOLが低下してる)人ほど、嫌になってしまったり、無理して動き過ぎてしまったり。

ナーバスな患者達の気持ちをうまくくみ取れるインストラクターならいいと思いますが、ヘタなこと言ってしまうとかえって患者を落ち込ませることにもなりかねません。

で、自宅で自分でやりたければ「3万円払って資格取れ」、ってことになるわけです。



「乳がん」そのものの治療には直接は関係しない「QOL向上」だけなら、「乳がんヨガ」に限らず好きなことをすればいいと思います。

激しすぎない、ウォーキング程度の身体活動ならエビデンスもあるわけですから、ウォーキングでもいいと思います。捻ったりしないので怪我の心配はありませんし。他にもやりたいものであれば、医師と相談の上、本人の責任においてやればいいと思います。やりすぎは禁物ですが。

「ずぼらヨガ」的なゆる~いヨガを自分でやってもいいし(乳がんヨガもずぼらヨガと大して変わりません)。



運動でなくてもいいのです。アメリカのMDアンダーソンがんセンターでは音楽療法や鍼なども行っているそうですし、韓国の病院では園芸療法などさらにいろいろな補完療法を行っているそうです。

「乳がんヨガ」を信じて受けるのであれば、QOL向上には寄与することは分かります。しかし信じていない人、あるいは逆に乳がんヨガに対して過剰な期待を持って受けに来てしまった人(私がそうでした)だと、ストレス溜まって逆効果の可能性もあるんですよ。



私には「乳がんヨガ」は乳がん患者やヨガインストラクター資格保持者をカモにした詐欺のようにしか見えないんですよね…。その理由はまた次回、詳しく書こうと思います。


2019年7月25日 (木)

論文と乳がんヨガ

前回、こちらの論文に関する考察を書きました。

私の考察をざっくりまとめますと

「運動しすぎると悪化する可能性があるのに無視してんじゃねーよ!」

ということなのですが

この論文、もともとは「乳がんヨガ」のサイトにリンクが貼られていた、厚生労働省の統合医療に関するパンフレットから参考文献ひいてって見つけたものです。

そこで今回は、この論文と乳がんヨガとの関連について書いてみたいと思います。



論文のレファレンスの30番の付表に、どういう運動をするとどのぐらいの活動量になるかという数字(MET表)が載っています。

それによりますと、「ヨガ」は02100にConditioning exercise,Streching Hatha yogaとして4.0と記載されております。なので身体活動量としては、週に1時間行ったとして4MET/wk。

少し早めのウォーキング(3.5mph)と同じぐらいの運動量ですね。しかしこれは「ハタヨガ」の場合です。




レファレンス38では、運動群は1日45分の有酸素活動を含む身体活動を行い、週平均171分活動したそうですが、

この時の対照群(比較のための集団。この場合は運動しなかった人達の群)は、週に45分未満のストレッチ、それ以上の運動はしない、という条件でした。



…って…。

この文献では、週に1時間弱程度のストレッチは、身体活動に含まれない?

ならば、病院での月1時間の「乳がんヨガ」って、この論文とは殆ど関係ないのでは???



そりゃ、身体活動量が多いヨガもあります。太陽礼拝の間にいろいろなポーズを入れ込む「アシュタンガヨガ」などは結構汗かいたりしますよね。

しかし、乳がんヨガは「リストラティブ系」なんだそうですよ。

リストラティブヨガってこんなのです。

(私が受けた乳がんヨガはそうではなかったのですが。ブロックもブランケットも使いませんでしたし。何しろ空手パンチもどきとため息呼吸でしたからw )

この「リストラティブヨガ」。

折りたたんだブランケットの上に寝転んだり、ブロックやボルスターで身体を支えたり。

座ってるか、寝転がってるか、うつぶせになってるか、壁に寄りかかったり、もたれかかったりしているか。



この内容で

いったい

どのぐらいの

「 身 体 活 動 量 」が

あると

思いますか???



寝ている状態(07030 Inactivity, Quiet Sleeping 0.9MET)に近いのでは?????



ヨガというのはもともと何でもありです。

ポーズによってはストレッチにも筋トレにもなりますし、ポーズを連続して行えば有酸素運動にもなります。

しかし「リストラティブヨガ」に関して言えば、有酸素運動の要素も筋トレの要素もありません。

殆ど動かず、リラクゼーションのみ。ストレッチ要素もわずかしかない。



そういう乳がんヨガの説明に、「身体活動量と死亡リスクの相関」に関する論文を大元にしたパンフレットへのリンク貼り付ける、って

BCYIの皆様、一体、何を考えてるんでしょうか?????



もしかして、根拠となる本や論文、読んでなかった?????

仕事として、「乳がんヨガ」やろうって人達が、

これから全国展開していこうっていう「BCYI」立ち上げた人達が、

誰一人として、

読んでない??????????

えっ?

まさか!!!!!



いやいや…

多分、サイトのパンフと本ぐらいは読んでたんですよね。読んでたけど、医師が書いてるんだからと信用してた。

それとも、論文も読んでみたけどわからなかった。

或いは、論文の中身は把握したけどリストラティブヨガとの関連は考えなかった。

もしかして、読んで中身もしっかり把握して、まったく関係ないインチキな論文だと分かってはいるけども「厚生労働省が推してるんだから」患者さんのためになろうがなるまいが、べつにいいかぁー、とりあえず貼っとけ!という感じ???



いずれにせよ

乳がん患者のことをきちんと考えて、やってるようには見えないんですよね。



「利益相反」という言葉があります。

英語ではconflict of interest(COI)。

直訳すると「利害の対立」。

どういう意味かと言いますと

例えば医学の研究者であれば、科学的客観性の確保や、患者や被験者の利益を保護するという「責任」がありますが、

資金の提供元(企業や国など)にとって有利あるいは不利になる可能性がある場合に、「公正であるべき」研究結果の判断に影響をもたらしかねないと懸念される状況を意味します。

なので、最近の論文には資金の提供元を明示する決まりになっています。



乳がんヨガで言えば

彼らは「乳がん患者の利益」よりも、ヨガ団体の維持発展或いはインストラクターの収入という「組織や個人の利益」のため、指導内容の検証がおざなりになっているのではないかという懸念がある、ということ。

少なくとも、私が客観的に判断した限りでは。

しかし私自身も「乳がんヨガ」の体験クラスを受けた際、「ため息呼吸」などという「ヒトのことバカにしてんのか?」と思わざるを得ない対応を受けた経験から「乳がんヨガ」に関してはマイナスイメージしかないのです。なのでここは第三者の方から見たら懸念材料かもしれませんけど。

ついでに書いておくと、「空手」のMETスコアは10です(15430)。「グーパー空手もどき」はどのぐらいか分かりませんが。



リストラティブヨガを「乳がんヨガ」として広めたいのだったら、呼吸法やメディテーション、リラクゼーションが乳がんにどういう影響を与えるのかを医学的に証明すべきだと思います。

しかし、彼らはそれをやろうとしない。

出来ないからでしょう。

彼らの知識の浅さでは、無理です。乳がんに関してもヨガに関しても。



「乳がんヨガ」のサイトにコメント寄せてるお医者さん達も、このくらいのアドバイスしてあげればいいのに。

ま、こんなことしても何のメリットもないってことで、衝突を避けて言わないだけだろうけど。

お医者さん達も私のブログ読むまで、彼らが出してきたエビデンスの意味のなさに気付かなかったのかもしれないし。

もしかして乳がんヨガのサイト自体もこのブログも読んでなくて未だに何も知らないかもしれないし。

何しろ「乳がんヨガ」だもの。とりあえず勧めるようなコメント出しておけば、「乳がんヨガ」に釣られた乳がん患者が自分の病院に来てくれるかもしれない、ぐらいの感覚なんでしょうね、お医者さん達。



