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Sage's List

2019年3月18日 (月)

論文の読み方 Abstract編

前回、運動と乳がんの関係について、下記の論文をご紹介しました。

Physical Activity and Survival After Breast Cancer Diagnosis

この論文には、一体どんなことが書かれているのでしょうか。

論文の内容が理解できないと、間違った解釈で引用されたりした場合に、それを見抜くことが出来ませんよね。(たまにいるんです、論文の内容を明らかに曲解して紹介してる人が)

というわけで

今回は、この論文には何が書かれているか?ということを説明しつつ、そもそも科学系の学術論文とはどういうものか、どこに注目し、どう解釈すべきなのか?そのあたりについて書いてみたいと思います。

私、医学関連は素人ですが、これでも大学では理系の研究室に所属しておりましたので。



さて。上記の論文を見てみましょう。PCの方はリンクを別のタブまたはウィンドウで開けてみて下さい。スマホの方も、とりあえず目を通してみましょう。

Pubmedでこの論文を検索しますと、Abstractのみが表示されます。


Abstractとは「要旨」「要約」などのことです。これを読めば大まかな内容は把握できます。

もっと詳しく知りたい場合は画面右上の方に「full text link」が表示されますので、そちらにアクセスすれば全文読むことが出来ます。

※PubMed(パブメド)は生命科学や生物医学に関する参考文献や要約を掲載するMEDLINEなどへの無料検索エンジンです。 アメリカ国立衛生研究所のアメリカ国立医学図書館(NLM)が情報検索Entrezシステムの一部としてデータベースを運用しているそうです。

「full text link」が表示されない論文もあります。また、「full text link」のリンク先は全てフリーで見れるとは限りません。無料でも登録が必要な場合もありますし、有料の場合もあります。

医学部のある大学の図書館では、レファレンスカウンターで調べてもらい、印刷してもらうことも可能な場合があります。一般人でも使える大学図書館もありますし、公立図書館でも検索依頼を受け付けてくれる場合もあります。読みたい論文のある方は、お近くの図書館へお問い合わせを。



では、論文の中身を読んでみましょう。

この論文のAbstractは、「Context」「Objective」「Design, Setting, and Participants」「Main Outcome Measure」「Results」「Conclusions」に分かれています。

まずContext。これは「文脈」の意味ですが、論文の場合「背景」と訳されます。Backgroundという言葉が使われることもあります。現状はこうなので、我々はこの点を調べてみた、というような内容が書かれることが多いです。

>Physical activity has been shown to decrease the incidence of breast cancer, but the effect on recurrence or survival after a breast cancer diagnosis is not known.

Google翻訳しますと、(以下、『』内はGoogle翻訳結果)

『身体活動は乳がんの発生率を低下させることが示されていますが、乳がんの診断後の再発または生存への影響は知られていません。』

身体活動は乳がんの発生率を「上げる」という論文も「下げる」という論文もあるのですが、ここには「下げる」と書かれています。

ということは、彼らは「身体活動は乳がんの発生率を低下させる」方の論文を支持した上で調査研究し、この論文を書いた、ということです。短い文章ですが、これだけで筆者らの考え方や、どういう説を支持しているのかが分かるわけです。

次にObjective。これは論文においては「目標」ではなく「目的」です。

>To determine whether physical activity among women with breast cancer decreases their risk of death from breast cancer compared with more sedentary women.


『乳がん女性の身体活動が、座りがちな女性と比較して乳がんによる死亡リスクを減少させるかどうかを判定すること。』

sedentaryを「座りがちな」と訳してくれました。和製英語の「デスクワーク」を英語では”sedentary job”と表現したりするそうです。

乳がん患者のことですから、運動してない場合でも「デスクワークしてる」というよりは「安静にしてる」というイメージですけどね。

次にDesign, Setting, and Participants。直訳すると「設計、配置、参加者」となります。ここは英語でもMethodなどいろいろな単語が出てきますが、「手法」「実験方法」など、実験や調査に関する具体的な方法の記述をするところです。

この論文は大規模なアンケート調査の結果を解析していますので、その調査はどのようなものだったか、対象者の属性や人数、調査対象期間、調査内容などが書かれています。

>Prospective observational study based on responses from 2987 female registered nurses in the Nurses’ Health Study who were diagnosed with stage I, II, or III breast cancer between 1984 and 1998 and who were followed up until death or June 2002, whichever came first.