あーあ。

こういう所でも乳がん患者はバカにされている。「カモ」としか思われてない。

乳がん患者の皆様、気を付けてくださいね。騙されないように。

次回は「では乳がん患者は何をすべきか」を語ってみたいと思いますので、よろしくお願いします。

2019年7月24日 (水)

論文の読み方 考察編

これまで何度かに分けて、下記の論文についてどういう内容が書かれているかレファレンスの内容は、著者らの他の論文は、などの解説をしてきました。

Physical Activity and Survival After Breast Cancer Diagnosis

今回は、私はこの論文をどう読むか?を書いていきます。かなり批判的な内容になってます。

もちろん異論はあるでしょう。

しかしレファレンスや関連情報からは、私には下記のようにしか受け取れないのです。ご意見のある方は、コメントにてお願いいたします。



論文の主旨は、わかりやすく説明するとこんな感じです。



アメリカ看護師調査(Nurse's Health Study、以下NHSと略す)回答者の中から乳がん患者の記録を調べた結果、

1.運動している患者の方が乳がん死亡リスク、再発リスクともに低かった。

2.ホルモン感受性のないER-HER2+の患者の乳がん死亡リスクは、ホルモン感受性のあるER+の患者の乳がん死亡リスクより高かった。

3.よって運動で死亡リスクが下がるのは、エストロゲンレベルが低下するからであると思われる。参考文献にもそう記載されている。

4.より運動量が増えれば乳がん死亡リスクもより下がると予測したが、15MET/wk以上は横ばいだった。

5.乳がん患者も一日30分以上のエクササイズをすべき。



さて、これらの主張は正しいのでしょうか?



まず、1.の乳がん死亡リスク、再発リスクですが、確かに週9METまでは、身体活動量が増えると死亡リスクも再発リスクも下がる、という結果になっています。

おそらく、エストロゲンよりもむしろインスリンが関係しています(レファレンス40参照)。

ウォーキングなどの軽い運動でインスリン抵抗性が改善され、筋肉が糖を取り込むので血糖値が下がります。その結果、がん細胞に栄養(糖分)が回らなくなったためにがん細胞の増殖が抑えられた、そういう可能性があります。

一方、 運動強度が大きい場合、あるいは運動時間が長く及んだ場合、グルカゴン、カテコールアミンなどのインスリン拮抗ホルモンの分泌が増加し、これらの影響により、血糖値は上昇してしまうそうです。だからやりすぎると効果がなくなります。


そして、週平均の身体活動量が「ゼロ」という人はいったいどういう人か?についても考えてみましょう。

おそらく、体調が悪化して、動けない状態の人です。

病気の進行により、或いは治療の副作用により寝たきり状態であった場合など、死亡率が高いのもやむを得ないように思います。

毎日10分のウォーキング(3MET/wk程度)が出来る程度の人はそういう人達より死亡率が低い、さらに毎日30分程度のウォーキング(9MET/wk程度)が出来る程度に動けるくらい症状の軽い人は、もっと死亡率が低い。

ある意味、当たり前の話のような気もします。体力がある人の方が手術など侵襲性の高い治療に耐えられますし。




2.のHER2+については、年代が問題となります。

この論文で扱ったNHSのデータは、1986年から2002年6月のものまで。

HER2+適応の分子標的薬ハーセプチンがアメリカで認可されたのは1998年。全16年の調査期間中、使われたのは最後の4年間のみです。

使用が広まるまでの期間を考慮すると、調査対象中のHER2+の患者さん達のうち、ハーセプチンが使われていない人は8割以上いるであろうことが予測できます。

そう、この論文でのHER2+死亡者というのは、殆どがハーセプチンの製品化に間に合わず、古いタイプの抗がん剤が使われた可能性が高い患者さん達なのです。

おそらく、1998年前後でHER2+患者の生存率はかなり変化していると思われます。

そして論文が出たのは2005年。

ハーセプチン以前の記憶が薄れてきた頃です。この著者まで忘れてしまっていたのでしょうか?



3.のエストロゲンに関しては、レファレンス編で説明しましたが、女性アスリートの話(レファレンス5)です。アスリートでない普通の女性でも毎日10マイル(16km)走るようなハードトレーニングをしていると無月経になる可能性がある(レファレンス6)、という話です。

「身体活動量に比例してエストロゲンが減少」という話ではなく「身体活動量が多すぎる場合」限定、それも摂取エネルギーとの相関であり摂取エネルギーが少ないアスリートの話で、摂取エネルギーが多ければ無月経にはならないのです。

つまり、乳がん患者が食事を変えずにウォーキングのような軽い運動をしただけでは、エストロゲンが減少する可能性はかなり低いと思われます。

しかもこれは閉経前女性の、卵巣からのエストロゲン分泌の話です。



閉経後の女性のホルモンレベルを運動群とコントロール群で比較した文献(レファレンス38)では「有意差はない」程度に下がった、という結果でした。

そしてこれは「濃度」の話。エストロゲン総量がどれぐらい作られてたのか、という視点からの論述はありません。

閉経後は脂肪細胞でエストロゲンが作られるので、月経のようなホルモン量の指標がありません。

アロマターゼ阻害剤の副作用で関節痛が出たり骨粗鬆症になったりする人は、アロマターゼ阻害剤服用以前は軟骨の再生や骨の分解予防に寄与するエストロゲン量が多く作られ、消費されていたと推測できますが、そのあたりの説明がないのです。

ただ、閉経後はエストロゲンは脂肪細胞でアンドロゲンから作られますので、体脂肪を減らせばエストロゲン生成量は減るようです。実際、レファレンス38にもそう書いてあります。そういう意味で、もともと体脂肪量が多い人には、運動も効果があるのかもしれません。

しかし肥満予防はむしろ食事で行うべきでしょう。脂肪分が多い食事はエストロゲンを増やすとの論文も多数あります。Holmesさん達のグループでは違う結果(脂肪分が多い食事はエストロゲンを減らす)でしたが、他のグループは軒並み脂肪摂取とエストロゲンの正の相関を指摘しています。

そのため、エストロゲンを減らしたければ脂肪分の摂取を控えた方がいいであろうことは予測できます。




4.「15MET/wk以上は横ばいだった」については明らかなウソです。グラフにしてみましょう。
    Photo_20190724160901    
    

確かに身体活動量9MET/wkまでは下がっています。しかし15MET超えると、死亡リスクも再発リスクも上がっています。

それを無視して、横ばい(flat)であると言い切ってしまっています。


なのに5.では上限を設けずに運動を勧めている。



これは一体どういうことでしょうか?



15MET/wk超えると死亡率、再発率が増加した分は、上記のインスリン拮抗ホルモン以外にも、インスリン様成長因子(IGF-1)の影響が考えられます(レファレンス40参照)。

論文中では有意差はないとされておりますが、IGF-1濃度が高いと死亡リスクも再発リスクも若干上がっています。

同じ文献では、エストロゲン濃度が低い方がむしろ死亡リスクが若干上がってます。これも有意差はない程度ですが。

エストロゲンに関しては、濃度ではなく総量で考えれば納得がいきます。

エストロゲン受容体が多い、或いは活発であるような、エストロゲンの消費が多い人は、アロマターゼによるエストロゲンの生産が追い付いておらず、空腹時のエストロゲン濃度は低くなる、という可能性があるのではないでしょうか。

そして身体活動とエストロゲンの関連についてはこちらの論文が参考になります。

The role of cytokines in regulating estrogen synthesis: implications for the etiology of breast cancer


運動すると分泌されるマイオカイン、インターロイキン6(IL-6)が酵素であるアロマターゼを活性化し、エストロゲンの分泌を促すとのことです。

むしろ、運動で乳がん細胞中のエストロゲンは増える、と。
 

Bcr4251    



2005年以前に発表された論文なので、世界的に有名な研究者であるHolmesさんがご存知ないはずはないと思うのですが。

一方、IL-6は卵巣においてはアロマターゼ活性を阻害するようです。女性アスリートの月経障害にも関係している可能性があります。


また、IL-6そのものにもがんを進行させる作用があるそうです。活動量が増えると死亡率も再発率も上がるのはIL-6の増加が影響している可能性もあります。

IL-6だけではありません。

成長ホルモン(GH)もインスリン様成長因子(IGF-1)も、乳がん細胞を増殖させます。また、アディポネクチンというサイトカインには抗がん作用があり、低アディポネクチン血症は乳がんの発がんと関連がありますが、アディポネクチンは握力や脚伸展筋力と逆相関の関係にあり、運動して筋力がつくと逆に減ってしまうのです。

さらに、動き過ぎるとインスリン拮抗ホルモンであるグルカゴン、カテコールアミンなども分泌されます。上記のようにこれらはインスリンの作用を阻害し血糖値を上げますので、がん細胞の増殖に繋がります。

このように、運動するとがん細胞を増殖させる方向に働く物質が多くあります。

運動して分泌されるサイトカインの中では唯一、SPARCという物質には抗がん作用があるようです。しかし大腸がんでは運動でのSPARC分泌による予防効果は確認されているのですが、乳がんでは論文を検索しても殆ど出てきません。「化学療法(nab-パクリタキセル)の効果を向上させる」程度のようです。

以上の理由により、「身体活動量が増えるとエストロゲンが減り、再発リスクも死亡リスクも下がるので乳がん患者には運動を勧めるべき」は殆どウソであることがわかります。



ところで。

私のような素人が読んでもわかるような論文のウソを、どうして厚生労働省の優秀な官僚の皆様には見抜けなかったのでしょうか?

或いは、厚生労働省が参考にしたという書籍

「がんに効く」民間療法のホント・ウソ

の著者である医師達には、何故見抜けなかったのでしょうか?

おそらく、見抜「け」なかったのではなく、見抜「か」なかったのです。

ハーバード大学、或いはその研究資金を提供したアメリカNIHに対する「忖度」ですよ。

なにしろ日本の医療は中曽根政権時のMOSS協議以降、アメリカ追従せざるをえない状況になっているので、否定するのは難しいでしょう。

このあたりもそのうち書きます。



それにしても、乳がん患者はいったいどれだけバカにされているのか。

以前、乳がん患者には運動がいいとする論文を検証し、QOL改善だけじゃん!と指摘しましたが。

今回は、もっとひどい結果となりました。悪化する可能性を隠しているとは…。

はぁ~…ため息が出ます。

ため息とはこういう時に自然と出るものです。わざわざ出すものではありません。



しかし。著者のHolmesさん、実は根はいい人なのではないかと思ったりもします。

何しろ、レファレンスのチョイスが最高です。しっかり読めばカラクリが分かるようになっています。

新元号発表後にネット上にいろいろ噂が流れましたが、それに近いものを感じました。

レファレンスを読んでいて、とでも勉強になりました。紹介して頂き、ありがとうございました。



せっかくの頭脳と知識を、忖度論文にしか生かせないのはもったいないとは思いますけども。

2019年7月 4日 (木)

手術を受けました

今回も「論文の読み方」シリーズは一旦お休みにしまして、乳がん治療の途中経過の報告です。

前回の記事に書きました通り、手術を受けました。

5月の下旬に受けて、3週間ほど入院したのち退院いたしました。

今は、通院治療を受けております。



右の植皮部分がなかなか生着せず、いまだにガーゼのお世話になっていますが、とりあえずがんの塊はなくなりました。

しかしまだ取り切れてないものもあるので化学療法を勧められています。来週までに回答を出さねばなりません。

というわけで今、抗がん剤についていろいろ調べています。

「抗がん剤批判してたくせに何を言ってるw」とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし最近は毒性の高いアンスラサイクリン系は使わない、と書かれたパンフレットを目にしまして、ではそれ以外は毒性は低いのか、比較してみるとどうなのか?気になったので試してみることにしました。毒食らわば皿まで、です。



手術についても、自分が実際に受けてみるまでは分からなかったことが沢山ありました。

何しろ身体の一部を切り取るのです。乳がんの場合、乳房を取って皮膚を縫い合わせますが、かなり無理やり引っ張っての縫合なので、肩が前に下がり、胸郭が狭くなったような感じがします。これは想像しておりませんでした。

特に私の場合、左右同時に切り取りましたので、片側だけの人よりもひどくなっていると思います。

しかも右乳房切除部分の植皮を下腹から切り取ったのですが、そのお腹の傷もまだ伸ばすと痛むので、どうしても前かがみになってしまいます。姿勢が悪いと血行も悪いし気分的にも落ち込みます。そろそろこのあたりのリハビリも始めないといけません。



そして、腕の運動障害(乳がん手術後の一般的な運動障害についてはこちらをどうぞ)。

右も左も、傷口のひきつれで腕が上がりません。リハビリ必須です。

以前、五十肩気味になった時にリハビリで治した経験がありますので、今回もそのつもりでおりましたが

右はともかく、左側は神経にもがん細胞が絡みついていたそうで、神経の一部(おそらく肋間上腕神経)を切除したとの説明が医師からありました。

そのため、術後殆ど痛みを感じなかったのは良かったのですが。左側はひじを上げようと思っても肩の高さまでしか上がりません。右手で左ひじを持ってあげると、肩より高いところへも上がるのですが、いかんせん脳からの指示が腕に届かないのです。そして左の二の腕は痛み同様、熱さも冷たさも感じず、ただただ痺れただけの状態になっております。

最近ようやく、背中を使うことで左ひじも上がるようになってきました。

こうしたリハビリは個別には行うべきだと思いますが、某ヨガのように集団で行う必要はありません。



そして、例の身体活動と乳がんに関する論文で、ウォーキングやジョギングをする人ばかりだったのは何故か、ようやく理由が分かりました。

あの論文はデータが古いので、ハルステッド手術やリンパ郭清術を受けた人の割合、かなり高いのではないかと思われます。神経を切断された人も多くいたのではないでしょうか。

手が動かなければ、球技全般、出来ません。テニスもバスケもバレーボールも野球もソフトも。せいぜいサッカーぐらいでしょうか。

エアロビクスはじめ、ダンス系も厳しいでしょう。

水泳も同様。筋トレも困難。

そもそもリンパ郭清をした患者はリンパ浮腫予防のため、激しい動きで汗を大量にかくような運動は行わない方がいいのです。

結果、ウォーキングや軽めのジョギングに落ち着くことになります。

もちろん、どれもこれもやろうと思えば「出来ない」ことはありません。しかし手が上がらないと着替えも困難で、被り物の服(Tシャツなど)が着れずに前開きのものばかりだったりします。これではウェアも選べません。



私の場合、手作業さえ出来ればいいので、手術後も何とか生活は出来そうです。抗がん剤の副作用は心配ですが、これについてはまた後日。



今回の手術は、いろいろ説明を受けて納得の上で受けたものでしたが、こういう後遺症が残ってしまうので、やはり手術を受けるのはよく考えてからの方がいいとは思います。

例えば、こんな本があります。

「乳がんです」と言われたら、あわてて切ってはいけない!