アメリカで1984年から1998年の間にステージI、II、またはIIIの乳がんと診断された看護師さん達の追跡調査(看護師健康調査 Nurse's Health Study,以下NHSと記します)を元にしたものだそうです。診断から2002年6月まで、その前に亡くなられた方は亡くなった時まで。

Main Outcome Measureは「主な調査結果」。今回はアンケート調査なので、そのデータ解析で何を得たか、が書かれています。

>Breast cancer mortality risk according to physical activity category (<3, 3-8.9, 9-14.9, 15-23.9, or ≥24 metabolic equivalent task [MET] hours per week).

『身体活動のカテゴリーによる乳がん死亡リスク(3、3〜8.9、9〜14.9、15〜23.9、または24以上の代謝同等課題[MET] 1週間あたりの時間)。』

死亡リスクを身体活動の量(MET)毎に5段階に分けて計算してみました、ということです。

どんな数値を得られたか、次のResult「結果」を見てみましょう。

>Compared with women who engaged in less than 3 MET-hours per week of physical activity, the adjusted relative risk (RR) of death from breast cancer was 0.80 (95% confidence interval [CI], 0.60-1.06) for 3 to 8.9 MET-hours per week; 0.50 (95% CI, 0.31-0.82) for 9 to 14.9 MET-hours per week; 0.56 (95% CI, 0.38-0.84) for 15 to 23.9 MET-hours per week; and 0.60 (95% CI, 0.40-0.89) for 24 or more MET-hours per week (P for trend = .004).

『週に3 MET時間未満の身体活動に従事している女性と比較して、乳がんによる死亡の調整相対リスク(RR)は3〜8.9で0.80(95%信頼区間[CI]、0.60〜1.06)であった。 1週間あたりのMET時間 1週間あたり9から14.9 MET - 時間で0.50(95%CI、0.31-0.82)。毎週15から23.9 MET時間の間0.56(95%CI、0.38-0.84)。1週間に24時間以上のMET時間で0.60(95%CI、0.40-0.89)(傾向に対するP = 0.004)。』

乳がん死亡率を運動量(MET)で比較すると

0-3METでは 1.0(これが基準)

3-9METでは 0.80

9-15METでは 0.50

15-24METでは 0.56

24-METでは 0.60

であった、と。

しかしこの数字、「適正な運動量だと死亡率が下がるけど、上げすぎると死亡リスクも上がる」印象ですが。

>Three MET-hours is equivalent to walking at average pace of 2 to 2.9 mph for 1 hour.

『3 MET時間は、1時間に平均時速2〜2.9マイルで歩くことに相当します。』

1マイルは1.6kmなので、3.2-4.64km/h。普通に歩くぐらいですね。

> The benefit of physical activity was particularly apparent among women with hormone-responsive tumors. The RR of breast cancer death for women with hormone-responsive tumors who engaged in 9 or more MET-hours per week of activity compared with women with hormone-responsive tumors who engaged in less than 9 MET-hours per week was 0.50 (95% CI, 0.34-0.74).

『身体活動の利点は、ホルモン反応性腫瘍を持つ女性の間で特に明白でした。週9 MET時間未満のホルモン反応性腫瘍を有する女性と比較して、週9 MET時間以上の活性を有するホルモン反応性腫瘍を有する女性の乳がん死亡のRRは0.50(95%)であった。 C.I。、0.34〜0.74)。』

えっ?ER+のみ対象?HER2+やトリプルネガティブは?

しかも私、ER+なのに運動は効かなかったけど…。

> Compared with women who engaged in less than 3 MET-hours per week of activity, the absolute unadjusted mortality risk reduction was 6% at 10 years for women who engaged in 9 or more MET-hours per week.

『1週間当たり3 MET時間未満の活動に従事していた女性と比較して、未調整の死亡率リスクの絶対減少率は、10年間で1週間当たり9 MET時間以上に従事している女性で6%でした。』

死亡リスクが「6%」下がる…まぁ、そんなもんでしょう。


Conclusions「結論」にはこうあります。

>Physical activity after a breast cancer diagnosis may reduce the risk of death from this disease. The greatest benefit occurred in women who performed the equivalent of walking 3 to 5 hours per week at an average pace, with little evidence of a correlation between increased benefit and greater energy expenditure. Women with breast cancer who follow US physical activity recommendations may improve their survival.

『乳癌診断後の身体活動は、この疾患による死亡のリスクを減らす可能性があります。最大の利益は、平均的なペースで週に3〜5時間歩くことと同等の行動をとった女性に生じ、利益の増加とより大きなエネルギー消費の間には相関関係の証拠はほとんどない。米国の身体活動に関する推奨事項に従っている乳がんの女性は、生存期間を延ばすことができます。』

ふーむ。3〜5時間の歩行が一番メリットがある、と。しかし強度上げたからといって、よりメリットがあるわけではない、と。

いや、強度上げると死亡率上がってるけど。そこはスルー?あと、再発率とかは?調べてないのかな?