清水市民病院で手術を受けた人のインタビューが載っているのですが、実は清水市民病院では大変なことが起きていたようです。病院もしっかり選ばないといけません。

また、近藤誠医師監修のマンガ

医者を見たら死神と思え

には「検査」と偽って乳房全摘出してしまう、という悪質な医師の例も載っていました。

こういう悪どい医師らがいるから、セカンドオピニオン必須なんですよね…。



「手術」というものは「腫瘍を切り取ることで骨転移や悪液質への進行を防ぐ代わりに後遺症が残る」というメリットもデメリットもあるものであると同時に、病院側が「稼ぐ」手段でもあるわけです。

そのあたり、患者はしっかり考えておかないといけません。



何しろ、手術がもし失敗してしまった場合、被害を被るのは患者側なのですから。

2019年5月22日 (水)

手術を受けます

今回は「論文の読み方」シリーズは一旦お休みにしまして、乳がん治療の途中経過の報告です。



乳房切除術を受けることになりました。



放射線治療後はマーカーも下がり、副作用の皮膚の炎症も治まり、快方に向かっていると思っていたのですが。

経過確認のためのCTで、右乳房だけでなく左乳房にも腫瘍があることが確認されました。左も右同様、リンパ転移してます。

西洋医学的な治療をすると「がんが怒る」「がんが飛ぶ」と、自然派の方々がよく言いますが

右から左へ飛ぶとは…。

がん細胞も、放射線量が高い所から低い所へと避難したんですね。なかなかの賢さです。

というわけで

左の乳房、全摘出です。リンパ郭清もします。右に残った腫瘍も切除します。

どうなることやら。



手術で切ったからと言って寿命が延びるというエビデンスはない、むしろ転移したりがんが増えたりする、という説もあるようですが。

私の場合、他に腫瘍を縮小させる手立てが見つからないので、やむを得ません。苦渋の選択です。

乳房は私の年齢ではもう不要な臓器ですから、切ってもあまり影響はありませんし。

ガン病棟」に乳房切除することになりパニックに陥る少女のエピソードが出てきますが、今更あのようなこだわりもありませんし。むしろ、なくなった方が楽になるかもしれない、ぐらいに考えております。



今回は、おカネに関してはむしろ加入している保険の関係で、がんで放射線治療やら手術やら入院やらしますと、支払う医療費より入ってくる保険金その他の方が高くなり、全体としての収支はプラスになりますw

保険金詐欺?何をおっしゃいますか。約款通りの請求です、詐欺ではありません。

ただ、主婦業すらまともに出来ない「無職」に入院日額出るのは、引き受ける会社側のモラルが問われるかもしれませんねw

あの有名ながん保険の会社です。保険に関しては以前の記事を参照してください。



ちなみに今、病院からです。手術は明日です。

麻酔の際に口からチューブを入れるとかで口腔外科で診察を受けたり、麻酔科医の説明を受けたり。同意書にサインしたり。明日の手術の準備をいろいろと行っております。



手術が無事、成功しますように。

受ける側としては、麻酔を受けたら後は寝ているだけなので、祈ることしか出来ません。

スクナヒコナノミコト様、お守りください。お願いします。


2019年5月21日 (火)

論文の読み方 関連情報編

今まで三回にわたり、乳がん患者の身体活動に関する下記の論文につきまして、どういうことが書かれているかについての解説をしてまいりました。

Physical activity and survival after breast cancer diagnosis.

今回は、この論文の著者や研究グループが置かれた立場などを推察し、行間を読み解くための周辺情報について、これまで私が調べて知り得た情報を書いておきたいと思います。



まずはNurse's Health Study(NHS)を基にした他の論文について。



この論文を読むにあたり、何かの参考になるかも、と思い、近くの図書館に行き、乳がんに関する疫学について書いてある本をあたってみました。

たまたま見つけたのがこの二冊です。

がんの疫学

新版 乳癌 (図説臨床「癌」シリーズ8)

中身を読んでみますと「がんの疫学」p52-53にはこんなことが書かれています。

>脂肪摂取を減らし血中エストロゲン値への影響を調べる介入研究も,いくつか行われている.1999年に13の介入研究をまとめたメタアナリシスが行われているが2),閉経前,閉経後女性とも脂肪摂取を控えることで,有意なエストラジオールの低下が認められた.

>最近の米国のNurses' Health Study(コホート研究)参加者381名を対象とした横断研究では,脂肪摂取と血清エストラジオール値との間にむしろ負の関連が認められている3). Nurses' Health Study では,脂肪摂取と乳がんリスクとの間に負の関連性が示されており,横断研究での脂肪摂取と血清エストラジオールの関連はこの結果と合致する.

>筆者らは閉経前および閉経後女性を対象に横断研究を行い,脂肪摂取とエストロゲン値の関連について評価を行った.閉経前女性(60名)では,月経開始後11日目の採血を行い,脂肪その他の栄養摂取は月経開始後2-10日目にわたる9日間の食事記録から推定した.総脂肪摂取と血清エストロンおよびエストラジオール値との相関係数はそれぞれr= 0.30 (p=0.02), r=0.26(p= 0.05)で,脂肪摂取が高い女性でエストロゲンが高値であった4). 

NHSの研究では、他の研究と違って何故か脂肪摂取と血清エストラジオールの間に「負の相関」がでているそうです。記載されていたその参考文献がこちらになります。

Dietary fat intake and endogenous sex steroid hormone levels in postmenopausal women.

著者欄にご注目ください。なんと、筆頭著者はHolmes MDさんでございました。偶然図書館で見つけた本に載っているとは…Holmesさんなかなか有名なんですねw



そして図説臨床癌シリーズの「乳癌」、1993年版なのですが、こんな表が記載されておりました。

 002-2_1

脂肪摂取と乳がんリスクの相関、他のグループでは正の相関が出ていますが、アメリカ人看護婦を対象とした研究だけは何故か「負の相関」。おそらくこちらの論文かと思われます。

Dietary fat and the risk of breast cancer.

著者はWillett WCさん。あれ?この名前はどこかで見覚えが。確かつい最近どこかで見たような気が…。そういえば…。

さっきの「がんと疫学」に載ってたこの論文

Dietary fat intake and endogenous sex steroid hormone levels in postmenopausal women.

ここの著者欄で見たのでした。Holmesさんの次の次にWillettさんが名前を連ねています。同じグループだったんですね。

他にも、このお二人、こんな論文出してます。乳製品の摂取と乳がんリスクの関連について。

Intake of dairy products, calcium, and vitamin d and risk of breast cancer.

We found no association between intake of dairy products and breast cancer in postmenopausal women. Among premenopausal women, high intake of low-fat dairy foods, especially skim/low-fat milk, was associated with reduced risk of breast cancer. 

閉経後の女性では、乳製品の摂取と乳がんとの間に関連性は見られませんでした。閉経前の女性では、低脂肪乳製品、特にスキムミルク/低脂肪牛乳の高摂取は、乳がんリスクの低下と関連していました。

へぇ~、牛乳や乳製品の摂取と乳がんには相関なし、「乳がんと牛乳」のジェイン・プラント博士の説とは逆の結果ですねぇ。しかもここではカルシウムだのビタミンDだのって話ばかりでIGF-1は無視してます。

でも実はこの論文の発表と同時期に、Holmesさんはこんな論文も書いています。こちらにはIGF-1が出てきます。

Dietary correlates of plasma insulin-like growth factor I and insulin-like growth factor binding protein 3 concentrations.

Higher fat intake, in particular saturated fat, was associated with lower levels of IGFBP-3. We conclude that higher energy, protein, and milk intakes were associated with higher levels of IGF-I. These associations raise the possibility that diet could affect cancer risk through influencing IGF-I level.

より高い脂肪摂取、特に飽和脂肪は、より低いレベルのIGFBP-3と関連していた。我々は、より高いエネルギー、タンパク質、およびミルク摂取がより高レベルのIGF-Iと関連していたと結論します。これらの関係は、食事がIGF-Iレベルに影響を与えることによって癌のリスクに影響を与える可能性を高めています。

乳がんではなくがん全体のリスクが上がるという表現ですね。しかもIGFBP3/IGF-1比が重要、という説を出してます。これは確かにそうなんですが、プラント博士が本を出す前に気付かなかったんでしょうか?

日本語版「乳がんと牛乳」の原著である「Your Life In Your Hands」の出版は2000年です。そしてHolmesさんグループが乳製品と乳がんリスクに相関はない、むしろリスク下がるという上記の論文出したのは2002年。

1980年代から90年代にかけては脂肪と乳がんの相関ばかり書いてたHolmesさん達のグループが2002年に突然、乳製品との関連を調べ始め、結果はプラント博士の説とは違う結果だった、と。

プラント博士の本を否定したがってるとしか思えないんですが。

ちなみに日本ではどうかと言いますと。

内閣府の食品安全委員会では、IGF-1の発がん性は認めた上で「牛乳や乳製品の摂取ではIGF-1濃度は上がらない」というフランス食品環境労働衛生安全庁ANSESの説を採用し、牛乳に発がん性はないとの見解を出しています。これに関してはHolmesさんの、乳製品摂取でIGF-1が上がり脂肪摂取でIGFBP3が下がりがんリスク上がる、という論文の方が正しいような気がします。アメリカでは遺伝子組み換え肥育ホルモンが使われていてそれがIGF-1濃度を上げるっていう説もありますので、フランスと状況が違う可能性はありますが。何しろ内閣府のサイト、ANSESの報告書へのリンクが切れていて、内容が確認できません。困ったもんです。


そして、Nurse's Health Studyという調査そのものについて。

これはどういう調査かといいますと、英語版Wikipediaによれば、経口避妊薬の長期使用の影響を調べるために開始された調査のようです。

当初は医師の奥様に調査を依頼したのですが、医学的知識が不足していたため調査対象が看護師に変更になり、その後は調査内容を経口避妊薬や心血管疾患に限定せず、徐々に拡大していったそうです。

こんな記述もあります。

>The Nurses' Health Study faced controversy based on its recommendations. The study published in 1985 that taking estrogen as a part of Hormone Replacement Therapy would lead to large decreases in risk of heart disease (a third of the risk of those who did not take supplements).[42] However, the Framingham Heart Study fond the opposite result.[43] This controversy caused a 10 year follow up by the Nurses' Health Study which again concluded that risks of CVD were lower in samples currently taking hormones.[43] However, further studies such as the Heart and Estrogen-progestin Replacement Study found that estrogen tablets actually increase risk for heart disease. This was a double-blind trial following an experimental group of women who were given replacement therapy pills and a control group following the same procedure with placebos.[44] Findings from the study displayed a direct relationship between therapy and risk for heart disease, as opposed to the previously stated benefits.[45] This finding largely opposed the published NHS conclusion.

『看護師の健康調査はその推薦に基づいて論争に直面した。1985年に発表されたこの研究は、ホルモン補充療法の一部としてエストロゲンを摂取すると、心疾患のリスクが大幅に減少することを示唆しています(サプリメントを摂取していない人のリスクの3分の1)。[42]しかしながら、Framingham Heart Studyは反対の結果を好んだ。[43]この論争は看護師の健康調査による10年間の追跡調査を引き起こした。これもまた、現在ホルモンを服用しているサンプルでCVDのリスクが低いと結論付けた。[43]しかし、Heart and Estrogen-progestin Replacement Studyなどのさらなる研究では、エストロゲン錠が実際に心臓病のリスクを高めることがわかりました。これは、補充療法ピルを投与された女性の実験群とプラセボを用いた同じ手順に従った対照群を対象とした二重盲検試験でした。[44]この研究の知見は、前述の利点とは対照的に、治療法と心疾患のリスクとの間の直接的な関係を示した。[45]この発見は公表されたNHSの結論に大きく反対した。』

ほほぉ…エストロゲン錠と心疾患との関連について、他の調査、それも二重盲検での試験と違う結果が出てる、と…。

NHSの方は製薬会社に都合のいい結果だったようですね。Holmesさん達の論文も、特定の食品ががんリスクを上げることはないっていう生産者側に都合のいい結果となっていたり、運動はする方がいいというフィットネス業界に都合のいい結果となっていたり。



てことは。

NHSを利用した疫学調査って…。

本当に、信用できるんでしょうか?

もしかして、医療業界側が、論文捏造するための調査だったりするのでは…?????

 

まぁ…NHSについては各自の判断にお任せします。

他の周辺情報として、この論文が出た頃の乳がん治療の変化について、少し記しておきます。


2000年前後、がん関連では様々な薬が世に出ました。

アメリカでは1998年に認可された乳がん初の分子標的薬、ハーセプチン。HER2+タイプの方はお世話になっていると思います。

今では当たり前に使われるハーセプチンですが、この論文は2002年までのデータを使用しています。なので、この論文で「死亡者」とカウントされたHER2+患者の多くは、ハーセプチンではなく他の抗がん剤を使われていた可能性があります。

つまり、2002年までに死亡したHER2+患者は「ハーセプチンに間に合わなかった」方々なのではないでしょうか。2005年頃にはハーセプチン以前の状況は忘れられていたかもしれませんが。



また、2000年代はホルモン治療にアロマターゼ阻害剤が登場します。タモキシフェンより副作用が少ないということで適応が拡大されていきました。実際にはタモキシフェンのような「子宮体がん」のリスクは低いのですが「心疾患」リスクは上がるうえ、関節痛や骨粗鬆症になったりする薬なんですが。

今回の論文にもアロマターゼ阻害剤などの言葉が出てきます。しかし詳しくは書かれていません。当時はアロマターゼ阻害剤がどういうものか、まだ判断がつかなかったのかもしれません。アリミデックスが初期乳がんにも適用されることになるのは2006年、つまりこの論文が出た次の年です。



さて次回は、この辺りの内容も踏まえた上で、総合的な考察を行いたいと思います。



5/30 追記

乳製品摂取と乳がんに関するHolmesさんの論文

Intake of dairy products, calcium, and vitamin d and risk of breast cancer.