Abstractはここまでです。若干の疑問がありますので、更なる情報をフルテキストの方を読んで探っていきたいと思います。

印刷して読みたい方はpdfファイルをどうぞ。



長くなりましたので、本文の方はまた後程。

 

2017年4月25日 (火)

がん関連本書評:子供向けの本

私は地域で読み聞かせボランティアとして活動をしており、その一環として民話の再話などもしております。

具体的には民話紙芝居を作成しているのですが、その時に注意していることは、

・絵に関しては、時代考証を徹底的に調べ、適正でないものは極力排除する。(あえて使う場合もあるが限定的)
・脚本に関しても、方言や身分による違い、風刺的意味などを調べて、適正なものを使う。

これが私の方針です。

しかし

子供だったら何を教えてもウソかホントか分からないだろう、とばかりに、ウソを書いたり、誇張・矮小表現を平気で使ったり、大切なことなのにあえて書かなかったり、という方々もいらっしゃいます。

例えばこのシリーズ本。

まんが社会見学シリーズ
https://www.kodansha-bc.com/cinfo/manga-publication-page

香だの化学繊維だのガムだのチョコレートだの…もっと重要なことがあるだろう!と言いたくなるようなこれらの本。

学校に寄贈されています。

ということは

「スポンサー」がいるんです。

さて?

まぁ、だいたい察しはつきますね。

例えばコレ。

大研究!知っておこう!がんのこと
https://www.kodansha-bc.com/cinfo/manga-publication/aflac_bc_2015/

はい、URLの最後の部分見ただけでお分かりですね。

「aflac_bc_2015」ええ、例のあの保険会社が協力しています。

まずは、ご覧になってみてください。ネット上で、フリーで閲覧可能なので。


主人公は小学生の男の子。

そのいとこに保険会社の営業社員。おじいちゃんが肺がんで亡くなったのをきっかけにがんに関心を持ち、この会社に入社したという設定。

主人公のお父さんが大腸がんになったので、いとこにがん保険の給付金の支払いを頼むついでにがんについて説明してもらうことに。

しかしその説明が。

・まずは「がんが増えたのは高齢化社会になったから」という説明
・このお父さんが40代ですが、というツッコミでようやく「昔とは生活習慣が変わったから」(最初からそう説明すべき)
・がんのリスク要因として出てくるのは「欧米型の食事で脂肪を摂りすぎてる」(大腸がんのリスクは脂肪よりもむしろ動物性たんぱく質の方が高いことを無視)
・タバコを必要以上に悪く描いている印象(喫煙率が低下しても肺がん、咽頭がん罹患者などが全く減らない矛盾を無視)

そしてお父さんの大腸がん治療。

・当然治療法は「三大療法」のみ記載(コラムには最先端のがん治療としてワクチンも載っている。まさかHPV?)
・大腸がんに関して「食事制限は一切なし」(砂糖やブドウ糖などの糖分、動物性たんぱく質などを制限して野菜多めにすべきでは?)
・大腸がんステージⅢなのに人工肛門になる可能性など一切記載なし
・がんをやっつけるゲン担ぎで「カニさんウィンナー」(加工肉には大腸がんリスク有)
・お医者さんは「正解を知っている」(ならば何故がん死亡者数が減らないのか?)
・後半ようやく「野菜・果物多め」が出てくるがやはり糖分・肉類に関する記述はない

術前放射線治療でがんを小さくし、腹腔鏡手術で切除、再発防止の抗がん剤治療。

三大療法フルコースですねw

しかし放射線治療に関しては副作用の記載が少々ありますが、手術の痛み、抗がん剤の副作用については一切記載なし。

がんの治療は長期間かかるけど、QOL(生活の質)はそれほど下がらないという印象付け。

お父さんは術前療法から長期休暇を取得。術後も定期的に通院するけど、職場では退職を余儀なくされたり上司に嫌味を言われたりすることはなかった模様。

そして主人公が「カニさんウィンナー」を食べる絵で終わり。


次はこの「主人公」ががんになる番、ってことですね。


やれやれ…こんな本が学校図書館に寄贈されているんですよ。

恐ろしいですね。


こんなのを野放しにしてはいけない、と、私自身何か出来ないかと、病児保育や学童保育などを考えたりしましたが。

いかんせん、抗がん剤の薬害で弱りきった身体では、パワフルな子供達の面倒を見ることは出来ません。

図書館に「この本を置くな!」などとクレームをつけたりする行為は、「言論の自由」の精神に反しますので行いたくありません。

しかしやっぱり何とかしたい。

同じように何とかしたい、何とかしなければ、という方は、子供達に向けて、或いは子供達の親の世代に向けての情報発信を考えてみてください。

よろしくお願いします。

2014年8月19日 (火)