これに対する反論は「乳がんと牛乳」p150-152に訳者注として掲載されていました。読み飛ばしておりました。

以下、引用します。

>酪農業界にとっては一大事なので、プラント教授の「乳製品主犯説」(本書の初版は2000年)を撃破するために多くの知識人が動員されたらしい。その際、反対論者が強力に援用したのはハーバード大学の「乳製品と乳がんに関する研究」であった。その理由は、この研究がアメリカ国立衛生研究所(NIH)の資金援助を受けて、ハーバード大学という超一流の研究機関が、8万8691人もの看護師の乳がん発生を16年にわたって追跡した大規模疫学研究(Harvard Nurse's Health Study:HNHS)であり、しかもその成果が、アメリカがん研究所雑誌(Journal of the National Cancer Institute)という一流のがん学術誌に掲載されたからである。

>この論文を批判的に読んでみよう。

>本来のコホート研究(前向き研究)なら、乳製品をとっていないグループととっているグループのあいだで乳がんの発生率を比較するのが筋であるが、この研究では、乳がんの発生した女性が発生前に乳製品をどのぐらい摂取していたかということだけを問題にして、乳がんが発生しなかった8万5209人の食生活はまったく問題にしていない。

>乳がんが発生する前の乳・乳製品の摂取量を3~5段階にわけ、摂取量別に乳がんリスクを計算している。摂取量のもっとも少ない人の乳がんリスクを1.00として、摂取量が増えるとリスクがどうなるかを計算したのである(相対リスクという)。

>この研究で、乳製品の摂取量が多い人、あるいは少ない人というのはどんなひとなのだろうか。一般に成人女性の1日あたりの摂取カロリーは日本でも1800~2000キロカロリーとされているが、驚いたことに、乳がんの発生が多かった牛乳の少量摂取群の女性たちの1日あたりの平均摂取カロリーはたったの1398キロカロリーであった。この人たちの平均体重は記録されていない。身長だけである。身長164センチメートルの看護師が、1日1400キロカロリーの摂取カロリーでまともな看護労働ができるだろうか。しかも、この人たちの脂肪のエネルギー比(脂肪カロリーが総摂取カロリーに占める割合)は47.1パーセントである。総摂取エネルギーのほぼ半分を脂肪から摂取していることになる。こんなにたくさんの脂肪をとっている人が乳がんになりやすいことは肯ける。脂肪摂取量がかくも多い人には肥満が多いからである。しかし、体重の記録がない。1日にわずか1400キロカロリーの人が肥満であるわけはない。この論文は矛盾に満ちている!

>この研究が採用した食品接種頻度調査には大きな欠陥がある。調査票に記載されている食品の摂取量と頻度を自己記入して郵送するという方式であるが、回答者が食品の摂取頻度を正確に記入しているという保証はまったくない。

だそうです。

「この論文は矛盾に満ちている!」

まさに、この一文に尽きますね。

2019年4月15日 (月)

論文の読み方 レファレンス編

今回も下記の論文の内容についての記事です。

Physical Activity and Survival After Breast Cancer Diagnosis  

『乳がん診断後の身体活動と生存』

前々回はAbstractについて、前回は本文の内容について、それぞれ解説をいたしました。

お読みいただければ、論文の大まかな内容は把握できるかと思います。



しかし、論文に書かれている内容は、論文本体のみならずその周辺の情報も考慮して解釈せねばなりません。

前回の最後にはArticle Information「記事情報」欄の記述についてご紹介しました。

今回はそのArticle Informationの後の、論文の一番最後に書かれているReferencesの内容について解説したいと思います。

他にも論文に使われたNHS(Nurse's Health Study)とはどういう調査か? といったことや、著者個人及びこの研究チームの他の論文などの実績、論文が出された年代周辺の乳がん治療の動きなども考慮する必要があるのですが、それらの情報や考察などはまた別途記事にします。

論文一つでこんなに幾つもの記事が書けるとは思いもよりませんでした…。はぁ。疲れる…。

気を取り直してReferences「参考文献」。

論文の文中には随所に小さな数字が書かれておりますが、その部分の内容は該当する番号の文献を参考に書いている、という意味です。そしてそれらの文献は論文末尾にまとめて書かれます。それがReferences「参考文献」です。

これらの文献に果たして何が書かれていて、どの部分を参考にしているのかは論文を読み解く上でかなり重要です。しっかり読みこんでみなければ、著者らの考え方が分かりません。中には参考文献と全く同じようなことを書いただけのパクリ論文みたいなものもあったりしますし、参考文献とは明らかに違う結果が出てもそれが何故か分からないという意味不明な論文や、よくわからない結果となってしまったが明らかにするにはこういう調査が必要だろう、などの誤魔化しがある論文はよくあります。

この論文の場合はどうでしょうか。

この論文の参考文献は58本記載されています。ネット上でフルテキスト確認できるもの、登録その他が必要なもの、紙の雑誌からコピーするほかないものなどいろいろありましたが、出来るだけ集めて確認してみました。

この中で重要なのは5,7,31,40。特に40は全文を転載したいぐらい。ネットでフルテキスト読めないのが残念です。

1-3は乳がん診断後のQOLに関する論文。

1はリハビリについて、2は化学療法の予後因子について、3は生存率とQOL測定値の相関について。しかしこの論文ではQOLはあまり重視してないので、ここら辺は興味があったら読む程度でいいでしょう。

4についてはこの著者は『WHOが活動的な女性の乳癌発症リスクが20〜40%減少すると推定した』と書いてますが、元の文献では『癌の約4分の1から3分の1が過剰な体重および身体的不活発の原因であると推定した』つまり身体的な活動だけでなく「過体重」を問題視しているのです。ですが、この著者は無視してます。 

重要なのが5-7

この論文では「身体活動量が増えればエストロゲンレベルが下がる」と書いてあり、参考文献として5,6,7と3本の論文が表示されています。

5は無月経アスリートのホルモンレベルを、正常アスリートや殆ど運動しない女性達と比較したもの。

6大学生28人を対象に、一日4-10マイル(6.4-16.1km) 走らせ、月経やホルモンレベルがどうなるか調べたもの。

7乳がんの過体重および肥満の女性は、痩せてる女性と比較して生存率が劣るので肥満とホルモンの関連を調べてみた、という内容。

えーと。

これらの内容は「運動しすぎると女性ホルモンのレベルが下がって無月経になることがある(ならないこともある)」(5,6)「肥満女性は痩せてる女性よりエストラジオール濃度が高い」(7)という話であって、「運動すればエストロゲンレベルが下がる」とは微妙に違うんですよね…。

しかも5の文献は、月経に異常があるアスリートとそうでないアスリートの違いは「摂取エネルギー量」、つまり無月経アスリートは正常アスリートよりも摂取エネルギーが少ないので、更なる介入調査が必要、と締めくくられています。その後の調査では、無月経になるかどうかは摂取エネルギーとのバランスによるという結果が出ているようです。

ちなみに今回の論文のデータでは9-14.9MET-h/wkのカテゴリの方々が死亡率も再発率も一番低かったのですが、そのカテゴリでの摂取エネルギー(Intake)が一番多くなってました。おかしいですね、これではエストロゲンレベルは下がらないはず。しかしこの著者は何らコメントしていません。

7は性ホルモン濃度は体重と相関がある、性ホルモン結合グロブリン濃度は体重と逆相関がある、という内容です。もしエストロゲンレベルが低い方がリスク下がるなら、体重は少なければ少ない方がリスク下がるはずですが、他の参考文献(40)ではBMI22-25あたりの「標準的な体重の女性」が一番乳がんリスクが低いと出ているのです。このあたりの齟齬に関してもコメントなし。

8-9の番号の所には『乳がんと物理的にアクティブな女性の間で低エストロゲンのレベルは、潜在的に、生存率を向上させることができます。 』とありますが、

8はエストロン(E1)とエストラジオール(E2)の比率やエストロゲンレベルとの再発までの期間の相関の話であって、「物理的にアクティブ」とは関連ありません。

9は手術前のエストロゲン値の話。エストロゲン値低い方が生存率が高いというデータではありますが、手術を受けた後しばらく運動できない状態が続いた後での再発率等も手術前のエストロゲン値と関連があった、という話ですから「物理的にアクティブ」とは関連ありません。

10は、化学療法を受けた乳がん患者の体重増加と身体活動の欠如との関連。特にサルコペニック肥満について。

11,12は、体重増加は予後が良くないという内容。

13-22は診断時の過体重、診断後の過体重と体重増加がいかにリスクを上げるか、という内容。

私の場合、該当しないんですけどね…。乳がん発覚時から種々の治療を経てもなお乳がんが進行してる今まで、BMI25超えたことないんですよ。BMI18に下がったこともあるぐらいで。小林麻央さんも激痩せしてましたしね。

「体重増えるのは良くない」と繰り返し、そのためには「運動が良い」と刷り込み、「体重少なければいいのね!」と思い込ませることで「激しい運動で痩せすぎる」方向へ向かわせ、結果として「リスク上がる方」へ誘導してる、みたいな印象受けるのは私だけでしょうか?私自身、一時期はその流れに乗っかってしまいまして、それを反省している所なんですが。

23身体活動と食事の摂取量およびそれらの体重との関係を評価したコホート研究のメタアナリシスにより、低レベルの身体活動が摂取エネルギー過多よりも体重増加や肥満のリスク増加と関連している、という内容。コホート研究での摂取エネルギー量の多くは自己申告ですから、あまり信頼できませんけどね。

24Rohanら の論文は、フルテキストがまだ見つかりません。pubmedでAbstractを読む限りでは、死亡率は身体活動量とも個々のレクリエーションとも相関はない、という論文らしいのですが。


25,26,27は調査に対し無回答の患者のデータをNational Death Indexで検索し、死因コード等から患者の情報を把握するための方法について。乳がん患者の死亡率を死因コードから確定するのは難しいようです。ただ、NHSでは対象者の医療情報を得る許可を得ているので、これらの方法で死亡者の98%を確定できたとのことです。ちなみに27はタイトルと著者などしか登録されておらず、内容については未確認です。

28は今回の調査での再発率が妥当なものかどうかの比較のため別な調査と比較したそうですが、その調査の内容です。放射線治療の是非を調べるための調査のようです。 

29は身体活動と乳がんリスクについてのCollege Alumni Health Studyという、ペンシルベニア大学卒業生対象の調査の結果を解析した論文。閉経前の女性は身体活動量(カロリー換算)と乳がんリスクに関連はなかった、という内容。50歳未満では身体活動量が高い(1000kcal/wk超)と相対リスクが上がる(1.83,CI 0.77-4.31 P trend=0.14 )、BMI<22の女性では500-999kcal/wkで相対リスクが1.22(1.22 CI 0.66-2.27 P trend=0.41)、他は相対リスク1未満。1998年に出されたものです。

30はMETスコアについての論文。どのスポーツはどのぐらいのMET数か、という一覧が載っています。

31は更年期女性の股関節骨折を予防するための運動について。ウォーキングが勧められています。あれ?運動でエストロゲンレベルが下がるなら、ウォーキングでもエストロゲン下がるわけで、そうしたら更年期障害である骨粗鬆症は、予防するどころか進行してしまうのでは…???

を見ると、閉経後ホルモン(おそらくエストロゲン剤)使用者は最初からリスクが低い。非使用者は運動強度を上げていくとリスクが下がり、ホルモン使用者と同じ位になる。コメント欄には、『脂肪組織のアンドロゲンのエストロゲンへの転換 』とあります。活動的な女性はエストロゲンの服用者と同じぐらい股関節骨折から保護される、とも書いてあります。エストロゲンが脚周りで発生することが重要なのかな…???

このあたりからデータの信頼性について書かれています。『前年度全体の活動を評価する活動アンケートの能力は、151人の女性のサンプルでテストされました。』 『この年齢の女性の主な活動である歩行については、個人内相関は0.70(95%CI、0.49-0.84)でした。 』これをどう読むか?参考文献、いろいろ紹介されています。

32、これ面白いですね。自己申告した活動量の再現性。読んでみたいんですが、フルテキストは登録制なので読めずにおります。何しろテストと再テストであまり変わらない数字だから再現性は保たれているという結論なんですが、数字自体が0.79と0.83とか、0.52と0.55とかなので、何と比較しての0.79、0.83なのか、詳しい方法を読まないと分からないのですよ。余裕があったら登録してみますが、疫学の雑誌なんですよね。乳がん関連の疫学、怪しいのが多いからなぁ…。(このあたり後述します)


33、乳がん関連の疫学で怪しいのって、こういうのです。『診断後の食事の多変量解析では、脂肪摂取量と死亡率の間に明らかな関連性は見られませんでした。』とありますが、他の研究では脂肪摂取量との相関が認められてたりするんですよ。(それも複数。詳細は別途記事の予定)
。脂肪摂取量によるエストロゲン増加との関連が指摘されています。誰だよこんなの書いたのは…!と思ったら筆頭著者がHolmes MD、なんと今回読んでるPhysical Activity and Survival After Breast Cancer Diagnosis の著者でもあるHolmesさんではないですかw しかもまたしてもNHSですwww

34は食事量の再現性について。これも面白そう、読んでみたいけどフルテキスト見つかりません。

35これはアルコール摂取量の再現性について。32、34と同じStampfer MJ 先生のグループの論文です。いろいろ調べてますね。

36はウォーキングが心筋梗塞、冠状動脈疾患などの心疾患のリスクを下げるという内容。 ウォーキングの万能感すごい。

コメント欄には『過体重の閉経後の女性における身体活動の無作為化試験では、アンドロゲンおよびエストロゲンの血清レベルの低下が示されました。』とありますが。

37は閉経後のホルモン療法をしない過体重の女性のアンドロゲン濃度が、運動でどう変わるかを調べた調査。45分週5日の中/強程度の運動を含む週171分の運動により、有意差とは言えない程度減少したとのこと。この運動量でこの結果では…。それにアンドロゲンは筋肉の再生にも使われますが、エストロゲンにも変化します。減った分はどう使われたのか、も重要なのでは?

同じ著者による38はエストロゲン濃度について。

運動者は、コントロールの変化なしまたは濃度の増加に対して、それぞれ、3.8、7.7、および8.2%のエストロン、エストラジオール、および遊離エストラジオールの減少を経験した(P= 0.03、0.07、0.02)。12か月時点で、効果の方向は同じままでしたが、差異はもはや統計的に有意ではありませんでした。効果は、体脂肪を失った女性に限定されていました。

要するに運動で体脂肪が減ればエストロゲンも減りますよ、という内容。同じ調査で、アンドロゲン(アンドロステンジオン、テストステロン)とエストロゲン(エストロン、エストラジオール)両方測定して、論文は2本に分けたみたいです。

面白いのは、対照群が「週に45分のストレッチ、それ以外の運動をしない」人達であること。この方々のエストラジオール濃度は殆ど変わってません(-0.6%)w しかも、エストロンは増えてます。

かといって運動した群でも若干下がってはいるものの、有意差があるわけでもなく。

これらの参考文献を挙げておいて『過体重の閉経後の女性における身体活動の無作為化試験では、アンドロゲンおよびエストロゲンの血清レベルの低下が示されました。』と書いてしまうHolmesさん。これはもう、確信犯としか…。

39はドイツの文献。まず最初に『身体活動乳がん リスクとの間の認められた逆の関係の重要な側面はまだ議論中です。』とあります。ドイツでは運動で乳がんリスクが上がる、と言われているようですね。他の幾つかの論文にもありました。しかし『活動の種類による分析は、最高レベルのサイクリング活動を報告した女性に対する有意な保護効果を明らかにしました(調整オッズ比= 0.66、95%信頼区間:0.45、0.97)。 』なのでまだ調査が必要、とのこと。フルテキスト見つからないので詳細は分かりませんが、他の運動では保護効果が認められていないようですね。

そして『身体活動はまた、インスリン抵抗性の急性および慢性の改善ならびに高インスリン血症の減少を通じて生存を改善するかもしれない。ホルモンレベルを抑制するためのアロマターゼ阻害剤の使用は、より人気になると私たちが観察された関連は、時間の経過とともに変化することがあります。

ここで40が参考文献として挙げられていますが。ここに書いてあるのは驚くべき内容。

空腹時インスリンレベルが高い乳がん患者は再発までの期間や死亡の相対リスクが高い。えっ?エストロゲンじゃないの?