がん関連本書評

こういう本があります。

食べものだけで余命3か月のガンが消えた 全身末期ガンから生還した、私のオーガニック薬膳ライフ 高遠 智子

http://www.amazon.co.jp/%E9%A3%9F%E3%81%B9%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%A7%E4%BD%99%E5%91%BD3%E3%81%8B%E6%9C%88%E3%81%AE%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%81%8C%E6%B6%88%E3%81%88%E3%81%9F-%E5%85%A8%E8%BA%AB%E6%9C%AB%E6%9C%9F%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%81%8B%E3%82%89%E7%94%9F%E9%82%84%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%81%E7%A7%81%E3%81%AE%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E8%96%AC%E8%86%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95-%E9%AB%98%E9%81%A0-%E6%99%BA%E5%AD%90/dp/4344025822/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1408417403&sr=8-1&keywords=%E9%A3%9F%E3%81%B9%E7%89%A9%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%A7%E4%BD%99%E5%91%BD3%E3%83%B6%E6%9C%88%E3%81%AE%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%81%8C%E6%B6%88%E3%81%88%E3%81%9F

これ、Amazonのレビュー欄ではかなり酷評されています。

あんまり可哀想なので、買って読んでみました。

レビュー通りの、怪しい本でした。

がん闘病の記録が殆ど無い。

レシピとがん治療の関係が不明、何ががん細胞のもととなり、何が免疫を高めるのか。

それが一切不明なまま、ジャージー牛乳などを薦めてらっしゃいます。


最初は、何故この人はこんな本を出したんだろう?不思議に思いました。

著者プロフィール読んで納得しました。

「萬有製薬(現MSD株式会社)に勤務中、28歳で末期の卵巣ガンにより余命半年の宣告を受ける。…」

なるほどね。製薬会社がらみか。わざわざ社名を載せるということは、何らかの意味があるのでしょう。

例えば、こういう医師の所に、抗がん剤を拒否して食事療法をしたい、というがん患者がいたとします。

http://d.hatena.ne.jp/NATROM/

すると、この医師はこう言います。

「食事療法?そんなの意味ないです。これ(高遠智子さんの本)読んでみてください。こんなんで治ると思います?Amazonの書評見てみて下さいよ、酷評されてますから。」

患者は本を買って読みます。書評も読みます。

すると、やはり食事療法には根拠はないのか、まやかしなのかとショックを受け、手術や抗がん剤や放射線での治療を受け入れるわけです。

なるほどね。面白いやり方ですw

Amazonには、抗がん剤推進のニセ医学関係の方も、食事療法・代替療法に詳しい方も「この本は怪しい」と酷評だらけです。

なので、さらに酷評を加えなくてもよいと思います。

これはこのまま放置して、他の本を読みましょう。

例えば、この本を医師に薦められたら、逆に私が読んだ他のレシピ本や「がんと牛乳」で対抗すればいいのです。

ついでに

http://www.genki-recipe.com/index.html

著者のサイトらしいです。

経歴詐称も疑われてるようですが、こうしてサイト開いている所を見ると活動は続ける気なのでしょう。

なので、こちらも生温かくウォッチすることにいたしましょう。

この方がこのまま消えることの無いように、次回作をリクエストするのもいいかもしれません。

製薬会社とのつながりを質問してみるのもいいでしょう。

そして

決して結婚して引退などさせないように活動を続けさせるのです。いつの日か、この本についての真実を語ってくれる本を出してくれると思いますのでwww

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Sage's Link List

  • がん対策推進基本計画
    厚生労働省が平成24年に発表したもの。これによると、治療せずに様子を見る「経過観察」はしちゃダメ!なのかな?なんで?w
  • 国立がん研究センター
    食事療法については何も載っていません。アルコール摂取を控えましょう、肥満に注意しましょう、ぐらい。

Sage's Music List

  • サラ・ブライトマン: 神々のシンフォニー
    日本盤のみボーナストラック追加。
  • 3/8にリマスター発売。
    Pink Floyd: 狂気
    まさに「狂気の沙汰」ですね。
  • Walk This Way
    RUN D.M.C.:
    エアロスミスとのコラボ。
  • Somewhere I Belong
    LINKIN PARK: METEORA
    あるプログラムでの使用曲。
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