エストラジオール濃度は、再発とも死亡とも相関がない!えっ???

フルテキストを医学系の図書館でコピーしてきました。空腹時インスリン、IGF-1、IGF-2、エストラジオール、BMIと乳がん再発までの期間の長さ、死亡率から相対リスクを算出したもの。

出ましたIGF-1!

この結論に至ったデータの内容はと申しますと

 001-2
 

ご覧ください。この表は、各測定値を上から順に人数を揃えて4つのグループに分け、どのグループの相対リスクが高いかを比較しています。

まず、空腹時インスリン。高い群は明らかにリスク上がってます。相関ありです。このあたり考察編で解説する予定です。

IGF-1。有意とは言えないレベルですが、死亡率の相対リスクがわずかに上がり、再発の相対リスクがそれより高く上がっています。

これ、今回の論文の、週9MET以上のデータと重なりますね。

そしてエストラジオールレベルは再発、死亡リスクと相関はない、という結果。むしろ高い人の方がリスク若干下がってる。

どういうこと?絶対量ではなくプロゲステロンとのバランスが問題なのでしょうか。私が飲んでたアロマターゼ阻害剤は…いったい…???

BMIとの相関は下のグラフの通り。
  002-2
 
インスリン、IGF-1についての詳細は後ほど別記事にて。

41は乳がん診断後の治療で身体活動量がどう変わるか。大幅に減少するそうです。

42は化学療法中は安静時代謝率が低下するという内容。食欲が落ちるので体重はそれほど変わらないけど筋肉も落ちるので安静時代謝が落ち、治療が終わっても戻らない、という内容のようです。

要するに化学療法で筋肉落ちるから、疲労感があっても運動しなさいね、ということのようです。なら化学療法しなくていいのに…。ってか、化学療法中に運動すると血行良くなって薬の効果が高まるので、筋肉落ちやすいんですけど(経験者は語る)。がん利権とフィットネス利権、繋がってるようですね。

43は前回も紹介しました。『より高い病期と診断された女性は、in situ乳がんと診断された女性と比較して総身体活動に15%多く費やされた時間を報告しました(p = 0.031)(表2b)。この総身体活動量の増加は、家庭活動の違いによるものと思われます。

household「家事」が乳がんのステージを上げてしまったのだとしたらその原因はストレスか、或いは手を動かすことによるホルモン分泌の可能性があるのではないでしょうか。胸周辺の筋肉を動かすことで成長ホルモンやIGF-1、アンドロゲンからのエストロゲン分泌が盛んになった結果かと。この文献にはそんな考察は一切書いてありませんが。

44のタイトルは『運動、上気道感染症、そして免疫システム。』強度の高い運動は、上気道感染症リスクが上がるそうです。まったく運動しない場合よりも、運動しすぎる方がリスクが上がるのだとか。このあたり、今回の論文にも影響ありそうですが、Holmesさんは否定してますね。
  003-2

454647は高齢者の運動はいい影響を与えるんだから、もっと運動しなさいという内容。フルテキスト読んでないんですが、Abstractからは良いことばかり書いてあって、転倒による骨折のリスクなどはあまり書かれていないような印象を受けます。ちなみに47には『1日に30分の中程度の強度の運動をしている人は、もっと運動すればさらなる健康上の利益を達成する可能性があります。』と書かれていますが、この研究はNIH(アメリカ保健福祉省国立衛生研究所)の助成金を受けています。


48糖尿病女性の間で身体活動心血管疾患のリスクを減少させるかどうかという研究。これも40の文献と同様、4つの群に分けて相対リスクを算出してます。何故Holmesさんは四分割ではなく二分割にしたか?それが問題。 

49身体活動と総脳卒中および脳卒中サブタイプのリスクとの関連性を調べた研究。48と同じ著者です。結果も同様、長時間または早く歩いた方がリスクが下がるという結果。 

50はNHSからの身体活動と乳がんリスクの関連調査。『身体活動の増加は、主に循環卵巣ホルモンへの累積生涯曝露を減らすことによって、乳がんを予防すると仮定されています。しかし、疫学的所見は矛盾しており、身体活動を定量化するための最善の方法についてはコンセンサスがありません。』とあります。活動量はMETではなく時間です。結果は、週7時間以上で相対リスクは0.82(95%信頼区間、0.70-0.97、P = 0.004)。 これもNIHからの助成金の支給を受けてますね。

51はNHSからの余暇活動、BMIと結腸癌リスクの関連調査。余暇活動が多い、BMIが低いとリスクが下がるのだそう。NIHからの助成金支給あり。

52Health Professionals Follow-up Study健康専門家追跡調査 、HPFS)とNHSからの身長、BMI、身体活動量と膵臓がんリスクの関連調査。この論文に似ています。NIHからの助成金支給あり。

53はNHSからの身体活動と不妊症の関連調査。DISCUSSIONにこう書かれています。『長期間の身体活動習慣は、持続的な体重増加、インスリン抵抗性の増加、および生殖能力障害を含む症候群を予防する可能性がある。我々のデータは、競争力のある運動トレーニングを除いて、女性が妊娠しようと試みる前の数年間の活発な活動の習慣は出生率を減少させず、そしておそらく増強するかもしれないことを示唆している。

「競争力のある運動トレーニングを除いて」が重要なポイントですね。ちなみにこれもNIHからの助成金支給あり。

54はNHSからの身体活動と胆石の関連調査。NIHからの助成金支給あり。

55はNHSからの身体活動と認知症の関連調査。NIHからの助成金支給あり。

56,57はNHSからの身体活動と総死亡率の関連調査。NIHからの助成金支給あり。

58はこれらの論文を基にした年代別の身体活動ガイドライン。CDC(アメリカ保健福祉省疾病管理予防センター)のサイトです。

どうも、NIHは身体活動と疾病に関して、たくさんの論文書かせてるようですね。そしてその多くにNHSが使われている。そしてCDCはそれを基に身体活動ガイドラインを定める。

しかし。今回のこの論文は、かなり、「こじつけ」が強いような気がしました。

もしかして他の論文もそうなんでしょうか?だとしたら…???


とりあえず次回は、参考文献からの情報を基に、この論文のデータを私なりに読み解いてみたいと思います。

これからまた治療に入るかもしれませんので、公開まで時間がかかるかもしれません。ご了承ください。



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Sage's Link List

  • がん対策推進基本計画
    厚生労働省が平成24年に発表したもの。これによると、治療せずに様子を見る「経過観察」はしちゃダメ!なのかな?なんで?w
  • 国立がん研究センター
    食事療法については何も載っていません。アルコール摂取を控えましょう、肥満に注意しましょう、ぐらい。

Sage's Music List

  • サラ・ブライトマン: 神々のシンフォニー
    日本盤のみボーナストラック追加。
  • 3/8にリマスター発売。
    Pink Floyd: 狂気
    まさに「狂気の沙汰」ですね。
  • Walk This Way
    RUN D.M.C.:
    エアロスミスとのコラボ。
  • Somewhere I Belong
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    あるプログラムでの使用曲。
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